MAPLE 2005
2005年1月27日 5号 掲載
多くの女性の憧れ!レシピも人柄も素敵な料理家!
栗原はるみさん
発刊当初より爆発的人気が話題を呼んだ名著『ごちそうさまが、ききたくて。』はミリオンセラー、これまで出版した料理・生活に関する著書が28冊、季刊誌1誌、累計1300万部を超えたという料理家の栗原はるみさん。
超多忙スケジュールを縫い、現在念願の英会話集中レッスンのためバンクーバーに滞在中である。
完全プライベートな今回の訪加にもかかわらず、本紙のため忙しいスケジュールの合間を割いて取材に応じてくれた。
写真撮影:工藤雅夫(MASAO KUDO) |
食器や調理器具、小物もプロデュース
栗原さんが得意なのは料理ばかりではない。
エプロンなどの小物、ガーデニングや整理整頓の技など、生活スタイルすべてに気の利いたアイデアを散りばめる。
食器や調理器具も自分でデザイン。
そんな栗原さんのレシピを直接味わうことができるのが自身のプロデュースする『ゆとりの空間』である。
札幌・京都・広島・博多に4店舗(東京・原宿店は移転中)。
『栗原はるみ』ブランドの商品(食器・調理器具・エプロン)は東京を中心に全国の大手デパート22ヵ所にも展開中である。
今年で9年目を迎える人気季刊誌『すてきレシピ』では、その栗原はるみグッズの通信販売を行う。
栗原さんの料理レシピ他、小物の作り方、家事のアイデア、ガーデニングやフラワーアレンジメント、エッセーなども満載だ。
誌面のモデルも栗原さん自身である。
●食通の夫から学んだ洋食と生活スタイル
栗原さんの夫は元キャスター栗原玲児氏。
ひと回りほど年の違う玲児氏は食通で、知り合った36年前の当時から、チキンのオレンジ煮やコーンドビーフ作り、X′masにはターキーを焼いたという。
だから食や料理は玲児氏の影響が強い。
栗原
「21歳のときに知り合ったんですが、サングリア(注1)を作ってくれて、ランチョンマットを敷いた上にカトラリーが並び、すごいお料理が出てきて。私のために作ってくれたの」
――そんな演出されたら女性としては?
栗原
「捕まってしまいました(笑)」
2人が出会ったのは栗原さんの地元・下田。
玲児氏の友人が下田に別荘を持っていたため、毎週末仲間がそこへ集まっていた。
兄を介して彼らと知り合った栗原さんは、慶応ボーイを中心としたグルメでおしゃれな彼らから新しい世界を学ぶ。
栗原
「あの時代に別荘を持ち、スポーツカーに乗り、ピアノが弾けて、その上料理も上手。職業もカメラマンとかデザイナーなどで。世の中にはこんな男の人たちもいるのかと思いました(笑)。すごく楽しい時期でしたね。私はそこで食を学んだ。彼らの料理はカレーにマッシュルームで炊いたご飯を添えたり、
ボーンステーキにマッシュポテトとか、今は普通ですけどその頃は珍しくて私の人生を変えるような経験でした」
栗原さんは毎週末を玲児さんらと過ごした。
厳格な純和風の家庭で育ち、洋楽も知らず、働くことも禁じられていただけに「すべてが新鮮だった」と当時を振り返る。
そして5年後、玲児氏と結婚。
後に出版する『ごちそうさまが、ききたくて。』には玲児氏から教わったレシピが 品ほど掲載されている。
●人気料理家への道と母の思い
結婚後は2人の子供にも恵まれ、家族のためにおいしい料理と楽しい家庭を作る普通の主婦であった。
母から覚えた和食に玲児氏から学んだ洋食。
そして中国の友人から教わった中華料理。
いろいろな要素を合わせた独創的な栗原さんの料理は友人・知人の間で次第に評判を呼び、料理番組のアシスタントの声がかかる。
それを皮切りに雑誌からの仕事も来るように。
89年、掲載されたレシピをまとめた『献立が10倍になるたれの本』を出版。
以後、毎年著書を出し続け、前出の『ごちそうさまが、ききたくて。』が料理本としては異例のミリオンセラーとなってからは多忙を極める。
―― お母様も栗原さんのご活躍を喜んでいるでしょうね
栗原
「嫌みたいですよ。忙しくなればなるほど自分の娘が遠くに行ってしまうようで。嬉しくないといつも言っています」
そんな愛情深い母との共著『覚えておきたい母の味』は、故郷・下田の四季の味と栗原さんの原点を収めたすてきな一冊だ。
食を大切にする家庭に育った子供たちもまた、栗原さんが絶賛するほどの料理の腕前。
結婚して間もない26歳の長男・心平さんは、雑誌『LUCi』に連載した料理レシピをまとめ、『ひらめき2人ごはん』という新婚ならではの本を出版している。現在心平さんは『ゆとりの空間』の運営を手伝い、29歳になる長女・友さんはファッション関係で独立を目指している。
|
●簡単おいしいレシピには影の努力
栗原さんの料理や生活のアイデアは肩肘張らない「自分にもできそう!」と思わせる簡単で楽しいものがいっぱい。
基本は家族のため。
「仕事のための料理にだけはしたくない」と語る栗原さんは、毎日家族のため、スタッフのため、友人のために腕を振るう。
「作り続けていないとアイデアって出ないですから」。
主婦感覚を忘れない。そしておしゃれでセンスがいい。
そこが若い女性や主婦層に支持される理由だろう。
―― 本に掲載するためのレシピの分量を決めるのは大変な作業だと思うのですが
栗原
「それはもう死にそうになります(笑)。理科の実験みたいですよ。自分のおいしいと感じる味にいかに近づけるか。仕事で1番辛い部分です。1度失敗したら終わりですから、何度もやるんです」
―― そのたびに料理を作り直す…
栗原
「20回くらいやり直すこともあります。読者はひとりの料理家の本で3つ作ってまずかったら2度と買わない。だから味はものすごく気をつけています」
―― 普段ご自宅用に作るときはやっぱり目分量ですか
栗原
「そうです、さすがに(笑)。でもまったく同じ分量とレシピで作ってもそのひとの味になるんですよ。だから料理って楽しいのよ!」
●大好きなイギリスで料理本を出版!
