SPECIAL 2005

2005年2月 第8号 掲載



パシフィック・ウェスタン・ブリューイングの小松和子社長に聞く
マーティン首相のアジア来訪

話を伺ったPWBの小松社長

天安門広場にて

 カナダのポール・マーティン首相が一月十五日から二十三日、就任後初めてのアジア訪問を行った。
 まず、スマトラ沖大地震で被害を受けたスリランカ、タイ、そしてインドを訪れた後、十九日に日本入り。日本からは北京に向かい、胡錦濤国家主席と会談。カナダからの貿易ミッションCanada Trade Mission to Chinaグループに合流し、さらに香港を訪れた後、二十三日に、九日間、五ヵ国への歴訪を終えて帰国した。
 今回はマーティン首相を迎えて、十九日に行われた日本経済団体連合会(経団連)主催の昼食懇談会に出席、さらに中国使節団に参加したパシフィック・ウェスタン・ブリューイングの小松和子社長に、日加両首相の懇談会や中国への使節団の成果などを伺った。


まず、マーティン首相訪日の成果について伺います。


 マーティン首相にとっては首相として初めての訪日ということで、表敬訪問もかねたものでした。成果として最大のものとしては、日加間の経済関係をより強化するため、カナダが推し進めたいFTA(自由貿易協定)、そして日本が目指すEPA(経済連携協定)の二つについて大まかな枠組みが決まったことですね。

 カナダにとって日本は、アメリカ、中国に次ぎ第三位の貿易相手国であり、日本を重視しています。カナダは日本からの投資を期待していて、特に天然資源の分野への投資を誘致したいのです。一九九九年度に前年度比、34%増と大きく拡大した対加直接投資は、二〇〇〇年度以降は低水準に留まっています。

これを増やして欲しい。首相は対日投資額が対加投資を上回っていることを挙げています。現在、例えばパルプや石炭産業に対しての投資は行われていますが、それを他の天然資源を利用した産業にさらに拡大してほしいという話がありました。

 また首相とともに日本を訪れたオースティン上院議員は、このところ経済界なども中国に目を向ける傾向にあるけれども、何といっても日本はGDPで世界第二位。日本を重要視していることを懇談会の席で確認しています。「日本のテクノロジーを使うことで、日中加三国のビジネスの発展を促したい」ということでした。


十九日に行われた日本経団連主催の昼食懇談会についてですが、出席者はどういった方でしたか?

 カナダ側からはマーティン首相、特命を受けて同行したエマーソン産業大臣、オースティン上院議員そしてライト駐日大使、日本側は経団連でカナダ委員長を務めるホンダの吉野浩行副会長、三菱商事顧問で、経団連カナダ委員会の下、設置した日加経済連携タスクフォースの財前宏座長、他、カナダと関連したビジネスを行う日本企業の代表などで、あわせて約一七〇名です。私はカナダ側から一企業として出席させて頂きました。


懇談会であったお話は?

 吉野経団連副会長が「日加経済関係は、両国の経済規模からみて発展の余地がまだまだ大きく残されており、両国間の貿易投資関係を一層拡大すべきこと、また、両国が協力して地球環境問題などのグローバルイシューを解決することが重要である」という話をされました。

 さらに両国の経済連携をより強化するため、何らかの枠組み合意を結ぶことや租税条約改正などで両国への投資阻害要因を取り除く必要性を強調しています。

「日加経済枠組み」の検討については、首脳会談でも合意されました。


この「日加経済枠組み」というのは?

