SPECIAL 2004

2004年12月 49号 掲載



「歯は健康と笑顔の窓」
JWBA(日系女性起業家協会)講演会 
講師 シャナハン・久美氏


講演をする、シャナハン・久美さん


  
   日系女性起業家協会(JWBA)主催、第4回JWBA特別講演会が11 月18 日リステル・バンクーバーホテルで開催された。「歯と健康と笑顔の窓」と題して講演を行ったのは歯科技工士として活躍するシャナハン・久美さん。歯科技工士の仕事内容から義歯の歴史まで、さまざまな角度から「歯」について紹介した。

歯科技工士の仕事

 全部床義歯(総入れ歯)、部分床義歯、矯正装置、インプラント、睡眠時無呼吸症候群治療装置などの製作や修理が歯科技工士の主な仕事である。

  近代歯科医療には欠かせない歯科治療の重要な役割を担っている。技工士によっては、目、耳、鼻を製作することもある。

歯科技工士になるには

 カナダで歯科技工士になるには、まず2年以上歯科技工士の授業を受けていること、英語圏以外の人は、TOFEL(Test of English as a Foreign Language)550点以上を取ること(この点数は現在510点まで引き下げられる傾向にある)、カナダの歯科技工士資格試験に合格することが基本となる。

歯科技工士の就職先

 歯科技工士として働ける場所は、カナダでは主に歯科診療所(歯科医院)や歯科技工所に分かれる。歯科技工所とは、免許を持った歯科技工士が一人以上必ず所属していることが最低条件で、仕事は歯科診療所や病院などから技工物の注文を受けてそれを製作し納品するという作業を行う。

カナダの歯科技工士状況

 カナダでは現在歯科技工士を海外からも多く採用している。それというのも、歯科技工士の年齢分布から、この先10 年から20 年くらいの間に技工士不足になると予測されているからである。

  海外からの歯科技工士受け容れ政策の一環として、現在この職種は、州政府推薦プログラム(Provincial Nominee Program: ある一定の職種を指定し、その職種に就いている人、もしくはその経験がある人は、カナダ連邦政府が行っている移民プログラムとは別に各州政府が率先してその人を推薦し、永住権取得をよりスムーズに行う特別プログラム)に指定されている。

 シャナハンさんが日本で講演を行う機会がある時も、「北米では優秀な人材を求めています」とアピールするという、これからの職業である。

歯についての雑学

 普段から毎日お世話になっているにもかかわらず、私たちはあまり歯のことを知らない。そこでここで歯についての雑学を紹介する。

●どの歯に最も力がかかっているのか?(咬合力)
 第二大臼歯(一番奥にある親知らずのひとつ手前に生えている歯)。この歯を技工する場合は、強い材料で作る必要がある。

●どの歯が最も強いのか?
 下顎第一大臼歯(下あごの親知らずから数えて、奥から3番目の歯)

●歯がない人の歯を製作する時、歯の大きさは何を基準に決めるのか?
 歯の大きさや向き、歯並びなどを総合的に見て美しくバランスがとれている基準とされているゴールデンプロポーションを参考にする。歯を技工する場合は、いつもこれを念頭に置く。

●歯牙の保存方法
 自分の歯をなるべく長く良い状態で保つには、なるべく歯に余計なことをしないこと。技工する場合は、削ればそれだけ弱くなるので、治療が必要な場合でも歯を削る部分は最小限に抑えることを考えて、技工を行う。また、材料もなるべく薄いものを使用するなど、歯に負担がかからないものを使用することを心がけている。

●歯と人相
 歯によって、人相はかなり変わると言われる。ハリウッド映画などでは、役によって歯を変えるというほど、歯は人相を変える。

●お歯黒の歴史

 お歯黒の最古の記録は中国の魏志倭人伝。230年代から260年代にかけて、日本で一般に卑弥呼の時代とされる時期に女王が行っていたという記録がある。その起源は日本古来から存在していたというもの、インドから大陸を渡り朝鮮を経て日本に伝わったという説がある。