イギリスが大好きでよく行くという。
「英語が話せるようになりたい!」と、1ヵ月近いこの滞在を決行した。
「いつか長期で英語漬けの生活をしてみたい」という公言を実行した形だ。
バンクーバーへは去年も訪れているが、最近はホテルには泊まらずに自炊、友人知人スタッフなどに料理を振舞うというサービス精神旺盛で気さくな栗原さんである。
栗原
「ここでも若い子が大勢遊びに来るので、いろいろ作ってますよ。サーモンがおいしいので照り焼きにしたり、ほうれん草の胡麻和えや、胡麻のお味噌汁、こんにゃくの照り煮、お好み焼き…」
―― 胡麻のお味噌汁ですか
栗原
「普通のお味噌汁に胡麻のペーストをたくさん入れるんです。すごくおいしいですよ。白胡麻の方がいいですね、黒くならないから。具やお味噌は何でも大丈夫」
その大好きなイギリスで昨年9月、初の英語での著書を出版した。
世界5ヵ国で発売された『Harumi's Japanese Cooking』は各国でも大好評を博し、料理やワイン本の評価団体であるグルマン主催(注2)のグルマン・クックブック・アワード
アジア部門にノミネートされている。
待望の北米での出版も間近だ。
●「学ぶことを忘れたくない」と留学決行
プロデュースする雑誌、著書、店舗や商品すべてを管理・把握、合間に講演や取材で世界中を飛び回る。
それなのにいつも明るく笑顔を絶やさない。
今回は休暇だというのに毎日 やメールが山のように来るという。
「気がつくとあっという間に夜中の12時。宿題がなかなかできない(笑)」と栗原さんは語るが、 カウンセラーによると「必ず予習復習をしてくる」とのこと。
顔には出さないが、相当の努力家であることは間違いない。
―― 今回よく長い休暇が取れましたね
栗原
「仕事が忙しくなってからは初めての長い休暇です。あまりにも多忙で、何か学ぶことを忘れてしまうのが人として残念に思って。仕事ばっかりで人生終わっちゃうと思い、思い切って来ました。」
―― そのプレッシャーやストレスにはどのように対処しているのですか
栗原
「周りのスタッフに支えられていますね。仕事が忙しくてもみんながいてくれて、いい仲間として私を和ませてくれる。イギリスでの出版も企画してくれた現地スタッフがグルマン賞のノミネートを泣いて喜んでくれました」
どこへ行っても友人がたくさんできる人柄と明るいキャラクター、センスのよさとあらゆる人に心を砕く懐の深さ。
自分の意見を持ち判断力・責任感もある。
華奢な身体のどこにそんなバイタリティーがあるのだろう。
取材を通して彼女が『カリスマ』と呼ばれることを改めて納得させられた思いである。
取材の直前、「主人に1本電話を入れてもいいかしら」と言って日本の玲児氏に携帯から電話を掛けた栗原さん。その語調は、きっと新婚時代から変わらぬ夫への気遣いと、素直なかわいらしさに溢れたものであった。
(取材 藍智子)
|
【プロフィール】
栗原はるみ(くりはら・はるみ)
料理研究家。静岡・下田出身。
26歳で人気キャスター栗原玲児氏と結婚。
料理センスが知人を中心に話題を呼び、主婦業の合間にテレビの料理番組アシスタント・雑誌の仕事などを開始。
89年に初の著書『献立が10倍になるたれの本』を出版。
5冊目の『ごちそうさまが、ききたくて。』がベストセラーとなる。
'96年、季刊誌『すてきレシピ』創刊。同時にレストランと暮らしのショップ『ゆとりの空間』のプロデュースも手掛け、全国各地に店舗を展開。
調理器具などのオリジナルブランド『栗原はるみ』も主婦層を中心に人気。
04年9月にイギリスで出版した『Harumi’s Japanese Cooking』が欧州のグルメ本評価団体グルマン主催の賞にノミネート中。
同書は北米でも近日出版予定。