 条約とは異なり法的拘束力のない合意ではありますが、両国間の協力関係を深め、経済関係活性化を目指すものです。経済的課題や機会に対処すること、経済関係引き上げのための政策の推進、二国間の協力による効果に関する共同研究の開始などがあり、六ヵ月以内に形成したいとしています。


小泉総理から日本の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の話があったようですが。

 日本に観光客を誘致したいというキャンペーンですね。カナダは観光先進国ということで、カナダからも学んでいきたいという話でした。これに対して、マーティン首相が愛知万博開催についての祝意を述べています。実はこの万博は開催地としてカルガリーも立候補していて、愛知に破れたのです。でも、世界各国で最初に愛知万博に協力すると言ったのはカナダです。カナダには「ギビング」の精神がありますから。

 愛知万博については、二月四日にサイエンスワールドで、三月二十五日の開催に先立ち、カナダ参加を祝うイベントが行われました。また、昨年の今頃は日本から、参加を表明したカナダへ表敬訪問がありました。


マーティン首相は日本の後で北京を訪問。中国使節団に合流されています。小松社長も中国へのミッションに参加されたのですよね。この使節団について教えてください。


 二八〇社から三七六人が参加したもので、一月十八日から二五日にかけ上海、北京、香港を訪れました。私は北京部分に参加しました。

 使節団および首相の訪中の目的ですが、カナダへの観光客誘致、それから木材やエネルギーなど天然資源の売り込みです。

 観光については現在、中国からカナダを訪れる人は年間約十万人らしいですが、それをバンクーバー・ウィスラーオリンピックが開催される二〇一〇年には百万人が推定されています。すなわち十倍になるわけです。

 日本人観光客の二倍ほどになります。


五年で十倍というのは大幅増加ですね。

 はい。これについては受入態勢の整備が急がれますよね。ホテルなどの宿泊施設だけでなく、空港や税関、セキュリティや人の問題もあります。それから、中国からの観光客は何がしたいか。彼らのニーズをつかまなければいけません。日本人ならショッピングが好きですし、ヨーロッパの人たちはカナダで滞在している間は、ハイキング、フィッシングなどを楽しんでいますよね。目標は決まったので、課題を処理していかなければなりません。


中国は急速に開発が進んでいると言われますが。

 北京は毎日変わっていると言われるぐらいのテンポで開発が進んでいます。故宮も復旧作業が行われ、迎賓館も立派です。でも、緑が無く大気汚染がひどかったですね。

 中国はとにかく経済が急速に発展。エネルギー需要が急拡大しています。最近の世界におけるエネルギー不足は、中東情勢のみによるものではないのです。もちろん中東情勢も影響していますが、最も大きな原因は中国からの需要です。その結果、石油価格が上昇している。カナダはエネルギー産出国なので、日本だけではなく中国にとっても魅力的です。


カナダ、日本、中国と三ヵ国の関連での話はありましたか?

 マーティン首相は日本滞在中に「中国などを含めた東アジアが経済的に統合していく上で、日本の主導が不可欠であると、カナダ側は考えている」との発言がありました。

 日本は長い間、カナダにとって米国に次ぐ第二位の貿易相手国でしたが、数年前に中国に抜かれました。また、日本にとっても中国は第二位の貿易相手国でしたがごく最近第一位になった様です。両国にとって中国市場の重要性が高まっています。そんな中で、日本とカナダはこれまで築き上げてきたものがありますから、二国間で協力して、中国のビジネス環境の改善を働きかけていくべきだという話がありました。

 BC州はカナダへのゲートウェイと言われますが、日本はアジアへのゲートウェイですよね。両首相は太平洋をはさんだ両国が、外交政策を強化、促進することで、アジア太平洋地域および世界の平和と繁栄に貢献していくという見解で、両首脳は合意しました。カナダはアジア太平洋諸国との経済連携を視野に、日本のほか中国やインドなどの新興市場諸国との関係を強化していく方針を示しています。


今回のマーティン首相の訪日により、様々な面で日加関係の改善が期待されますが、最後に両国関係についてメッセージを。


 日本はアメリカと密な関係にありますが、政治的に比較的中立な立場を守るカナダは日本にとって非常に大切な国といえます。ジャパンバッシングがひどく、アメリカが世界各国に同調を求めた時もカナダは中立を通して、バッシングには入らなかったと思います。

 そういったこともふまえて、我々、移民や日系人、日系企業は、日本とカナダの動きに興味を持ち、今後私たちの立場がより良く発展するためにこの経済的、政治的環境変化の過渡期にいかに対処していくか、またこの機をいかに生かしていくかが大切ですので政治、経済の動きに興味を持っていきたいですね。

(取材 西川桂子)