MAPLE 2005

2005年10月20日 第43号 掲載
 
第24回バンクーバー国際映画祭 続報

女優・清水美砂さん主演、地元バンクーバー発 のロマンチック・ラブストーリー

『Paper Moon Affair』

 
昨年5月よりバンクーバー近郊で撮影が進められていた清水美砂さん主演のインディー映画『Paper Moon Affair』が、10月9日と12日の両日、バンクーバー国際映画祭で公開された。上映日には、デイビッド・タマギ監督を始め、同映画の脚本とプロデューサーを手掛けたフェアチャイルド社社長のトーマス・ファング氏や、地元出身の俳優らの姿も見られ、スタッフらと共に舞台挨拶が行われた。
 

“ケイコ”役の清水美砂さん(撮影現場)
 
海外作品は初の清水美砂さん

 ロケはボーエン・アイランドやトフィーノ、ミッションなどで行われた。絵葉書のように美しい情景もこの映画の見どころである。87年に『湘南爆走族』のヒロインとしてデビューした、主人公“ケイコ”役の清水さんは現在、家族とアメリカ国内に住む。

カンヌ映画祭に出品された出演作品『うなぎ』(監督・今村昌平)と『赤い橋の下のぬるい水』(同)の映画を見たファング氏より「是非会ってみたい」との要請があって出演が決まったというが、英語での映画出演は初。苦労もあったようだが、スクリーンでの清水さんの流暢な英語に違和感は無かった。

清水さんの相手役“ハート”を演じる若者も好印象である。また、タマギ監督も音楽ビデオやコマーシャルなどが専門で、映画製作は初めてとのことだが、よくできていた。


タマギ監督(撮影現場)

中国の格言「水花鏡月」をベースに
 脚本は、エグゼクティブ・プロデューサーでもあるトーマス・ファング氏が創作したストーリーをベースにしたもので、中国の恋に関する格言「水花鏡月」がモチーフとなっている。

「水花鏡月」とは“水に映った月は幻である”という意味で、恋の儚さを美しくうまく表現した言葉である。劇中には他にも、蝶や折鶴といった儚さの象徴がいくつも登場。映画の冒頭シーンには「月の美しさに恋する蝶」の寓話が出てくるが、清水さん演じる“ケイコ”はさながら水に映った幻の月で、男たちはその幻に恋してしまった2匹の蝶であろう。 美しく儚い、まやかしの恋物語。いや、恋はいつでもまやかしで幻なのだ。

 体験無しでは書けないと思うストーリーだが、ファング氏に聞いたところ、一息置いて「ファンタジーですよ」とにっこり笑みを浮かべた。

(取材 藍智子)

ハートを演じたブレンダン・フレッチャーさん(撮影現場)

脚本とプロデューサーを手掛けた
トーマス・ファング氏
『Paper Moon Affair』
監督:デイビッド・タマギ
キャスト:清水美砂/ブレンダン・フレッチャー/セバスチャン・スペンス/ジョン・ローン他

あらすじ
 ケイコ(清水)は中国系の夫・ハラダ(ジョン)に連れられて、カナダの北西部にある小さな漁師町へ余暇を過ごしにやってきた。裕福だが冷酷な夫との愛の無い結婚生活に、孤独感を消せないケイコ。折り紙が唯一の安らぎだったが、夫はそれも気に入らない。

 ある朝目を覚ますと夫の姿が無く、ケイコは置き去りにされたことを知る。そして町へ出たケイコは、二人の男たち――アル中の漁師の父を持つ若者ハート(ブレンダン)と、冷めた家庭生活を送る警察官バーン(セバスチャン)――と出会った。

若いハートの純朴さに少しずつ心を開く一方で、バーンの積極的な行動を受け入れるケイコに男たちは激しく嫉妬を覚え、互いにぶつかる。いつしか二人にとって、ケイコの存在が何の変化も希望も無い自分の人生を振り返るきっかけとなっていった。

 別れの日。ついに熱い思いを抑えきれなくなったケイコとハートは、激しく愛を交わす。だが、ハートが目覚めるとケイコの姿はもう無かった。男たちに恋の幻影を残して。82分。




出演の人気女優、室井滋さん来晩
『闇打つ心臓』

 82年に自主制作映画として作られた『闇打つ心臓』で主役“イナコ”を演じ、05年度版『闇打つ心臓』では同役の23年後として出演した室井滋さんが、同映画監督ら総勢12名の関係者と共に9月28日バンクーバー入りした。室井さんは、同日に行われた映画祭オープニング記念パーティーに出席、続く10月1日・2日には出演映画の舞台挨拶。集まったファンにも気さくに応じるイメージ通りの明るい室井さんに、周囲は華やいだ。
室井さんへ 直撃インタビュー!

