SPECIAL 2006

2006年2月2日 第5号 掲載



日本映画の大家
「成瀬巳喜男監督作品特集」2月上映
〜パシフィックシネマテーク・プレゼンツ〜


めし

浮雲


女が階段を上がる時

 昨年、生誕100周年を迎えた昭和の名映画監督、成瀬巳喜男。
昭和に生きる庶民の日常を繊細かつ詩情的に描いた作品群は、女性映画、文芸映画、そして恋愛映画の泰斗と呼ばれるにふさわしい。

 その成瀬による89本の無声・トーキー映画から2月、代表作を含む13本がここバンクーバー・パシフィックシネマテークで特集上映される。

橋知られざる邦画界の巨匠

 今でこそ「クロサワ・オヅ・ミゾグチに次ぐ第四の男」と言われ、揺ぎ無い地位を確保している成瀬巳喜男だが、世界から注目を集めるようになったのは、それほど以前のことではない。1969年に成瀬が没してから十数年後、スイスのロカルノ映画祭で上映されたのがその名を広めたきっかけであった。それを皮切りに、以降、全世界各地の映画祭などで特集され続けてきた。2月10日から上映が始まるバンクーバーでも、「知られざる邦画界の巨匠」と紹介されており、注目度が高まっている。

小津も絶賛、映画史に残る『浮雲』

 その作風から小津安二郎と比較されることが多く、また、同じく女性映画を得意とする溝口健二とは女性像の描き方について対比させられたようだ。しかし、今回上映される作品のひとつで、特集上映のタイトルにもなっている『浮雲』('55)に対し、小津が「自分にはできない作品」と賞賛したというエピソードがある。その『浮雲』は、恋愛映画の最高峰として今も映画史に名を記す。また、高峰秀子や原節子、田中絹代など、往年のスターらの当時の活躍ぶりも麗しい。

 昨年は日本各地で成瀬の生誕100年特集が組まれたが、バンクーバーでの特集上映は初。ニュープリントで見やすくなった成瀬ワールドを堪能し、ノスタルジックな昭和に思いを馳せるのも悪くない。こんなチャンスは二度と無いので絶対にお見逃しなく!

(取材 藍智子)

上映作品紹介


浮雲(Floating Clouds)

1955年/モノクロ/35ミリ/124分
出演:高峰秀子、森雅之、岡田茉莉子、山形勲、中北千枝子
インドシナでタイピストとして従軍していたユキコ(高峰)は、帰還後、不倫相手の富岡(森)を訪ねる。富岡の態度は煮えきらない。しかし別れられずに関係を続けるふたり。キネマ旬報年間ベスト賞など、いくつもの賞を受賞した日本映画史上に輝く名作。

おかあさん(Mother)

1952年/モノクロ/35ミリ/98分
出演:田中絹代、三島雅夫、片山明彦、香川京子、加東大介
未亡人の正子(田中)は、3人の子を抱え、女手ひとつでクリーニング店を営む。その姿を長女(香川)の視点から描いた感動作。脚本は小学生から公募した作文を元に作られた。

妻よ薔薇のやうに(Wife! Be Like a Rose!)
1935年/モノクロ/35ミリ/74分
出演:千葉早智子、丸山定夫、英百合子、伊藤智子、堀越節子
成瀬初のトーキー作品。別居中の両親を仲直りさせようと、父(丸山)の元を訪ねた娘(千葉)は、同居する愛人(英)の献身ぶりに驚く。1930年代の傑作で、北米初の日本映画として海を渡った。この映画を通じ、主演の千葉早智子と成瀬は結婚。しかしその後離婚した。

はたらく一家(The Whole Family Works)

1939年/モノクロ/35ミリ/65分
出演:大日方傳、椿澄枝、徳川夢声、本間教子、生方明
プロレタリア作家、徳永直の同名短篇集を成瀬が脚色した。貧しい大家族を舞台に、家を出て学校へ通うことを望む長男(生方)と、素直に認められない父親(徳川)の心の葛藤。成瀬が新境地を開拓したといえる戦後の作品。

