SPECIAL 2005
2005年3月17日 第12号 掲載
|
「遺言書(遺言状)」なんて、財産や資産のある人ならともかく、自分には関係ないと思っている人も多いのでは…遺言書とは自己の死後、財産や身辺上のことについて、遺言者の意思を尊重して、その実行を確実にするために法の力を借りる制度である。BC州の法律に精通したマイケルゴールデン弁護士に、遺言書についてうかがってみた。
ヲなぜ遺言書が必要か
英語で遺言書のことを『Will』というが、まさに「自分の意志や願望」をかなえる書類である。たとえわずかな財産であっても死後、自分の財産が気に添わない人に受け継がれたりしては面白くないのではないだろうか。また、BC州では、もし、亡くなった人に家族や身内がなく、遺言書が残されていなければ、その人の財産はBC州の所有となることが法律で定められている。カナダにいなくても日本に身内がいる場合、遺言書がないと手続きに時間がかかることがあり、身内の所在が明らかでなければ、やがて財産は州に没収されてしまう。
ヲ遺言書がない場合、BC州と日本の法定相続分の違いを比較すると
法定相続分とは、遺言書がない場合に法律で定められている相続人への割合のことを言うが、BC州と日本とでは違うので、注意が必要である。
参考になるウェブサイト:
http://www.qp.gov.bc.ca/statreg/stat/E/96122_01.htm#part10
●専門用語:
Intestate (無遺言死亡者)、
Spouse (配偶者)、
Issue (子供)、
Kin (親族)、
Guardian (後見人)
●遺言書に関わる人々とその役割
・ Witness (証人)…作成された遺言書に本人が署名する時に立会い、2人の証人もまた署名する。証人は財産を受け取る可能性がない人なら誰でもよい。証人には遺言の内容を知る必要も権利もない。
・Executor(相続執行人)…執行人は遺言者が死亡した時点で財産の分与を遺言書にそって遂行する。未成年者、精神障害者以外の人ならOK。配偶者でも、財産を受け取る人でも、弁護士でも構わない。複数でもよい。贈与の際の税金はないが、執行人は検認費用(probate
fee)を請求することができる。
・Administrator (遺産管理人)…遺言書がないということは、相続執行人もいないので、遺産の管理者が必要となり、法定申請によって定められる。費用は遺産から支払われる。
●事例1・配偶者と子供2人
日本の場合
例えば、夫が亡くなった場合、法定相続分は妻(配偶者)に2分の1、子供にも2分の1。子供が複数いる場合は、その間で等分。つまり、この場合だと子供の相続分はそれぞれ4分の1ずつになる。
BC州の場合
もし、財産が6万5000ドル以下だった場合は、すべて配偶者に。それ以上であれば、まず6万5000ドルは配偶者に、6万5000ドルを超えた財産を配偶者と子供が等分する。つまり、子供がひとりならば、6万5000ドルを超えた財産を配偶者と子供が2分の1ずつ。子供が2人ならば、配偶者と子供それぞれが3分の1ずつになる。
●事例2・配偶者と被相続人の両親
日本の場合
例えば、夫(遺言者)が亡くなり、妻(配偶者)、夫の両親がいて、子供がいない場合、法定相続分は妻に3分の2、夫の両親に3分の1。(二親とも健在な場合は、厳密的には、夫の父、母にそれぞれ6分の1ずつということになる)
BC州の場合
BC州では両親に財産が行く場合は、配偶者も子供もいない場合になる。二親とも健在な場合は、厳密的には、被相続人の父、母にそれぞれ2分の1ずつということになる。片方の親がすでに亡くなっていれば、残っている親にすべての財産が行く。
●事例3・配偶者と遺言者の兄弟・姉妹
日本の場合
例えば、夫(遺言者)が亡くなり、子供がいなく、夫の両親もすでに死亡、夫の兄弟姉妹がいる場合。配偶者(この場合は妻)には4分の3、兄弟姉妹に4分の1が法定相続分となる。(兄弟姉妹が複数いる場合はその間で等分)
BC州の場合
BC州では兄弟姉妹に財産が行く場合は、配偶者も子供も両親もいない場合になる。兄弟姉妹が複数いる場合は、その間で等分となる。
ヲこんな場合は遺言書が必要
前出の事例を見て気が付かれたように、BC州では配偶者が日本に比べて優遇されている。日本に両親がいて、自分がもし先に亡くなった場合、年老いた両親にも財産を分けてあげたいなどと考えている人は、スムーズに財産が分配されるように遺言書作成を一考してみてはどうだろうか。
ヲ日本語で遺言書を残すことは可能?
遺言書はどこの国の言葉で書かれていてもいいし、手書きでもタイプで打ってあるものでも、市販のキットでもOK。手が不自由で代筆を頼むことも可能である。ただし、2人の証人の立会いのもとでその遺言書に本人の署名と、証人2人の署名と日付が必要。
ヲ 日本にも財産がある場合
BC州と日本では法律が明らかに異なる。BC州には、贈与税(Donation Tax/Gift Tax)や相続税(Death Tax)はない。BC州にある財産、資産においてはこれらの税金がかからないが、日本にある資産については当然違ってくる。遺言書を作成する際に、日本の法律に精緻した弁護士の関与も必要になってくる場合がある。
ヲ未成年者が相続する場合
BC州では19歳未満は未成年者と定義され、19歳になるまでは遺産は受け取れない。未成年者に財産を譲る際は後見人を遺言書に記載するのが常であるが、例え後見人であっても、また親類であっても、当人が成人するまでその財産は勝手に使ったり、投資したりできないよう、財産管理は政府機関によって行われる。その子供にとって何が一番有益であるかをBC州では常に判定の基準としている。
ヲ遺言書が無効となる時
・本人(遺言者)の署名、2人の証人の署名がないもの。
・作成した日付が記載されていないもの。(何通か遺言書が見つかった場合、日付が新しいものが有効)
・一度作成したものは新しいものが作成されるまで有効だが、資産の変動、家族構成の変化、法律の改正があった時は更新が必要かどうか確認したほうがよい。
・結婚すればそれ以前に作成したものは無効。(結婚する予定が決まっていれば、それを記載すれば有効になる)
ヲ遺言書の登録
BC州では遺言書を公式に登録できる。ビクトリアの政府機関に作成の日付、保管場所などを登録申請書に記入して提出する。費用は17ドル。弁護士に依頼した場合は通常自動的にこの手続きも行ってくれる。登録申請書はウェブサイトからのダウンロードも可能。
http://www.vs.gov.bc.ca/wills/index.html
ヲ気になる弁護士料は
法律事務所によって多少異なるだろうが、マイケルゴールデン法律事務所では遺言書作成は通常150ドルから250ドル。料金が上がる場合というのは財産の多さと言うよりもむしろ、管理方法の難しさ、分配の複雑さ、日本に財産がある場合などだという。今回取材にご協力いただいたマイケル弁護士は、素人にもわかりやすい英語を使って説明してくれるので安心。また、それでもやはり英語ではちょっと自信がないという人には日本語アシスタントの菊池キヨミさんがいるので気軽に相談できる。
(取材 ミネ内田ビイラー)
詳しいお問い合わせは:
マイケルゴールデン法律事務所(Michael Golden Law Corp.):
#2008-4330 Kingsway, Burnaby (メトロタウンの近く)、
TEL: 604-439-2420
日本語ラインは菊池キヨミさんまで:604-782-6946
初回相談は無料
(遺言書作成のほか、交通事故、離婚、不動産、移民申請、ビジネスなども取り扱っている)