SPECIAL 2005

2005年10月13日 第42号 掲載



「自動車に乗りながら環境を考えるということ」
〜車が環境に与える影響、車の選び方と乗り方〜


青木さんと青木さんの愛車ハイブリッドカー

環境にやさしいハイブリッドエンジン

 公共の交通手段が発達し便利なバンクーバーではあるが、ダウンタウン以外に住んでいる住民にとってやはり自動車は必要なもの。最近は環境問題にフォーカスがあてられ、各メーカーから発表される新車は環境に配慮したものが多くなった。ガソリンの価格高騰も話題になり燃費のよい車に注目が集まっている中、この話題の専門家として活動する青木ケンさんにお話を伺った。

 ■オイルの価格急騰
青木さん(後、敬称略): 最近ガソリンの値段が急激に上がっていますが、原因は何だと思いますか?

ー台風の影響ではないのですか?
青木 それもありますが、この3〜4年東南アジアがどんどんオイルを使っている。もし中国やインドの国民が一斉に車に乗りだしたら需要が上がって行くことによりOPECでどんどん価格が引き上げられることになります。

ーオイルの値段の急激な上昇により、どんな影響がありますか?
青木 メリットとしては、オイル産出国であるカナダの経済は潤うということです。オイルだけではなく鉱産物、木材なども需要が上がり、天然資源の値段が上がっている。それでカナダドルが今、上がっているんですね。オイルダラーとも呼ばれるほどです。

ーデメリットは。

青木 オイルの値段が上がることにより、インフレが起こることです。この夏トラックのストライキがありましたが、あれはオイルの値段の上昇が原因です(ガソリン代の急騰でドライバーの賃金が減少)。物流のためにオイルが使われ、その結果全ての物の値段が上がります。・・・しかし、実はもうひとつメリットがあります。

ーどんなことですか。
青木 オイルが高いので、人々が車に乗るのを控えるようになる。公共の交通手段を使おうという動きがあり、この2年ほどバスやスカイトレインの利用者がずいぶん増えています。大きな車に乗っていた人が小さい車に乗り換える。これらは環境にもラッシュアワーの緩和にも良いんですね。

ー環境にスポットが当たる良いきっかけということですね。
青木 そうです。コロンビア・アイスフィールドへ行ったことがありますか?そこを見れば環境の変化がすぐ分かる。昔はハイウェイのすぐ近くまで来ていた氷河が、今はかなり入り込んだ所まで行かないと見えない。そこまで温暖化の影響が進んでいるということです。私自身それを知ったとき環境の変化を思い知らされました。もし北極・南極の氷が全部溶けたら・・

ー実感はありませんが・・大部分の都市が水没して大変なことになりますね。

■自動車による環境汚染の話
青木 車は地球の温暖化に非常に貢献しています。熱損失が多く、効率が非常に悪い。それでも今の車は昔に比べたら100倍〜200倍も排気がクリーンです。その中でも特に良いのが日本車ですね。

日本のメーカーの環境に対する配慮は素晴らしいものです。開発に莫大な費用を投資していますし、それも日本車が強い理由です。

きっかけは30年前、ロサンゼルスでマスキー法という厳しい排気ガス規制が行われたんですがその時一番乗りでその規制に通ったのがホンダだった。
CVCC という新しいエンジンを出したんですがこれは非常に画期的なことで、NHKの「プロジェクトX」という番組でも放映されました。その後トヨタ、日産もフォローしており日本の会社は非常に努力しています。

■今話題のハイブリッドやFUEL Cell等の新技術
青木 FUEL Cellというのをご存知ですか?

ーいいえ、それは何ですか?
青木 FUEL Cellとは燃料電池のことです。実はこのアイデアは1800年代に既にありました。簡単に説明すると原理は水の電気分解です。水に電気を通して分解すると酸素と水素が出来ますが、燃料電池は全く逆の発想で水素と酸素を結合させて水を作る時に電気を発生させ、それを蓄電して車を動かすというアイデアです。費用がかかるということで今まで現実化しなかったのが、環境問題が出てきてお金に換えられないのではないかと見直されて開発が進められるようになった。カナダではバラードという会社がこれに関して有名で、最近中国の大統領も訪問しています。

ーハイブリッドについて教えてください。
青木 ハイブリッドという言葉には新種という意味があり、2つのものを合体させて新しい物を作ること。ハイブリッドカーというのは、ガソリンエンジンと電池のモーターを合わせてうまく使い分けていこうというアイデアです。難しく高度な技術なので、実現できるかと思っていましたがトヨタがあっという間に成功させました。本当に日本人技術者のレベルの高さと勤勉さには頭が下がります。