晩菊(Late Chrysanthemums)
1954年/モノクロ/35ミリ/101分
出演:杉村春子、上原謙、沢村貞子、細川ちか子、望月優子
林芙美子の短編3作から成る作品。今は不動産金貸しで生計を立てる中年女(杉村)のもとに、若い頃大恋愛した男(上原)が金を借りにくる。元芸者の4人の女たちが織り成す群像ドラマ。
山の音(Sound of the Mountain)(写真あり)
1954年/モノクロ/35ミリ/95分
出演:原節子、山村聰、上原謙、杉葉子、長岡輝子
川端康成原作。夫(上原)の浮気に耐える嫁(原)と、彼女を不憫に思う義父(山村)の心の交流を描く。原が美しい。

稲妻(Lightning)

1952年/モノクロ/35ミリ/87分
出演:高峰秀子、三浦光子、香川京子、村田知英子、根上淳
林芙美子原作。4人の子どもの父親が、それぞれ違うという家族。そんな複雑な家庭環境から抜け出し、バスガイドの3女(高峰)は自立して生きようとする。

めし(Repast)
1951年/モノクロ/35ミリ/97分
出演:原節子、上原謙、島崎雪子、杉葉子、杉村春子
倦怠期の夫婦(原・上原)のところへ姪が来たことで、次第に生じる波紋をきめ細かく描いた。成瀬の代表作のひとつ。原作は林芙美子の未完の絶筆。

銀座化粧(Ginza Cosmetics)
1951年/モノクロ/16ミリ/87分
出演:田中絹代、花井蘭子、堀雄二、香川京子、柳永二郎
銀座のバーで働く女性たちの日常を丹念に描いた秀作。息子との生活のため、ホステスとして働く雪子(田中)は、とある若い男に淡い恋心を抱き、銀座から足を洗おうと思い始める。

流れる(Flowing)

1956年/モノクロ/35ミリ/117分
出演:田中絹代、山田五十鈴、_峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子
下町の芸者置屋を舞台に、女中(田中)の視点から見た花柳界に生きる女たちの姿を描く。落ちぶれかかった柳橋の置屋に暮らす芸者たちの哀歓を、豪華な女優陣で彩った大作。

女が階段を上がる時(When a Woman Ascends the Stairs)

1960年/モノクロ/35ミリ/110分
出演:高峰秀子、森雅之、団令子、仲代達矢、加東大介
銀座の高級バーで雇われママ(高峰)となった未亡人の哀感を綴る。人生の岐路に立つ女性と、彼女に憧れる青年(仲代)。“女性”というものをうまく表現したメロドラマ。

鰯雲(Summer Clouds)

1958年/カラー/35ミリ/130分
出演:淡島千景、新珠三千代、司葉子、木村功、小林桂樹
東京近郊の農村。戦争未亡人の八重(淡島)のところへ新聞記者の大川(木村)が訪れた。ふたりは不倫関係になり愛し合うが、間もなく大川は辞令で東京へ。緑の田が広がり、高い空には鰯雲・・・。初のカラー作品。

乱れる(Yearing)
1964年/モノクロ/35ミリ/100分
出演:峰秀子、加山雄三、草笛光子、白川由美、浜美枝



上映スケジュール

2月10日(金) 7:15pm「浮雲」
         9:35pm「おかあさん」
2月11日(土) 7:30pm「おかあさん」
         9:25pm「浮雲」
2月12日(日) 7:30pm「妻よ薔薇のやうに」
         9:00pm「はたらく一家」
2月17日(金) 7:30pm「晩菊」
         9:30pm「山の音」
2月18日(土) 7:30pm「稲妻」
         9:15pm「晩菊」
2月23日(木) 7:30pm「めし」
         9:25pm「銀座化粧」
2月24日(金) 7:15pm「流れる」
         9:30pm「女が階段を上がる時」
2月25日(土) 7:00pm「鰯雲」
         9:25pm「乱れる」
2月26日(日) 7:15pm「女が階段を上がる時」
         9:20pm「めし」。
上映館インフォメーション

Pacific Cinematheque

■住所:200 - 1131 Howe St. Vancouver BC V6Z2L7
■電話:(604)688-8202/FAX:(604)688-8204
■映画インフォメーション(24時間):(604)688-FILM (3456)
■Eメール:info@cinematheque.bc.ca
■チケット:
シングル/一般$8.50 、シニア・学生$7.00
 2本立て/一般$10.50 、シニア・学生$9.00
 2本立て10セットパス/一般$80.00、シニア・学生$70.00
 *シニア=65歳以上

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