SPECIAL 2005

2005年1月 1号 掲載



今一番注目されている医療とは…「総合医療について」

Dr.田中朝絵 &Dr.原田直子


2003年の5月におふたりは出会ったという


  
 環境汚染、食品添加物による食物への不安、さまざまな原因から派生するストレス、増え続ける成人病。

現代人の健康は常に危険にさらされている。

私たちが今できる最良の方法とは何なのか、バンクーバーで活躍する2人のドクターに最前線の医療・統合医療についてうかがってみた。


統合医療とは、西洋近代医学と相補・代替医療を融合させたもの

編集部:
最初に総合医療とは一体どういうものなのか簡単にご説明いただけますか。

原田:統合医療というのは近代西洋医学と東洋医学など (Complementary and Alternative Medicine) と呼ばれている相補(補完)・代替医療を統合したものをいいます。

田中:(Complementary)というのは、何かがあってその足りない部分を補う、助けるって意味ですよね。

(Alternative Medicine)は代替医療。言い換えれば西洋医療に替わるもの。

漢方や鍼灸をはじめ、ホメオパシー、カイロプラクティックやアロマセラピーなど、いろいろあります。

相補・代替という言葉は、そもそも西洋医学が主流という考えからきているんです。

原田:ドイツ、フランス、アメリカ医療のドクターが言い出したからなんですね。

統合医療の提唱者としてアメリカのアンドリュー・ワイル博士が有名ですが、将来の理想の医療とは西洋とか、相補・代替医療とかにもう分けることはなく、(医療)と言ったらこのすべてを含むということになるだろうと言っています。

