SPECIAL 2006

2006年1月1日 第1号 掲載



デービッド・エマーソン産業大臣に聞く
連邦政府総選挙と日加関係



選挙運動中のエマ−ソン大臣

下院議会で答弁中

  日加間の潜在的な可能性を引き出すための努力を積極的に推し進めることで 二国間関係をさらに強力なものに。

  2005年、日加関係は大きく進展した。1月にマーティン首相がアジア歴訪の一環として日本を訪問し、小泉総理と会談、さらに11月にもAPECが開かれた釜山で両首脳は日加経済枠組み文書に署名を行った。

 一方、11月、保守党ハーパー党首が内閣不信任案を提出し、可決された。その結果、1月23日に総選挙が行われることになっている。

 マーティン政権で産業大臣を務めるデービッド・エマーソン自由党議員も、現在選挙の準備に忙しいが、選挙が与える日加関係への影響などを聞いた。

ー現在、選挙運動で忙しいと思います。この時期の総選挙についてどう考えますか。
 総選挙自体は、ゴメリー報告書の後半部分が発表された後、30日以内に解散、総選挙を行うと、以前からマーティン首相は言及していました。ゴメリー報告書は2月に発表の予定です。ですから、2006年3月から4月の間にあると考えていました。

 しかし、問題はタイミングで、ハーパー党首が11月に不信任案を出したことです。クリスマス、新年のこの時期をはさんで行うことになったのには正直、驚きました。

 カナダ政府は現在、日本をはじめ、多くの国と、重要な事項について話し合いを行っています。対外的なもの以外にも、予算問題など様々な案件があります。これらを総選挙前に、できるだけ片付ける必要がでてきました。結果的には、「やっつけ仕事」のような形になるものも、あるいは全く処理できないものもあるでしょう。残念ながら、混乱状態に陥っていることが多々あります。

 保守党もそれがわかっていて、なぜこの時期に行わなければいけないか疑問に感じました。また、クリスマス前に不信任案を出したことで、カナダ国民は、一番忙しい時期に非常に重要な、どの政権に任せるかを考える必要があります。保守党は様々な状況から、今が一番、勝機があると判断したのでしょう。

ー自由党の政権維持の可能性についてコメントを。
 私の個人的な考えですが、今回の選挙は最後の2週間が勝負を決めると思います。国民が最終的にどちらの政党を支持するかを決める段階が、一番重要です。
 カナダ国民はどちらかというと、マーティン首相の価値観に近いと思いますが、最終的にどうなるかはわかりません。

ー例えば、ハーパー党首が病院での治療待ちの状況を改善させると言っています。
 ヘルスケアは重要な問題です。確かに状況は改善させる必要があります。そのために、ヘルスケア・システムに410億ドルをさらに投資することを、マーティン政権では決定しています。これは、追加で投入される資金で、治療待ちを改善させることが主な目的です。

 実際、少しずつ、良くなっていると思います。私も個人的に、様々な人に状況を聞いていますが、そんなに悪くないという人が多いです。

 改善する必要があることは間違いありません。そのために、政府も対策を講じています。

ー日加関係は二〇〇五年、首脳会談が行われ、日加経済枠組みが署名されるなど、大きく進展しましたね。選挙により、どのような影響がありますか。
 自由党が引き続き、政権を維持することができれば、カナダ国内で調整が必要であった事柄については、選挙が行われたことで遅れが出たとしても、終了後、再び進めていきます。私だけでなく、自由党議員は、日本との関係がカナダにとって極めて重要であるということで、認識は一致しています。

 保守党政権になると、彼らはどう考えているのかわからないですから、何とも言えないですね。

ー日加関係についてどのように考えますか。
 このところ、「中国へ投資しなければいけない」、「中国は大きな可能性がある」というように、中国への注目が大きくなっています。インドへの関心も伸びています。

 中国は確かに大きな市場ですし、急成長しています。しかし、日本の経済面での大きさを忘れてはいけません。また、日本とは長年にわたり、良い関係を続けてきました。特に1980年前後は、日本の景気もよく、木材、紙パルプなど、カナダから日本への輸出をはじめ、2国間の貿易は非常に盛んでした。

