MAPLE 2006

2006年9月28日 第40号 掲載
 
ヨットで単独世界一周に挑戦!
関英重さん、バンクーバーに寄港!


 世界一周旅行 そんな夢みたいな目標を立てる人がどれくらいいるだろうか?いや、夢は見ても、実行に移す人は多くない。そんな夢の世界一周旅行をヨットで、しかも独りでやり遂げようという人がいる。それが関英重さん。

 最初の寄港地ビクトリアからバンクーバー入り。ロイヤル・バンクーバー・ヨット・ハーバーに停泊中の愛艇ポレール号で夢の話を聞いた。
 


ポレール・ヒデさん。ポレール号船内で



愛称ポレール・ヒデ
 「ヨットの名前は前のオーナーが付けたものです」。サッポロ社が販売しているワインの名前からとったと聞いている。「そのワインがとても好きだったからとか。それをそのままにしています」。そのオーナーとは友達。現在は体調を崩し、乗ることができない。そこで彼の愛艇を引き取り、名前も引き継いだというわけだ。ヨット仲間の間ではヒデで通っている関さん。そこでポレール・ヒデ。関さんの愛称である。


9月15日バンクーバー着

 日本を出航したのは7月8日。それから約40日をかけて最初の寄港地ビクトリアに到着。ヨットの修理などに時間がかかったため、3週間ほど滞在して、9月15日バンクーバー着。ロイヤル・バンクーバー・ヨット・ハーバーに停泊。旅の初めの停泊地にカナダを選んだのは「前からあこがれていたんですよ。それに比較的入港しやすい国なので」。今はつかの間のバンクーバー滞在を楽しんでいる。


太平洋横断
 しかし、ここに到着するまでの40日間は波瀾万丈だった。最初は日本から陸沿いに北上してアラスカ近くを通ってバンクーバーに入る予定だった。「北は霧と雨、風が強くて。それに漁船が多く、その間を抜けていくのは一人では大変で」途中北緯40度ラインを東へ航路を変更した。「風がなくなるのは予想してたんですよ。少しずつしか進まなくても安全で天候のいいコースを選びました」

 それでも帆を上げるためのロープが2回も切れて修理したり、ワイヤーが切れそうになったりと予測不可能な事態に襲われた。そして無事ビクトリアに到着した。


バンクーバーの秋空を背景に

愛艇ポレール号


15年前から計画、10年間の世界一周の旅
 日本でヨットの免許(小型1級船舶免許)を取得したのは20代の頃。いつかは自分の船でという思いはあった。それを実行すべくヨットでの旅を計画し始めたのが40歳。「50歳で退職して出航しよう」との思いがあったが、家族のことを考え5年伸ばした。「そうすると子ども達も落ち着いて、大丈夫かなと思って」

 計画をしているうちに、世界一周するには10年かかるなと思い始めた。「あと5年伸ばして60から始めると日本に着く頃には70歳になってるし」若さと体力と気力、これが備わっている今でなければと今回の出航を決意した。

 「家族の反応はさまざまでしたよ。妻には反対されましたね」と苦笑い。計画を家族に告げたのは実行する1年半前。『今から1年半後に独りヨットで10年の世界一周の旅に出ます』と言ってハイハイと了解する家族は少ないだろう。それでも「自分の資金でやり遂げられるなら」と理解してもらった。今は心配をかけないようにメールや写真を送っている。


トロ〜ンとした感じが好きなんです

 「ヨットでのセイリングは、波の間を静かに進んだり、波のない太平洋で360度水平線の上でトロ〜ンとした感じが好きなんですよ」と語る。出航前は太平洋でひとりぼっち、「海以外見えないのは楽しくないかな」と思った。でもそうでもない。「寄港しなくて海の上だけを走るのも悪くないと思ったくらいですよ」と真っ黒に日焼けした顔をほころばせる。

 だからといって人付き合いが嫌いなわけじゃない。「この旅行でなにが楽しいっていろいろな人に出会えるのが一番楽しい」とこれまで出会った人たちとの写真を見せてくれた。「横につけたヨットの人に食事に誘われたり、次の寄港地での港を世話してもらったり。とにかく会う人みんなが親切で」。特にカナダは海上パトロールや港の人たちも親切で、よく海や船を知っているという。だから世界中からヨットマンが集まる。「そういう人たちと話をするのが楽しいんですよ。英語はあんまり得意じゃないけれど、通じるんですよね。なんとなく」


太平洋の真ん中で一人のんびりと

ビクトリアで知り合いになった家族と



これから、全長9万キロの旅
 これからの進路は『計画』によると、9月22日バンクーバーを出航。ボーエン・アイランドやナナイモ周辺の島々を抜けてシアトルへ。その後一路南下。サンフランシスコ、サンディエゴ、来年3月〜4月には南太平洋へ。その辺りの島々を2〜3年掛けて回り、インド洋、南アフリカの最南端、地中海、大西洋を渡って再びアメリカ大陸にもどり、太平洋横断10年後に日本へ。壮大な計画である。「途中で何があるかわからないので。これはあくまでも計画ですけど」と笑うが、走行距離にして約9万キロ。「帰りにはまたバンクーバーに立ち寄りたいですね」と楽しそうに語った。


バンクーバーの景色
 「海に浮かぶ摩天楼といった感じです。夜はビルの明かりで夜景がとてもきれいです」。スタンレーパーク入り口に位置する同ヨットハーバーで最もダウンタウンよりのドックに停泊しているポレール号から見るダウンタウンは、いつもとは全く違う景色に見えた。まるで絵はがきという月並みな枕詞がピッタリなくらい輝いていた。夕方の少しひんやりした風が通り抜ける甲板で、ゆっくりと流れる時間を楽しむ。「嫌になることもあるけど」と言いながら、「でもいろいろな場所で、こうして錨を降ろしてのんびりしていると、来てよかったなぁと思います」


ダウンタウンの高層ビルが後ろに見える

バンクーバーの空に翻る鯉のぼりと日の丸が目印


 ヒデさんはこれからいくつこんな贅沢な時間を味わうのだろう。またバンクーバーに立ち寄った時にでもポレール・ヒデの話を聞きたいと思った。

(取材 三島直美)