SPECIAL 2005
2005年10月27日 第44号 掲載
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10月17日に開催された日加経済検討フォーラム、その翌日開催されたBC州日加協会の年次ガラ・ディナーへの出席と講演のためバンクーバーを訪問していた沼田貞昭在カナダ特命全権大使。忙しいスケジュールの中でインタビューの時間を頂いた。
日加関係について、今晩BC州日加協会でも講演をされるということですが、まずは経済面でのお話を伺いたいと思います。マーティン首相が今年1月に訪日。日加間の経済関係の潜在能力まで引き上げるという声明が出されていますが、その後の進展も含めてこの声明について教えてください。
私もカナダに赴任して3週間しか経っていないときでしたが、総理官邸での日加首脳会談に同席しました。会談では、日加経済関係を強化するための、創造的な「日本・カナダ経済枠組み」を立ち上げることで両国は合意しました。
日加間の貿易については、品目でみると日本からは自動車や機械、カナダからは木材、パルプ、菜種、石炭など第一次産品が主となっています。特に、カナダの対日輸出に占めるBC州の割合は全体の4割以上、輸入では3割以上と、カナダの中で、BC州は経済的にも日本へのゲートウェイの役割を果たしています。また、日加の経済は、従来はモノ中心でしたが、最近はハイテク分野など多様化しています。この「日加経済枠組み」は、改めて日加の経済関係にはどういう可能性があるか検討してみよう、というものです。
まず、日本とカナダは、 の優先分野について両国の協力を促進することに同意しました。そのうちの1つは税関、反競争的行為等について協力しようということで、今年9月には日加独占禁止協力協定に私が署名しました。また、6月には税関の取り決めもできました。
更に、両政府は2国間の経済関係を一層、促進するための共同研究グループを立ち上げることに同意しました。今後、それぞれの分野別に貿易や投資について現状を分析し、共同の研究を進めていきます。
日本とカナダの関係は友好的とはいえ、貿易で問題が起きれば、私たち日系人は少々、住みづらく、暮らしにくくなります。日加問題として強いてあげるとしたら牛肉の安全をめぐるBSEになると思うのですが。
BSEについては、消費者に届く食品は安全であるべきですから、政治的な判断ではなく科学的に安全性が証明されなければなりません。現在、食品安全委員会が審議を行っています。また、BSE問題について、カナダと米国で区別はしないというのが我が国の方針です。輸入については同時に再開します。科学的に調査しているものに、締め切りを決めて急げとも言えないのですが、そう遠くないうちに解決すると期待しています。
日加フォーラムと日加経済枠組みの関係で混乱してしまうのですが、整理していただけますか?首脳会談で日加フォーラムの再開について話がありましたね。
役所間の話し合いの「日加経済枠組み」に対して、「日加フォーラム」は言うなれば賢人会議です。民間、財界からの代表が集まり、日加関係のあり方につき包括的に検討し、両国首脳に提言を行います。フォーラムは91年に創設されましたが、メンバーが替わったりして、現在は日本側座長が元駐中国大使で東京電力顧問の佐藤嘉恭氏、カナダ側は元駐日カナダ大使、現ミリタリー・シミュレーション・アンド・トレーニング社会長のドン・キャンベル氏です。その他のメンバーは、民間企業の代表の他、メディア、そして大学からも参加しています。
今年、日加フォーラムは5月にカナダで集まりました。カナディアン・パシフィック・レールウェイのロバート・リッチー会長がメンバーということもあり、鉄道でバンクーバーからカルガリーまで移動しながら話し合うというものでした。次回の会合は、来年、日本で開催が予定されています。
パートナーシップについては?