それともうひとつ、ワイル博士と同様、日本での統合医療のリーダーである渥美和彦博士も言っているのですが、西洋医学において権威を持っているのは医師ですよね。

でも本来は患者自身の希望と、選択を優先すべきだと。

例えば、もしガンであるならば手術、化学療法、漢方療法などすべての情報を患者に与えて、その中から患者自身が選んでいくことが望ましいわけです。

(テーラード・メディシン)と言われていますが、個人個人のニーズに合わせる、あくまでも患者優位の医療であるべきだというのが統合医療の考え方です。

田中:漢方や鍼灸などは患者があくまでも主体ですよね、患者に合わせて治療を行う。

西洋医学だけなんです、標準化した治療を患者に当てはめるというのは。

それでは、西洋医学の根本には何があるかというとサイエンティフィック・メソッド(科学的研究法)なんです。

これは、誰が、どこでリサーチをしても同じ結果が導き出されるという方法です。

1000人ランダム(無作為)に選んで研究したとして、それを違った場所で違った1000人をランダムに選んで研究しても、同じ結果が出る。

つまり、そうした研究から生まれた薬や手術は、平均的に1000人に効き、いい結果が期待できるというわけです。

原田:80 %ぐらいの人には成功していますからね。相補・代替医療の難しいところは、西洋医学と違って統計的に一般化しにくいということなんですね。

例えば、肝臓が弱っていたひとりの患者さんがある漢方で良くなったとしても、その漢方薬がすべての患者さんに有効であると言い切ることは非常に難しいでしょう。

なぜなら、その個人の体質を含めた現在の症状に合った処方であって、その処方は他の人には当てはまらないことが多いからです。

でも、科学的にデータが出しにくいというのは、医師や研究者からの立場から見てのことです。

実際、患者さんにとっては、それで症状が改善された、治ったと実感できれば、データなどは関係ないのです。

ただこれからの課題としては、何らかの形で相補・代替医療の効果を検証していくことだと言われています。


人間をトータルで診療するホリステイック医療とは・・・

編集部:ホリスティック医療という言葉を聞いたことがありますか。

田中:簡単にいうと人間を丸ごと見る医療のことですが、身体、精神、環境などすべてを通して患者を診ていく医療と言ってもいいですね。

西洋医学は臓器を分けていく解剖から始まり、診察の際も肝臓、心臓、胃などと悪い部分を特定して、治療もそれによって進められていきます。

ところがそういったあるひとつの臓器だけを特定し、治療していくだけでは病気が改善されないんじゃないかと疑問視され始めたんです。

例えば心臓に問題があると診断されたとします。その原因は血圧、ホルモンの異常かもしれない。

それではなぜ、血圧が上がったのかと調べると、実は多くのストレスを抱えていたとか。

原田:人間の体はすべてつながっているわけです。西洋医学は余りにも臓器、臓器で分化しすぎています。

外科、内科、だけにとどまらないで、内科もまた消化器、循環器、呼吸器などに細分化されています。

人間をトータルで診ることを忘れてしまった反省から生まれた考え方といいましょうか、ホリスティックの概念はアメリカですでに1960年代には始まっています。

編集部:統合医療とホリスティック医療の違いが今ひとつはっきりわからないのですが、両方とも統合、全体的に診るといった点で考え方としては似通っているのですか。

田中:いいえ、全然違った考え方です。ホリスティックというのは、全体的に診るということなのでどの医療のジャンルでも可能なわけです。

例えば漢方は患者を全体的に診て漢方薬を処方しますね。

私は西洋医学に携わっているわけですが、ファミリードクターですから完全にホリスティックなわけです。

自ら患者を全体的に診察する。各種検査、また外科、内科、精神科からの診断報告書も最終的に私の手元に戻ってくるので、患者の様子がトータルでわかります。

こういったことに加えて、例えば、患者は独身なのかそれとも子供が3人いて、ご主人の会社はうまくいっているのかとか、おじいちゃん、おばあちゃんの面倒も見ているのか、ホリスティック医療とは厳密にいうと、そういった社会的背景まで入ってくるわけです。

原田:西洋医学の中にまずホリスティックの考え方が生まれました。

しかし、西洋医学がひとつの限界を感じはじめ、そこに相補・代替医療が登場したんです。

さらにもっと追求したもの、これらを統合したものが統合医療となったわけですが、まだ新しいここ 年ぐらいの歴史なんですね。

近代医学は治療が目的だが、 (相補・代替医療)は予防し、自然治癒力を向上し、ライフスタイルの改善が中心

田中:西洋医学は例えば、骨が折れているとか、心臓発作、手術が必要とされる時などの治療には優れていますが、アレルギー、慢性病、成人病などには西洋医学は不向きです。

原田:西洋医学は何か問題があったら、それを取り除くという考え方ですね。

痛みがあれば取り除く、熱があれば下げるといったように。

相補・代替医療での考え方は、痛みや熱は体がバランスをとろうとしているサインと診るわけです。

風邪の例ひとつを取っても、例えば、ドクターのところに行き、ただ風邪を早く治したいと風邪薬を、熱を下げるために解熱剤を処方してもらい、それを服用しながら会社に出かけ、仕事を続けていくやり方もあります。

一方で、風邪をひいたのは体が疲れているひとつのサインと考えれば、ビタミンを取り、休養を取って、体のバランスを整えることで回復する場合が多いですね。

身体は正常な状態に戻そうと、自分で治していこうとするわけですね。その考えが予防医学に通ずる考えです。

田中:西洋医学の予防は何かというと、予防注射とか、飲料水にフッ素を入れて虫歯を防ぐとか、塩素を使って消毒とか、つまりは公衆予防がほとんどです。

もっと個人をターゲットとした予防をこれからはドンドン増やしていけたらと思っています。

原田:渥美博士も言っておられますが、今こそ治療中心の医学から予防と健康増進のターニング・ポイントの時なんです。

病気になったらお医者さんにお薬をもらって「ハイ、おしまい」ではなく、病気にならないような自分をつくっていく。

生活習慣を改善していくことが大切ですね。

田中:予防医学においては、自分の生活を振り向いて、自分にとって何が良くないか、見極めることが大切なのですが、これが意外とむずかしいんです。

本人は気がつかないで、体に悪いことをしていることが多いので、家族やまわりにいる人に聞いてみるといいですね。

例えば食べ物について、しょうゆやソースをたっぷりかけるのが好きだったり、間食が多かったり。

日常生活の中でも姿勢や座り方とか、足を何気なくいつも組んでいるとか。

そういう小さなことでも体にゆがみが生まれて体調を崩していることはよくあります。

予防医学は個人の時間とエネルギーがいるものです。

小さなことに気をつけ、重ねていくと大きな結果に結びつくことになりますので、ぜひ頑張って欲しいと思います。

 最後にバンクーバーに暮らす人々のための生活習慣病・予防医学セミナーを2005年に予定しています。

詳しいことは日加ヘルスケアからまたお知らせがあると思いますが、第1部はストレス・マネージメントとなっていますので、ぜひ講演を聞きに来てください。
 (取材 ミネ内田ビイラー)