SPECIAL 2005

2005年4月14日 第16号 掲載



日加商工会議所主催講演会「効率的経営のヒント」

講師:上田和男氏(カナディアーナ(株)・トリプルMハウジング(株)両代表取締役)


 講演中の上田和男氏

 
 TDKやジョンソンで業績を業界トップに導いた数々の実績を有し、現在は持株会社と住宅メーカーを経営する上田和男氏は、本紙にも『幸田謙』のペンネームで「おもしろ雑学録」を連載する多才な人物である。その上田氏が日加商工会議所主催の講演会で、自らの経験を基に、効率的で有効な1〜500人規模の中小企業経営テクニックを披露。会場ではコーヒーならぬ「脳を活性化する糖分」として飴が配られ、参加者の企業経営者らは皆、熱心に聴きいった。

経営チップ

王道
 会社を経営しているということは社会に生かされているということ。「自分(会社)良し・相手(顧客)良し・世間(株主)良し」の『三方良し』を念頭に、強欲に走らず正しい道を歩むべし。

●数字
 社是や業務目標などの事項は、3〜7つ、多くても10項目にまとめると理解されやすい。
「王道」にもあるように、3という数字は大切(例「構想・戦略・実行力」)。

● 森の鎮守
 日本の神社は森にあり、門戸が開かれている。経営(数字など)もそうあるべき。

● 自然との共存
 人類は海で生まれ森で育った。海辺からはマイナスイオンが、森林からはフィトンチッドが発生しているので、それらが自律神経を沈静させ、人を健康にしてくれる。環境に配慮することがこれからの社会には大切。

● 小さいことを誇りに
 小さい会社は伸びる可能性がある。利益率も高い。大きな企業に学ぶことは少ない。

● 優秀な人材を外へ向ける
 顧客など外への対応は優秀な人材を向けよう。社内はフォローができる。

● メンター(Mentor)になる
 社員や部下を守り、指導し、相談にのる母のような存在の経営者をメンターという。(ギリシャ神話『オデッセイヤ』に登場する英雄ユリシーズの息子の家庭教師の名がメンターだったことに由来する)


効率経営のヒント


@ 文鎮たるべし
 代表以下は5人くらいのフラットな組織であること。従来のピラミッド型ではダメ。
主役は紙(社員)で、文鎮(経営者)は適度に支え、『取締られ役代表社員』の気持ちで。

A 問題解決を最優先すべし
・問題を後回しにしない。簡単な問題も放置すると大きな問題へ。また、困難は対面すると必ず解決策を連れて来てくれるもの。
・「過ち」は改めずに過ぎたこと。即解決すれば「過ち」にはならない。
・「わかる・つかむ・さとる」を知り、5つのはかる(図る・計る・測る・量る・謀る)を心がけよ。

B コミュニケーションを意識し徹底せよ
・多面、他方位、多層型コミュニケーション(メールのCC機能など)を心がけよ。1対1で証拠が残らない電話より文書。
・90分会議の実践(週に1回または月2回)。集中力は90分が限度。会議中にはコーヒーよりも飴などで糖分補給をすると、脳が活性化して能率的になる。

C 変幻自在、君子豹変、朝令暮改を常とすべし
 変化対応せずして、生き残り・勝ち残りはない(即断即決が基本)。間違ったら即時訂正。率先して変わるべきか、とどまるべきかを定める冷静さと勇気をもつ。

D 情報管理は外部依存型との併用が大切
・バランス感覚で取捨選択(顕微鏡・肉眼・望遠鏡を使い分けよ)。
・データを読み誤るな。
・自分を客観的に見る「メタ認知力」を高めよ(例 日本を離れると日本のことがよくわかる)。外部から学び、外部の意見を聞くこと(そのために商工会などがある)。

E 営業優先=顧客取引先最優先を心がけるべし
 営業を営業に任せるな。全員営業の徹底。但し基本は「三方良し」。

F 仕事には優先順位をつけるな
 仕事をためない。「すぐやること」が最小の時間で最高の成果を上げるコツ。
(例外 問題解決、特に顧客に関するものは最優先処理すること)

G 学者、評論家、ジャーナリストを妄信するな
 経済学、経営学、景気変動説や事象分析・予測などに囚われるな。ついている者や成功者の言うことを聞け。

H 目標管理
 3〜7つくらいの具体的で明白な指標と計画・検証。着眼大局、着手小局。何%の売り上げ増などの細かい目標でなく、大きな絶対値で。

I 「場」自然の摂理に従う
 場とは時間と空間の接点。TPO(Time・Place・Occasion)を大切に。事業では、現場・現品・現実に注力せよ。

(取材 藍智子)

中小企業経営対策
項目 詳細
経営態度 1.トップの能力と人間的魅力いかん。
2.小回りを活かす。
3.商品、サービスの独特さを売る。
4.経営哲学、方針、目標を明確にする。
5.公私の区別をつける。
6.実行力を前面に押し出し、なりふり構わず働く。
7.棲む世界を明確にする。
8.信用を大切にし、誠実な仕事をする。
組織 1.トップの陣頭指揮あるのみ。
2.販・生・資金の組織分化。
商品 1.通産省の小分類項目を狙う。
2.商品ごとの採算を入念に。
3.高品質で手の込んだもので勝負する。
4.小回りを効かせて少量多品種型。
5.商品の特徴をはっきりする。
研究開発 1.製造の傍らでも、担当者を1人は置く。
2.人まね+改良でやる。
3.固有技術を基盤に置く。
生産 1.整理整頓をしっかり行う。
2.ムダ・ムラ・ムリの排除に努める。
営業 1.積極性と粘りの直接販売で販売基盤をつくり上げる。
2.目標を立て、予実績検討を行う。
3.優良な得意先に集中する。
4.局地マーケティングに徹する。
5.テクニカルサービスを中心にする。
6.訪問の効率化。
≪生産財の場合、次の点を加える≫
7.ユーザーの名簿を完備する。
8.説明用具は工夫して必ず用意する。
9.技術者の応援体制をつくる。
財務・経理 1.会社の財産と個人の財産を明確に区分。
2.資金繰り計画を立て、資金管理を行う。
3.月次決算を行い、計数面での問題点を分析。
労務 1.一人三役のやる気づくり。
2.誰にでも納得のいく公平な賃金システム。
<田辺経営社資料より>
 
PROFILE
上田和男(こうだ・かずお)
62年 慶応大学経済学部卒業
67〜68年 米国シラキュース大学院留学(MBAマーケティング専攻)
62〜69年 住友金属工業(株)鋼管部門
70〜87年 TDK(株)磁気テープ事業部門
71〜82年 米国TDKにて営業部長、副社長、代表取締役総支配人など歴任。東西2州に現地工場設立、NY本社ビル建設、市場占有率米州No.1達成、NY上場達成。
82〜89年 東京本社にて国内営業統括、輸出統括及び全世界マーケティング統括部長などを歴任。同時に世界70数ヵ国を訪問、TDKブランド世界No.1達成に尽力
87〜93年 ジョンソン(株)常務取締役コンシューマー事業本部統括 家庭かびとり剤・自動車用ワックスなどでブランドNo.1達成
93〜95年 ケン・マーケティング&マネージメント研究所代表(東京・大阪企業への経営アドバイス)
96〜97年 カナダ・アルバータ州にカナディアーナ(持株会社)設立、トリプルM社買収
98年〜 トリプルM経営改善、業界トップ達成。持株会社の農業・不動産リストラ実践
趣味は音楽、絵画、海外旅行、ウォーキング。