グローバルパートナーシップですね。こちらは政治面についてで、文字どおりグローバル、地球規模の問題を話し合うというものです。
例えば来月末にはモントリオールで、気候変動枠組条約と京都議定書の締約国が、京都議定書の発効後、初めて集まる会議が予定されています。温暖化問題などに取り組むため、いかにして議定書の内容を実施し、また、実施メカニズムを改善していくか話し合う大切な会議です。
但し、世界の全ての国が締約国となっているわけではなく、米国、中国、オーストラリアなども温室ガス削減義務を負っていません。カナダはこれらの未締約国も巻き込み、京都議定書についての「実施
implement」「改善 improve」「刷新innovate」の3i(スリー・アイ)を目標としていますが、日本もこれを支援していきたいと考えています。
さらに、カナダは平和維持活動が活発な国です。日本も、カンボジア、そして自衛隊がカナダ部隊と交代して任務についたゴラン高原、モザンビーク、ザイール、東チモール、また米国での同時多発テロ後には、アフガニスタンで平和定着のための活動を行いました。この時には、我が国の海上自衛隊がインド洋で、ビクトリアの基地から出発したカナダ軍艦船に給油したこともあったそうです。
このように日本もカナダも共に地球規模の問題に積極的に関っており、それぞれが経験を積んできていますので、日加両国がお互いの経験に学び、協力しあうパートナーシップを強化していこうということです。
このように良好な二国間関係ですが、大使は4月に「Japan-Canada Partnership:
Can we afford to take it for granted?」、日加パートナーシップを当然視していいのかというタイトルでスピーチをされていますね。これについて教えてください。
日加関係が良好というのは間違いない事実です。日本人とカナダ人はお互いに親しみを持っていますが、そのような状態を当然視して、お互いをもっと良く知ろうという努力を怠り、結果的にお互いに無関心になってはいけないということです。日本とカナダは長い間、友人関係にある国ですし、経済関係も深い。でも、カナダを本当に理解しているのでしょうか。
日本にとってのカナダは、ナイアガラ、ロッキー、オーロラ、そして赤毛のアンのプリンス・エドワード・アイランドに代表される、壮大な自然を誇る、美しい国というイメージです。
でも、カナダはもっと多様な国です。バンクーバーにはアジアの人が多い。カルガリーはテキサスみたいなカウボーイの街とも言われており、トロントは大都市、モントリオールやケベックはフランス語圏で全く雰囲気が違う。大西洋側のノバ・スコシアやニューファンドランドと実に多彩な顔を見せてくれます。
人種的にも様々な人が暮らしています。今度、総督に就任されたミカエル・ジーンはハイチから、その前のエイドリアン・クラークソンは香港からの移民でした。彼女たちは今日のカナダを体現しているとも言えますが、このようなカナダの側面を日本の人たちに説明していく必要があるのではないかと思っています。
一方、カナダにとって日本は親しみやすい国です。エキゾチックで、同時に産業大国だとの印象があります。でもこのところイメージが薄くなっているのではないかと思うのです。
カナダで中国やインドの話題がのぼることが増えてきました。カナダはこれらの新興国と仲良くしていきたいわけですが、国どうしが一朝一夕に仲良くなれるものではない。一方で、最近アジアにおいては、中国、韓国、日本と東アジアの国々の関係は一段と深まってきています。したがって、カナダは日本を中国やインドを含めたアジア諸国へのステッピング・ストーン、足がかりにすることもできることを伝えていく必要があるのではないでしょうか。日本はアジアにおける成熟した先進国として、カナダとお互いに心地よい関係を維持出来ることを積極的にアピールしていく必要があるのではないかと思います。
国と国との結びつきには人同士の交流が大切です。海外からの青年が文化交流などを行うJETプログラムの利用者数は、米国、英国に続きカナダが世界で三番目です。姉妹都市交流も盛んですが、例えば高校生の交流など、他にもっと促進できるものがありそうです。
カナダには日本文化に興味のある人が多いですね。これには日系人が重要な役割を果たしています。現在、BC州の日系人数は約3万7000人です。戦前に移住した人たちは強制収容所に入れられ、辛い経験をした人も多数います。今や三世、四世の時代になり、彼らは日本人というよりカナダ人ですが、日本人としてのDNAを意識している人も多いようです。
以前、日系センターを訪れた時に感銘したのですが、日系ヘリテージセンターの隣の老人ホームは入居者全員が日系人というわけではありません。日系人以外のカナダ人も一緒に暮らしています。入居者の3割は日系人以外という決まりらしいですね。
日本語を学習している人の数についてみると、カナダは全世界で9番目です。人口を考えると極めて高い割合といえるでしょう。特に、マンガ・アニメの影響で中学生や高校生といった若い世代で増加しています。日本語を通じて、日本が親しみやすい国だという意識を持ってもらえるといいですね。
沼田大使は、 日朝には『CBCラジオ』のアーリーエディション、同日夕刻には「ラジオ・ジャパン」も登場して日加関係について語り、日本をアピールしている。
(取材 西川桂子)