  その成分は、「かねみず」と「ふしこ」とがあり、どちらも虫歯予防に効果があったとされている。お歯黒の習慣は大正末期にはほとんど見られなくなり、1947(昭和 24)年を最後に製造中止となった。

●義歯の歴史
 世界で最も古い入れ歯の存在は日本で、1538年尼僧仏姫が最初とされる。仏像彫刻師が製造していたとされている。材料は主にツゲや鯨のヒゲなど。アメリカで義歯が使われる200年も前の話しである。人口歯が作られたのは、1774年のフランスが最初、それがアメリカに伝わる。日本では1887年宿沢いずみさんよるものが最初である。

インプラント前

インプラント後 〈Dr. R. Yip 製作〉

インプラント技術の紹介

 インプラントとは、虫歯や歯周病、歯が折れた場合など、歯根(歯肉の下に隠れている部分)がなくなった場合、歯が抜けたところに人口の歯を根本から作って入れる治療法のことを指す。方法は、人工歯根を歯槽骨に埋め込み、歯を支える支台部を連結し新しい歯冠(上にでている部分)を装着する。材料には骨との融合性がいいチタンがよく使われる。

  インプラントの特長は、両側の歯を削らなくても治療が可能なこと。現在は専門的な知識として専門士に依頼されているが、将来的には主流な治療方法になると予想され、保険でもカバーできるようになるのではとの期待がある。

シャナハン・久美さんからのアドバイス

 シャナハンさんは、「歯科技工士として満足のいく製品を製造できたとき、患者さんが喜んでくれるのが一番嬉しいですね」と話す。「こんなことを言って技工士の仕事がなくなると困るんですが」と笑って前置きして、「歯に一番良いことは、先ほども言いましたように、なるべく歯科医にかからず歯を触らないことです。5分から10 分をかけるほどしっかり歯を磨いて、フロスして、予防歯科を実行してください」と自分の歯を保つことを心がけるようアドバイスした。

Q&A
 講演後設けられた質問コーナーで出された質問と回答をここでいくつか紹介。

Q…部分入れ歯があわないのですが、歯が2本ないところにインプラントを入れられますか。

A…それは、いい考えだと思います。インプラントとはそういう状況で最も使われるべき方法です。特に下顎部は骨が硬く強いので、インプラントが安定して推薦できます。


Q…インプラントをするのに年齢制限はありますか。
A…特にありません。 70歳、80 歳になっても可能です。

Q…ゴールデンプロポーションに近い歯にするには、どうしたらいいのでしょうか。矯正したり、ベニアをするなどの方法がいいのでしょうか。
A…歯はなるべく触らない方がいいというのが原則です。その理由によりますが、見た目だけでという理由であれば(歯を美しくすることを)薦めません。

Q…歯科技工士学校に入るのは狭き門ですか。

A…カナダでは学校数が少ないのですが、あまり知られていないこともあってそれほど狭き門というわけではありません。日本には 校ぐらいあります。ちなみに、これはとてもよい仕事だと思います。

Q…いい歯科医の探し方を教えてください。

A…歯医者の経験の多い友達や歯科技工士に聞くのがいいと思います。特に歯科技工士は、さまざまな歯科医と仕事をしているので、各歯科医が何を重要視しているかなどを見る機会も多くあります。自分の立場(歯科技工士から見て)この先生がいいのではというアドバイスができることは技工士に聞く利点だと思います。

プロフィール
本名…シャナハン・伊藤布久美(いとうふくみ)。シャントー・デンタル・セラミックス社社長。長野県出身。東京医科歯科大学歯学部付属・歯科技工士学校卒業。その後は同校の講師として勤務。1969年ノバ・スコシア州ハリファックス市で歯科技工士の仕事を始める。トロントでの勤務を経てバンクーバーへ。歯科技工所に勤務、1976年独立。シャントー・デンタル・セラミックス社を設立。モットーは、「自分を支えてくれている周りの人にいつも感謝の気持ちを忘れないこと」
    (取材 三島直美)

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