SPECIAL 2004
2004年11月 46号 掲載
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カナダでは年間1億匹もの毛皮動物が狩猟罠による悲惨な死を迎えているという。狩猟罠の中でも特に残虐性の強いものがトラバサミ(レッグ・ホールド・トラップ)だが、欧州連合(EU)では1995年に全廃され、さらにトラバサミ罠によって捕獲した動物の毛皮の輸入も禁止となっている。
しかし残念ながら未だカナダ国内と北米全土では容認されたままである。非営利団体『ファー・ベアラー・ディフェンダーズ』(以下FBD)は、毛皮動物らを非情な罠から守るため世界規模で活動している。
トレイルで罠にかかり
協会運営へと転身
FBDの前身は家畜の生育環境の改善を目的に‘44 年に立ち上げられた私設団体で、その後毛皮動物に対する保護運動も開始。
そして約 30年前に現代表のバンティ・クレメンツさんとその夫で理事のジョージさんにより、これらの残虐な罠の禁止・全廃を求め、毛皮動物保護協会として完全に再建された。
夫妻がこの運動を始めたきっかけは、とあるハイキングコースで夫のジョージさんがトラバサミに足を踏み入れるという事故に遭遇したことだ。
幸いジョージさんは登山用の分厚いブーツをはいていたおかげで大事には至らなかったものの、ものすごい衝撃と恐怖を味わい、毛皮動物はもちろん、対象外の動物や人間にも多大な被害をもたらすこれらの狩猟罠を放置していてはいけないと思ったそうだ。
罠が動物に与える苦痛と被害
EUなど全世界88 ヵ国以上で禁止されているトラバサミ、胴体部分を締め付けるコニベア・トラップ、スネア・トラップ(くくり罠)、この3種が現在主流の狩猟罠となっており、どれも被害動物に容赦ない苦痛を与える。それらは獣道や水辺・川底などに仕掛けられ、時には動物の尿や生殖腺分泌物などを撒いて動物をおびき寄せたりもする。
ビーバーなどの水際に生息する動物が水中で罠にかかれば当然溺れ死ぬ。
また、トラバサミやコニベアは、人間でも全体重をかけなければ開けないほど強力なバネによって押さえられ、挟まれた手足や胴体を抜くことはできない。
各国で禁止になったトラバサミとは
トラバサミは、開いた罠の表面に手足が触れた瞬間にバネがはじけ、顎状になった金属に挟まれる仕組み。その力は強く、骨までも砕く。それでもトラバサミに捕らえられた動物は逃げ出そうともがき、金属罠に噛み付いた歯は折れ、手足は裂けたりとますます深傷を負うことになる。
失血や激痛、ショックなどで体力を消耗し、極度の苦悶を強いられながら徐々に死に至るわけだが、手負いのため、死を迎える以前に他の捕食動物の餌食になることも多い。
そうなれば毛皮としての価値も無くなり、まったくの無駄死にとなる。過半数の州で見回りの回数が制定されていないことにより、猟師は1日から長いときで5日ほど罠を放置することも一因だ。冬季はその間に凍死することもある。
しかし、万一猟師に生きたまま発見されても、心臓を踏み潰されるか頭部を殴打されての死が待っているのだが。
自分の手足を噛み千切る動物たち
トラバサミに捕らわれた動物の一部は狂乱を来たし、自身の手足を噛み千切ってでも罠から抜けようとする。しかし脱出に成功しても瀕死の重傷を負っているため、到底野生で生きていけるような状態ではない。猟師らはこのように手足を切断して逃げることを「リング・オフ(wring-off)」と呼ぶそうだ。「毛皮を失った」という意味だという。
FBDが 96年に委託した世論調査によると、カナダ人の8割がトラバサミに反対している事実がある。にもかかわらず未だ法は改正されていない。この罠の対象動物は、ボブキャット(ヤマネコ)、リンクス(オオヤマネコ)、オオカミ、コヨーテ、キツネ、ビーバー、マスクラット(ジャコウネズミ)、ミンク、カワウソなどが該当する。
他の残酷な罠
コニベア・トラップは、短時間で捕獲動物を死に至らすという触れ込みで開発されたものだが、実際にはその逆で、猟師が見回りに来るまでほとんどの動物が苦しみと共に生きている。胴体を捕らえる比較的大きな罠だが、うたい文句通りに「死ぬ」には、ちょうどよいタイミングとサイズ、スピードで罠にかからなくてはいけないという、真にお粗末なもの。実際には他の罠に比べ、最も長くゆっくり苦しむことが確認されている。