 バブル以後、日本への輸出は伸び悩みましたが、投資が増えました。2国間投資は過去最大規模に達しています。しかし、両国関係には、まだまだ潜在的な能力があると私は信じています。大きな可能性を秘めています。この可能性を、新しいレベルまで引き出したい、そのために努力していきたいですね。例えば、貿易面でもっと伸ばしていく必要があるでしょう。

 確かにカナダにとって、米国は最も大きな貿易相手国です。これは危険だと思います。NAFTAがうまく機能しているならいい。でも、そうではありません。カナダは米国と針葉樹問題などを抱えています。
 ですから、カナダはもっと他の国、特に日本のように長年にわたり、良い関係を築き上げてきた国との関係を大切にして、貿易相手を分散していくべきです。貿易について、米国市場に依存しすぎることは危険です。

ー新しい日加関係の中に他にどのようなものが入っていますか。
 科学技術関係や観光促進があります。科学技術では、日加間において政府、そして民間レベルで、先端分野の研究での協調を伸ばしていきたいと両国では考えています。日本からカナダにもっと多くの研究者に来てもらいたいし、カナダから日本に研究に行く人が増えるようにしたいですね。

 観光についても、日本からカナダ、カナダから日本の相互の方向で、観光客の増加に向けて協力しようということになっています。特に、日本は「ビジット・ジャパン」プロモーションをしていることですし、カナダから日本への観光客が増えるように、カナダ側も協力していく必要があります。

ー今、日本では「アフォーダブル・ジャパン」という名称で、日本は必ずしも旅行者にとって「高価」な国ではないというキャンペーンを行っているそうです。
 それはいい!みんな、日本がどんなに魅力的な国か知っていますが、一方で、日本を旅行するのは高くつくと思っています。その認識を変える必要があるでしょう。

 私も選挙がなければ、クリスマスには日本に観光に行く予定でした。特に子どもたちは、先端技術を誇る国、日本で、新しい「モノ」を見るのを楽しみにしていたので、がっかりしています。

 日本は治安がよく、清潔、人は親切ですしね。サービスはいいし、旅行先としてすばらしい国です。日本のサービス水準は世界最高といってもいいほど優れています。

ー昨年一月のマーティン首相来日の際には、エマーソン大臣も日本を訪れ、首脳会談に同席していますね。
 はい。非常に実りのある会談で、経済枠組みについて合意した他、両国のパートナーシップを確認するなど、日加関係は大きく前進しました。小泉総理とマーティン首相は良い関係を築くことができました。

ー小泉総理の印象は?
 とても魅力のある、面白い人、進取の気性を持った、カリスマ的魅力のある人です。小泉総理はトルドー元首相を思い出させます。トルドー元首相も知的で、かつ自由な精神を持った、型にはまらない人でした。

 総理主催の夕食会も、外交的駆け引きなどがなく、とても楽しかったですね。総理は、今まで私たちが日本人の政治家として持っているイメージとは全く異なり、新鮮な印象を受けました。晩餐会は仲の良い友人との楽しい夕食といった雰囲気のものでした。この裏に何があるかなんて考える必要はなく、何でも隠さず話をすることができました。

ー選挙次第になるのでしょうが、最後に日加関係の展望について。
 自由党が政権を維持すれば、新しい可能性に向けて、日加間の経済関係がさらに強化されることは間違いありません。他の人たちも日加関係について私と同じような認識です。

 また、私は「グローバル・サプライ・チェーン」、国際的な供給網を築くことができると思っています。

 たとえば、自動車生産で日本のメーカーはカナダに工場を持っています。トヨタのカナダにおける部品生産会社、Canadian Autoparts Toyota Inc. (CAPTIN)に、トヨタは3千900万ドルの増資を行うことになりました。日本とカナダが協力して製造した自動車を、世界に送り出すことになります。

 その他にもエネルギー、天然資源があります。中国や米国だけでなく、是非、日本にもさらに投資、協力してもらいたいですね。日加両国が太平洋をはさんで、ゲートウェイとなることを目指していますが、日本の投資で、カナダはエネルギーや天然資源の開発をさらに進め、世界に供給していくことができます。アルバータ州から石油を西へ送るパイプラインが建設されれば、現在のところ、南北、つまり米国へ主に資源は輸送されていますが、もっと世界へ送ることができます。

 日加関係は非常に大きな可能性を秘めています。このようにカナダと日本は戦略的な提携を行っていくことができると思います。

(取材 西川桂子)