ーガソリンと電池を使い分けると、どういう走行状態になるのですか?
青木 低速ではエンジンが回っていない状態に切り替わります。エンジンの音が全くしないので、車が近づいても猫が動かない。子供も気付かないので、そういう面では気をつけないといけないかな。

ー充電は必要なのですか?
青木 エンジンが回っている間に自動的に蓄電されています。オートマティックで電気とガソリンが切り替わるので普通の車と同じ感覚で乗れるんですよ。私は3年間ハイブリッドに乗っていますが私の場合リッターあたり21キロ走ります。ハイブリッドは環境に対しては素晴らしいので、皆さんにも是非ハイブリッドに乗り換えて欲しいと思います。

■車を選ぶとき
青木 車を買うということはエモーショナルなものです。だからCMを見てかっこよければそれに乗りたいと思う。しかし、よく考えたら車は交通の道具です。コストが安くガソリンをくわない、環境に優しい車を選んで欲しいと思います。

ー若い人は特に、流行の車を選んでしまいがちですよね。
青木 今流行なのがSUV車ですね。あれは山の中を走ったり砂漠を走ったりする車で、一般の人には全く必要ないものです。4輪駆動なので車が重いし、頑丈で大きなガソリンエンジンが必要になります。SUVのハイブリッドも出ていますが、あれはちょっと矛盾していますね。

ー正直言って、車を選ぶ時にあまりそこまで考えたことがありませんでした。
青木 車は必要悪です。車に乗れることは権利ではない、特権なのだからなるべく謙虚になり車を選んで欲しい。かっこいいとか、有名俳優が乗っているからという気持ちは分かりますが、交通手段と割り切って自分のニーズに合った車を選ぶことが大事です。古い車も排気ガスが非常に汚いので、クラシックカーは良いですが飾るだけにして欲しいですね(笑)

■燃費の節約と環境にやさしい運転の仕方
ー環境に優しい車の乗り方とは。
青木 一番良いのは車に乗らないことですが、燃費を考えると車のメンテナンスです。エンジンオイルの交換工場では5〜6000キロとされていますが4000ぐらいでも換えていい。オイルの粘度が悪くなると燃費も悪くなりますから。エンジンのチューンナップも必要です。それから、意外なことと思うかもしれませんが車をきれいにすること。ワックスをかけておくと、空気抵抗が少なくなり燃費が良くなるんです。タイヤの空気圧も低くなると燃費に影響します。

ー車をきれいにすることでそんな効果があるとは思いませんでした!
青木 車の中もきれいに保って下さい。余計なものを積んでいると重くなって燃費が悪くなりますから。かなり違いますよ。それから特に高速道路では窓を開けない。空気抵抗がありますから。暖気運転も1〜2分で十分ですし夏はエアコンをなるべく使わないようにするとか、リアの霜取りは綺麗になったらいったん止めるなど。

ー運転の仕方はどうしたら効果的ですか。
青木 急発進、急加速、急停止をしないこと。赤信号が見えたらなるべく早く足を離して惰性で走るようにすることです。ハイブリッドは自動的に惰性で走るようにしているので非常に燃費が良いんです。

ーそういうことをあまりガソリンと結びつけて考えたことがありませんでした。
青木 それをやるかやらないかで実験をしたんですが、リッターあたり16キロと21キロという差が出ました。

ーリッターで5キロも!すごいですね。
青木 そのくらい自分の乗り方、運転の仕方で変わるんです。車も人間の体と同じように一番いい状態を保っておくことが大事。乗り方、メンテナンスをきちんとしてあげてください。

今回お話を伺い、環境問題への関心があっても、正しい知識があるかないかで全く違うものだと実感。これからは常に情報を取り入れ、まず自分に何が出来るかを具体的に考えていきたいと感じるきっかけとなった。車と環境問題、ハイブリッドカーに関して青木さんのお話を聞きたい方はご相談くださいとのこと。

(取材 菊池友理)

●青木ケンさんプロフィール●
 在日中、トヨタ自動車の技術課で5年間の勤務経験を持つ。渡加後15年間は自動車関係のビジネスに携わり、技術ライセンスを日本とカナダの両方で取得。その後不動産、エキスポート関係の仕事へ移行。自動車と環境関連に深く興味を持ちグリーンピース、WWFのメンバーを経て現在は環境問題、自動車専門家として独立して活動中。

Ken Aoki
Tel:604-519-1917 Email : kenaoki@shaw.ca