―オープニング・ガラではきれいなお着物姿でしたし、髪型もいつもすてきですね!
室井「スタイリストさんがいるんですよ。地毛もかなり長いのですが、今日は三つ編み部分は付け毛です」

―明るく3枚目のイメージの室井さんですが、『闇打つ心臓 』では新しい室井滋を見た思いです
室井「私のイメージじゃないですよね、裸になってるわ、暗いわ(笑)。世間のイメージとは逆に、自主制作ではこういう暗い少女役が多かった。今日、初めてスクリーンで私をご覧になる方も多いと思ったので、あえてああいう舞台挨拶をしました」

 『闇打つ心臓82』の舞台挨拶では、「I'm a strange actress!」とコメディエンヌであることを強調した室井さん。会場より、「23年間全然変わらない若さの秘訣は」という問いに「お寿司を食べることです」と答えるなど、終始会場を沸かせ、コメディエンヌ振りを発揮した。

―昔の自分とこういった形で再会するのはいかがですか
室井「うーん怖いですよね(笑)」

―当時はまだ早稲田の学生さんだった・・・
室井「結局7年で中退したんですけど、その頃シネ研にいて『自主制作映画の女王』って呼ばれるほどたくさんの自主制作に出演しました。100本以上は出ましたね。その当時の仲間の多くが今、人気監督として活躍しているんですけど、あの頃はそんなこと想像もできなかった。当時、みんなプロは目指していたけど、楽しいからやっていたので」

―デビューのきっかけは
室井「私たちが出品していた自主制作映画の審査員に大森一樹監督がいらして。『この学生の子、いいじゃない』って、大森監督の『風の歌を聴け』に出演が決まった」

―『闇打つ心臓』の長崎俊一監督との出会いは
室井「早稲田のシネ研はアマチュア集団なんですが、長崎監督がいらした日芸は半プロ集団で、機材も充実しているんです。それで、シネ研で16 ミリを撮ろうということになり、何もわからないので日芸の先輩方に教えてもらって。その際に長崎監督が『今度ウチでも出てみない?』と」

―自主制作映画と大きな商用映画との違いは感じますか
室井「メジャーな大きい映画は、収益性も考慮しなくてはいけないので大衆が見てくれる要素をたくさん盛り込もうとする。だからわかりやすいお芝居になる。対して低予算の映画は、もちろん売れた方がいいし観客を意識はしますが(商用映画に比べ)制約が少ない分、利潤よりも自分たちの伝えたいことをしっかり表現できると思いますね」

 『闇打つ心臓82』も予算10万円ほどで、1週間で撮影した8ミリ作品。それが23年もの間、世界中の映画祭で上映されるとは、誰も予想しなかったという。そこが自主制作映画の魅力でもあり、醍醐味でもあるのだろう。

―ご自分で映画を撮ってみたいとは思われますか
室井「大変な思いをされている監督を大勢知っていますから、自分では全く思わないですね(笑)。ただ、今回バンクーバーへ来たことで、本当にやりたいことを明確にして自分が変わる時期に来ているのではと思いました。監督はできませんが、映画に企画で参加するなどしていきたい」

―ずいぶん著書も出されていますね
室井「20冊以上出しています。『むかつくぜ!』は100万部売れて、テレビ化や映画化の話もあったんですけど、やはり自分で書いているだけに、シナリオでも何でも気になる。私があまりに気難しいので、いつの間にかテレビ化も映画化も無くなっちゃった(笑)。でも、せっかく自分で原作を持っているんだから、何かやるべきだとは思います」

―大変な売れっ子でお忙しいのに、いつお書きになるんですか
室井「明日も帰りの飛行機の中で書かなくちゃいけないんですよ!」

 猫を6匹も飼っているという室井さん。写真も好きで、猫の写真集も出版しているほど。今後は公言した「お寿司を食べると若返る」も追求していきたいとのこと。元気がいっぱい詰まった魅力的な室井さん。今後もいろんなメディアを楽しませてくれそうだ。

(取材 文/藍智子、写真/菊池友理)



『闇打つ心臓』の舞台挨拶で。写真左より、室井滋さん、長崎俊一監督、トニー・レインズ氏

本紙のインタビューに答える室井さん。やっぱり“華”がある!


◆プロフィール◆
室井滋(本名同じ)
富山県出身。早稲田大学社会科学部中退。在学中より同大シネマ研究会に所属、自主制作映画に数多く出演する。

81年『風の歌を聴け』で劇場公開作品デビュー。88年から始まったTVドラマ『やっぱり猫が好き』で人気沸騰、94年の映画『居酒屋ゆうれい』では助演女優賞を総なめ。99年には映画『のど自慢』で主演女優賞受賞。100万部を越えるベストセラーとなったエッセー『むかつくぜ!』など、著書も多数。現在、週刊文春で『すっぴん魂』を連載中。