SPECIAL 2005
2005年2月 第7号 掲載
イースト・バンクーバーで62匹の仲間と発見されたネイサンを抱くペニーさん |
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●猫のマザー・テレサ、 ペニーさん
少女の頃、家に猫を連れ帰っては母親に叱られたというペニーさん。自室のクローゼットや引き出しなどに隠した猫たちを探すのが母親の日課だったとか。その少女時代の心そのままに「すべての猫に家と食べ物と愛情を与えること、絶対に見捨てたり殺したりしない」方針を貫く。
だからこの自宅の一部である施設には猫HIVにかかった猫たちも隔離された部屋に暮らす。虐待や事故でボロボロになった猫には治療と精神的・物理的ケアを施す。そしてすべての猫に里親を見つけるのだ。ペニーさんの必死の活動のおかげで、猫たちは100%里親の元へと引き取られているそうだ。あくまでこの施設は仮の住まい。それでもペニーさんは現在保護している猫すべての名前と過去を把握している。猫たちも愛情を理解し、以前ノラ猫だったのが嘘のようにどの猫も甘え寄ってくる。
●300匹の猫の食費は1日100ドル
しかし300匹もの猫を個人で維持することは至難である。食費が1日約100ドル。獣医にかかる費用が年間約5万ドル。それを捻出するためにイベントや基金などの活動も欠かせない。猫舎の掃除や管理にも膨大な時間を要する。
また、各地からノラ猫情報や虐待情報を聞けば飛んで行く。取材中にも電話が鳴り、「23匹の猫がいる」との連絡があった。ペニーさんによると、今夜中に捕獲し、すべての猫に健康診断と避妊・虚勢手術、ワクチン投与、タトゥーなどを施すという。その費用およそ3千ドル。救出費用捻出に頭を痛めているものの、借金をしてでも救うのがペニーさんのやり方だ。他にも10匹の猫が到着予定で、この日だけで30匹以上が新しくここに収容される。「もっと多くのボランティアが必要です」とペニーさんは訴える。
●過酷な生い立ちの猫たち
1匹1匹の猫に事情がそれぞれあり、皆傷ついてここにやってくる。コヨーテに重症を負わされた猫、虐待で全身骨折となった猫、皮膚病で毛が無くなった猫、しっぽを切られて排尿のコントロールを失った猫、盲目の猫。
また、飼われていたものの、「ボーイフレンド(またはガールフレンド)が猫嫌い」「赤ちゃんが生まれるから」などの身勝手な理由で捨てられたり、「安楽死させてくれ」と獣医に持ち込まれたり。彼らは治療と愛情を受け、少しずつまた人を信用することを学ぶ。
ノラだった猫はこの施設が天国と思うそうだ。しかし、人間に飼われていた猫にとってここはストレスが多く、ひどいウツ状態となることもしばしばあるという。生きる気力を失い、餌も食べなくなり、最悪のケースは弱って死んでしまうことも・・・。
猫たちは人間の都合で常に振り回されているのだ。
●人の手に委ねられた 猫たちの命
捨てられて寒さと飢えの中にいると、腎臓が破壊されて助からない場合もある。それでも最後に「自分は愛された」という認識があれば救いになるとペニーさんは懸命だ。
猫舎の中は猫の性質に合わせて立体的な構造になっているが、その一番高くて人間が登ってこられない場所は新参者のノラたちが固まっている。
「初めはそこからジロリと見下ろしているだけの元ノラの猫たちも、日が経つと少しずつ状況を理解し、私に近づいてきます。猫は本当に頭の良い動物です」とペニーさん。ペニーさんに名前を呼ばれると、目を細め、しっぽをピンと立てて擦り寄ってくる猫たち。「この子たちを残して私が死ぬわけにも倒れるわけにもいかない。私やボランティアの方たちがいなくなったら猫たちも生きていけないんです」。
●ボランティアについて
「とにかく人手が足りない」と、日本人ボランティア・スタッフのメグミ・マイルズさんは語る。過去には夜中まで猫の世話をしたことや泊り込んだこともあったそうだ。仕事はエンドレス。
例えば猫のトイレは大きなバスタブ2つに砂をたくさん敷き詰めているが、汚物を片付けた端から猫たちが用を足しにやってくる。猫はきれい好きで、トイレが汚いと使わないこともあるからだ。「もっとスタッフがいれば衛生状態も向上でき、また1匹1匹に注意を向けてあげられる」と、メグミさん。ボランティアはこれで十分ということがない。また、個人でこういった大規模な救援保護を行うことも限界であり、もっと社会的に認知されることが望ましいといえる。
●各地で行う里親探しや講演活動
ペニーさんは保護する猫たちの世話を始め、飼い主のモラルなどについての講演、各種チャリティーイベント企画、ショッピングモールや提携するペットショップでの里親探しイベントなどを自身の造園デザイナーとしての仕事の合間にこなす。常時新しい発想を生み出すペニーさんだが、最近は同性愛グループと提携してHIVにかかった猫たちを養子縁組することを提案、実施段階になっている。
同性愛者、ことにゲイの人々は猫たちのようにHIV保持する人も少なくなく、お互いが理解しあい、慈しみあい、慰めになるという。また、ゲイの人々は温和で優しい性格が多いので、猫の里親としてもひじょうに理想的だ。
怪我や予後が悪く、たとえ貰い手がなかったとしてもここではそれらの猫が殺されることは決してない。ペニーさんが引き取り、幸せに暮らせることが保障されている。そしてさらにいい環境、広い猫舎を与えたいとペニーさんは寝る間を惜しんで日夜奔走している。
(取材 藍智子)
【こんなお手伝いを必要としています!】
● 猫舎の掃除、猫の遊び相手、グルーミングなどのケアができる人
● 猫の引き取り、餌の買出しなどのために車の運転ができる人
● 猫舎の増改築をするための大工仕事ができる人
● 基金活動、イベント活動ができる人
● 心身に傷のある猫の療養とケアを自宅で行える人
【各種寄付のお願い】
● 寄付金 ● 餌 ● キャットリター(トイレの砂)
● キャット・タワー(猫が登ったり爪を研いだりする台)
● グルーミング用品(シャンプー、ハサミ、櫛、ブラシなど)
● 掃除用具(ほうき、ちりとりなど)
*詳細はウェブ参照。また、現在毛布・タオルは十分足りているとのこと
【フォーゴトン・フィーラインズのポリシー】
● “No-Kill”どんなに不遇な猫でも絶対に殺さない (助かる見込みのない苦しみを伴う場合を除く)
● 発見時に妊娠している雌猫は出産後に避妊手術を行う
● 貰い手のいない猫は終生保護
● ケージに閉じ込めない保護飼育環境
● すべての猫に健康診断、治療・ケア、避妊・去勢手術、ワクチン投与、 タトゥーを施す