バンクーバーで1991年から日本企業、特に中小企業の記帳や駐在員の給料計算、法人税、所得税、GST問題の相談にかかわってきた会計士の木村吉紀氏に、氏の目から見た好ましい企業の特徴を伺った。
「中小企業との経験で」と前置きして、好ましい企業の特徴を木村氏はこう語る。「売った代金の回収と、かかった費用を払う方のどちらも早い会社です。一般の人でもカードで支払いをしていると、今自分がどれだけお金を持っているのかわかりにくくなりますが、企業も同じです。即回収、即支払いであれば、たとえその時点で経営が苦しくても企業自身の姿が良く分かるため、結果として堅実な経営へとつながります」
こうした資産状況をつねに速やかに把握できることが経営では肝要なこと。なかでも「Bank Reconciliation(銀行勘定調整)」が大事だという。「銀行口座やカードのステートメントの残高と企業の帳簿上の数値に差異があれば、それを調べて原因を突き止めることです。例えば銀行口座残高が、企業の帳簿上の残高より少ない場合、小切手を切れない人が不正にサインを真似していたり、貰った現金を銀行に預けなかったりする不正が現実にあります。タイミングよく銀行勘定調整する習慣が大切です」
在庫も同じだ。「商品の在庫の整頓を進めて数えやすくなっていること、そして時間を作って実地棚卸を毎月行っていることも大事です。企業の帳簿上の残高と実際の棚卸結果に差があれば問題です。レストランであれば、高価な食材が消えていることになります。追加の仕入が必要となれば資金が要ります。そもそも在庫の数量が多いと資金繰りが苦しく、好ましくない状態と言えます」
次に挙げられたことは年齢調べ(エージング)である。
「売上げのノルマを達成してインボイスを出しても、未回収であればいけません。メーカーが商店に売っても、その商店は、陳列しても売れていないため払ってくれない。それでは儲かっているはずでも資金繰りに苦しんでしまいます。そのため時間のたったインボイスのエージングを把握し、その資料をもとにこまめに回収することが大事です。また、自社が支払わなくてはならない請求書に関しても同じく資料の作成が大切です」
避けるべきは、テークチャンス(リスクをとること)と木村氏は語る。
「長期的な契約はリスクを負うので避ける事が望ましいです。契約後に問題が発生する例では、オフィススペースのリースの更新契約の際に、借り手側が契約内容に変更を希望し、不動産の専門家を通してオーナー側に了解を得たにもかかわらず、口頭のやり取りだけで契約文書に明記しなかったがために変更が無効となり、損害を被ったという事例があります」問題の発生を未然に防ぐことと同時に、万が一の事態があったにしてもその被害を最小限に抑える体制にしておくことが経営の要点と言えよう。
取材中、一つ一つ事例を挙げながら、解説する木村さんからは豊富な経験がうかがえた。そうした経験のなかで木村氏は、北米での同僚の会計士がクライアントから質問される場面で「私はその質問には専門でないのでわかりません」あるいは「専門家に聞いてお答えします」と返答することが多いことに気づいたという。それが正しい応答といえるのだろう。
(取材 平野香利)
|