スネア・トラップはワイヤーで動物の首や手足、胴体などを引っ掛けるもの。徐々に締め上げて死に至らしめる。他にも世間に対して聞こえをよくした『パッド付きトラバサミ』なども存在する。金属の噛み合わせ部分にパッドを取り付けたものだが、その威力は何も軽減されていない。
対象動物以外にも危険が及ぶ罠
罠は捕獲動物を選ばない。モモンガ、ヤマアラシなどの小動物や、鳥類(フクロウ、カケスなど)、果ては絶滅に瀕した種まで捕らえ重症を負わせる。猟師側も目的の動物でなければ捨てるか、生きていれば放すのだが、治療をほどこされるはずもなく、やはり死が待っている。
FBDの理事が事故に遭遇したように、我々の極身近な場所でも罠は仕掛けられている。以前、サレーの森林公園でも見つかった例があるそうだ。
最愛のペットをトラバサミで失った一家
ジェイクは‘97 年、SPCAからハートフォード家にもらわれてきた。以前の飼い主から長いこと地下室に閉じ込められ、飼養を放棄され、虐待を受けてきたジェイクは、ハートフォード家に来てやっと平和で幸せな日々を送ることができるようになったのだ。
02 年12月29 日の日曜日の朝、ハートフォード家の母親ドナさんはジェイクを連れ、ピット・リバー近辺に散歩へ行った。そして悲劇は起こった。トラバサミにジェイクの頭が挟まれてしまったのだ。ドナさんが試みるも罠は外れず、悲痛なジェイクの声と想像を絶する痛みはそのままなすすべもなく、死を迎えた。まだ6歳だった。
事件以後、同協会の積極的な支持者として活躍するドナさんは、「私が受けた痛みを誰にも味わって欲しくない。断末魔の中で私へ向けられた、ジェイクの懇願するような目を見ているしかなかったこの痛みを。
そして信じられないのは、この痛ましい事件は子供たちが遊ぶ場所のごく近くで起こったことです」と語る。残念なことにこれは特殊な例ではない。「犬猫が罠による被害を受けることは日常的に起こっています」とFBDディレクターのジェニファー・アレンさんはいう。
RCMP制帽のために捕獲されるジャコウネズミ
RCMP連邦警察の冬の制帽はジャコウネズミの毛皮でできている。ひとつの帽子を作るのに、2〜3匹のジャコウネズミが必要だという。
そのため、年間4500匹ものジャコウネズミが専用のトラバサミによって、水際もしくは水中で捕獲されている。FBDでは防寒として必要とはいえないこの帽子に反対する姿勢を構え、当局本部へ訴え続けている。ウェブではポスターの配布も行っている。
毛皮市場の実情
カナダを含む北米では‘80 年に32 億匹もの毛皮動物が狩猟罠によって捕獲されたが、現在では5〜6億匹にまで減少している。これは一般に対する毛皮への意識の透過の裏付けであろうが、今だ何億もの動物がファッションのために殺戮されていることも見逃せない。
毛皮ファームの劣悪な飼育環境や、経費削減のため残忍な屠殺方法で処分する事実、また東南アジアでは現在も犬猫の毛皮に「○○フォックス」「ヤマネコ」といったタグを付けて先進国へ輸出していることなど、絢爛豪華な毛皮ファッションの裏には犠牲動物と安い賃金でこれらの仕事に従事している人々が隠れている。
ひとりひとりができること
一にも二にもに毛皮を持たないこと。需要がなければ供給も衰退する。一部地域を除いてほんとうに毛皮による防寒が必要な国はほとんどないはずだ。しかし、値段の安さから本物・偽者の区別がつきにくいこともある。
前出のジェニファーさんはフェイクファーも毛皮動物をイメージするので持たないという。そして意識を変えること。毛皮は美しいが、動物の死体であるということ各人が念頭に置いていれば、毛皮もいつか過去の産物になるだろう。
すべて寄付金だけで運営されている同協会では随時会員と寄付を募っている。年会費は10 ドル、永久会員費は100ドル。詳細は左記に問合せまたはウェブにて。
(取材 藍智子)
≪インフォメーション≫
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電話:604-435-1850
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