SPECIAL 2005
2005年4月28日 第18号 掲載
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【プロフィール】 |
IT革命が進む現代社会において、もはやオンラインサービス抜きでのビジネスは考えられないところまで来ている。今では当たり前となりつつある旅行会社のオンライン予約・決済だが、旅行代理店のスカイランド・エスケープス・トラベル社は、カナダ西海岸地区で初めてそのシステムを導入し、01年の米国同時多発テロや03年のSARSの影響による観光産業の低迷もオンライン事業によって克服してきた。試行錯誤の末に軌道に乗せた同社のオンラインビジネスの成功までの経緯とポイントを、リテーラー(小売業者)としての立場から同社代表島田友子社長が解説した。
安定した市場が崩れたIT革命の影響
20年以上旅行関係業務に就き、業界の知識も豊富だった島田社長は、96年、日本人を顧客とした旅行代理店『スカイランド旅行社』を購入する。すべてが順調な滑り出しだった。旅行代理店は、航空会社の航空券や旅行会社のパッケージツアーなどを売ることにより生じるコミッションで運営されている。しかし、IT革命の波はその仕組みを根底から覆すこととなる。98年頃から始まった航空会社による〈コミッションカット〉は、ついにはコミッション制度が無くなるところにまでに至った。
メンターの言葉を胸にウェブ事業展開
そしてインターネットは完全に一般に浸透、航空会社が直接消費者に販売を行う兆しが見えてきたため、島田社長はオンラインによる事業展開の開始を決断した。そのいきさつには島田社長が10年以上師として仰ぐ、レイモンド・アーロン氏の言葉も影響する。不動産や経済のセミナーを開催していたアーロン氏は、早い時期から「インターネットの時代が来る」と確言していたのだ。それらの2点から、「これからはウェブを提供する側に回るべきだ」と悟った島田社長は、同時に「パッケージツアーを売っていこう」と経営の視点を切り替え、オンラインによるツアーの販売に尽力するようになった。
暗中模索のサイト開設と運営
とはいえ、暗中模索のオンラインビジネス。現在のエスケープスに至るまでに、3回ほどの失敗を繰り返すことになる。最初の『カナダ3000ドットネット』は、カナダ3000という懇意にしていたツアー・オペレーターと関連させたドメインネームだったが、サイト作成は外注したものの、ウェブ管理まで思いが及ばなかった。結局、素人には情報入力も難しく、そのサイトは開設せずに終わった。次に『サン・エスケープス・ドットコム』、続いて『ベガス・ドットコム』を立ち上げる。前回の経験からいろいろ知識を得たため、この2つの仕上がりは良かった。それ以前に『スカイランド・ドットコム』という日本語のサイトも追加していたが、こちらはオンラインビジネスとしての展開ではなく、日本人へのサービスの一環として携えていた。
本当のオンラインビジネスへ
〈オンライン〉をうたったサン・エスケープスとベガスだったが、実際にはサイト上で申し込んだ顧客への返信やツアーのブッキングは、スカイランドの社員による手作業であった。サイトからは、自動で申し込み希望の情報メールが流れてくるだけだったのだ。サイト上でブッキングから決済までできなければオンラインの意味が無い」と気付いた島田社長は、ブッキングエンジン(*1)導入を決めた。当時、まだ西海岸でのそういったサービスは無く、モントリオールの会社と契約。西海岸地域の旅行代理店でブッキングエンジンを利用したウェブサイトの開設は同社が初めてであった。01年6月のことである。少なくない投資資金は、不動産を担保に銀行から借り入れて賄った。
クルージングに癒された低迷期
そしてついに完全なサイトが出来上がり、日ごとに売れ行きも伸びてきて、これからというその矢先に9・11が起こる。何事にも前向きな島田社長もさすがに頭を抱えた。しかし悩んでいても始まらない。島田社長は、大好きなクルージングに出掛けた。その船上で大海原から昇る朝日を眺めるうちに、事業の問題も小さなことに思え、「失敗したとしても、お金を失ったとしても、大したことではない」と実感した。帰国後すぐに、大きな取引先であったカナダ3000が倒産するという苦難にも見舞われたが、予想に反してその後のオンラインでの売り上げは伸びていった。そして現在。スカイランド社購入当初は年商3ミリオンに届かない小さな会社だったが、昨年は30ミリオンを打ち出した。その大半がオンラインによるものである。
〈砂漠の真ん中の商店〉にならぬために
スカイランド社では、サイト立ち上げと同額かそれ以上の経費を投資して宣伝にも努めた。サイトがあるだけでは誰の目にも触れない〈砂漠の真ん中の商店〉である。そこで同社は、古典的なメディアでの宣伝の他、『ビルボード』と呼ばれる屋外広告(バスの後部などに掲示)や、『グーグル』などのサーチエンジンに登録して市場を開発してきた。サーチエンジンではキーワードごとに料金がかかるため、利用者からのヒット数を得るにはそれなりの数を買わなければいけない。しかしこれが奏功、国内東側への宣伝媒体はグーグルのみだが、今では全体の売り上げの20%が東側からのものだ。また、業績全体の伸び率は84%の上昇だが、オンラインによる業績だけを見ると、337%の伸びとなっている(今年度1月の業績)。
人類の3大革命とこれからのビジネス
自社のオンライン事業概要を述べた後、島田社長は農業革命から18世紀に始まった産業革命、そしてIT革命の現在へと変化した経済と、それぞれの主な要素の移行を図解。新しい経済において、新しい視点での経営は欠かせない。かつては会社単位、利潤追求が要だったビジネスも、今は個人とアイデア(消費者は何を求めているか)がキーポイントである。島田社長は、アップル社の『iPod』(*2)や『アマゾン・ドットコム』(*3)を例にとりそれを解説、チャールズ・ディケンズの「生き残る生物種は、1番強いものでもなく、1番速いものでもなく、変化に最も適応できるものである」という言葉を用い、「その社会の変化に柔軟に対応できることが、これから生き残るビジネスである」と、締めくくった。
*1:旅行社用の自動予約システムエンジン
*2:01年に初代モデルが発売されたMP3プレイヤー。同社は 年から音楽配信事業も展開し、〈1曲99セント〉が消費者に受けて大ヒット。本体共々大きな収益を上げた
*3:世界最大規模の電子商取引サイト。開設当初はオンライン書店だったが、品揃えを拡大し、現在ではCDやビデオ・電化製品・玩具などを扱う総合電子商取引サイトになっている他、NYのオークションハウス「Sotheby`s」とも提携し、オンラインオークション市場にも参入している
( 取材 藍智子)
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