MAPLE 2006

2006年1月12日 第3号 掲載
 
神秘の湖と癒しの湯が待っている
ハリソン・ホットスプリングス

 バンクーバーから7号線を東へ約2時間。フレーザー渓谷ののんびりとした田園地帯と沿岸部山岳地帯のたおやかな山並みが出会うあたりに大きな湖がある。この岸辺に湧いているのがハリソン・ホットスプリングスだ。源泉の周辺には硫黄の匂いがたちこめ、なんとなく日本を思わせる懐かしい雰囲気だ。湖畔の村には公共の温泉プールもあるので、日帰りで「ちょっと温まって帰る」ということも可能だが、それでは少しもったいない。数日、ここで泊まってのんびりしてみよう。         

(文 宮田麻未/ 撮影 神尾明朗)

 

ハリソン湖の岸辺からは、沿岸部山岳地帯の山並みが見渡せる

え!せっかくの硫黄を濾過しちゃう?

 ハリソン湖畔に湧く温泉のことは、このあたりに住むファーストネーション(先住民)のコースト・サリッシュ族の人々の間では太古から知られていたようだ。「癒しの場」として大切にされてきた。一方、ヨーロッパ人によって、この温泉が「発見」されたのは19世紀の後半になってから。1858年にフレーザー渓谷で金が発見され、ゴールドラッシュの夢を追ってこのあたりにやってきた3人の男が、「岸辺の水があたたかい!」と仲間たちに吹聴したのがきっかけだ。

 それ以来、ハリソン湖の周辺はリゾート地として発展してきた。湖を見渡すホテルやB&Bなどもたくさんある。しかし、温泉を直接利用できるのは、村の公共温泉プールとハリソン・リゾート・ホテルの2箇所だけだ。公共温泉プールは、気軽に利用できるが、雰囲気は普通の屋内温水プールと全く変わらない。温泉気分にひたるのは、少々無理がありそうだ。

 そうなると、ハリソン・リゾートへ泊まるしかない。温泉プールは宿泊者専用だからだ。ただし、スパの利用客には入浴の権利もついてくる。しかし、どうせなら、このホテルで数日宿泊して、ミネラルたっぷりの湯に浸かってみよう。しかし、「なぜだぁ!?」と叫びたくなるような残念なことが1つある。このホテルは客へのサービス(!)として、源泉から引いた湯の温度をわざと下げ、おまけに硫黄成分を除去しているのだ。あの懐かしい匂いが北米では理解されないらしい。もちろん硫黄分がなくても、ほかにもたっぷりミネラルが含まれており、温泉としては上質の湯だ。しかし、それにしてもおしい・・・


サスカッチ・ツアーは小さなボートを利用して川を下る

ボートを降りて岩絵を観察する観光客



ツルツル肌をめざしてスパ三昧

 ハリソン・リゾートには、温泉を利用した高級スパが併設されている。フェイシャルなどのエステからマッサージまで、トリートメントの種類も豊富。水着を着て入る温泉プールではどうしても物足りないという人なら、小さな専用風呂を貸切りにすることもできる。

 「自分へのご褒美」を探している人なら、数日ここのホテルに滞在して、スパ三昧はいかが?このスパには、全身のマッサージと肌のつやを取り戻すフェイシャルなどを組み合わせたお得なスパ・パッケージも用意されている。丁寧なフェイシャルが100ドル程度なので、日本の高級エステと比べるとお得感がある。ただし、チップは含まれていないので要注意。

 ハリソン・リゾートの温泉プールは温度によって分かれており、大人専用の露天風呂風のプールがあるのが嬉しい。野外プールは夜10時まで。驚くほどたくさんの星を眺めながらのんびりお湯につかることもできる。また、屋内温泉プールは、お湯の温度も高く、プールというより日本の温泉風呂に近い雰囲気。夜中の1時まで入浴できるのも嬉しい。もちろん、残念ながら水着着用だ。



ハリソン・リゾートのスパのトリートメントルーム


2000年前の岩絵にジャンボジェットが描かれている!?

 ハリソン湖の上には、いつも複雑な流れの風が吹く。そのため、夏になるとここはウィンドサーフィンの世界的メッカになるのだ。その他にも、ゴルフからハイキングまで、幅広いアウトドアスポーツが楽しめる。しかし、この「アウトドアの天国」はハリソン湖のほんの一面でしかない。
 実は、この湖の周辺にはコースト・サリッシュ族の人々の貴重な文化遺産がたくさん残されており、自然と調和して生きてきた人々の知恵に触れることができるのだ。特に、2000年から7000年以上前のものと推定される岩絵は、世界的にみても非常に貴重なものだ。伝説の怪物サスカッチや、どうみてもジャンボジェットを描いたとしか思えないような不思議な岩絵もある。これらの文化遺産は、コースト・サリッシュ族にとって、今も大切な聖なる場所。訪れるときは、必ず部族のガイドと行動しよう。
 秋から冬にかけて、ハリソン湖から流れ出ているハリソン川には鮭の大群が遡上してくる。やがて産卵を終えた鮭は生命を終えるが、この鮭を狙って、驚くほど多数の白頭ワシが姿をみせるのだ。岸辺の高い木に何十羽もとまっている姿、そして、大きくつばさを広げて飛ぶ姿は感動的な迫力。コースト・サリッシュ族の人々が自ら運営するサスカッチ・ツアー社のツアーに参加すれば、こうした野鳥や野生動物、野草など、彼らの歴史文化と深いかかわりのある自然の話を聞きながら、ハリソン湖周辺を巡ることができる。



ハリソン・リゾートの温泉プール

ハリソン・リゾートの客室は、余裕のある設計で居心地が良い
  


データ

ハリソン・ホットスプリングスへは、7号線経由9号線でバンクーバーから約2時間。グレイハウンドでチリワックまで行き、そこからAgassiz-Harrison Transit Systemのバスに乗り換えれば、時間はかかるが公共交通を利用していくことができる。

●ハリソン・ホットスプリングス・リゾート
 Tel:604-796-2244/ www.harrisonresort.com

●ハリソン・ホットスプリングス村観光案内所
 Tel:604-796-5581/ www.harrison.ca

●サスカッチ・ツアー
 Tel: 604-796-1221/ www.sasquatchtours.com