SPECIAL 2004
2004年9月 39号 掲載
国連親善大使の田中章義氏 |
去る9月12 日、市内リステル・バンクーバー・ホテルで、スカイランド・エスケープス・トラベル協賛、バンクーバー新報、リステルバンクーバー・ホテル後援により、国連親善大使の田中章義氏特別講演会、『地球のこれからについて』が催された。
当日は定員の100名を超える130名程の参加者が会場につめかけ、3時間に及ぶ田中氏の話に熱心に聞き入っていた。
親の顔を知らない子供たち
司会者から紹介されて登場した田中氏は満面に笑みを浮かべ深々とお辞儀をした後、国連親善大使として世界を旅して実感したことを話しはじめた。
「世界には親の顔を知らない子供たちがたくさんいます」例えば、マンホールの中が一番暖かいから友人とともに地下生活をしている子供たちがいる。
両親を殺されて、命からがら兄と山越えしてインドのガラムサラという村に逃げてきた6歳の男の子は入院した兄と離れ離れになり、「どうぞ自分を一人ぼっちにしないでください」とたどたどしい英語で田中氏に訴えた。
また、生まれてから16 年間の人生で、たった一度会った父親からもらったお守りを田中氏に託したカンマ君。
田中氏はこう尋ねた。「そんなに大切なお守りならカンマ君が持っていた方がいいんじゃないの?」彼はこう答えたという。
「僕自身がこのお守りを持って親の顔を知らない子達がいるということを世界中に伝えてあるきたいけど、僕はパスポートを持つことができない。だから、あなたにお願いします」
田中氏はカンマ君の言葉に強くショックをうけたという。日本に育って当然のようにパスポートを申請し、交付されてきた自分にはパスポートを作ることができない状況を想像すらしたことがなかったからだ。
『地球では1秒間にサッカー場一面分の緑が消えている』
田中氏の著著、『地球では1秒間にサッカー場一面分の緑が消えている』は参考資料としてコピーされ、会場の参加者に配られていた。同書の難民の項にはこのような記述がある。「戦争や旱魃で故郷を追われた人々は、世界中で訳5000万人いる。
その半分が、こどもたちだ。
(国連難民高等弁務官事務所『難民』2001年第3号)」また、同書の「はじめに」にあるように、「日本のスーパーとコンビニエンスストアで売れ残りとして捨てられている食料(年間1131万トン)は、世界の食料援助総量の1000トンを上まわる。
(農林水産省の平成 年度調査報告と、国連世界食料計画資料)」子供の餓死は一日に1万7000人 に及ぶという。一日 セント(約20 円)でこども一人に給食1日分を提供できるのだそうだ。田中氏はこう続けた。
「今日、この会場の皆さんはもっと大きなまなざしに思いを馳せることができる人だと思います」これらの具体的な数値を聞き、多くの参加者は考え深か気な表情を見せた。
『天使の願い』
ここで田中氏は沖縄に住む 13歳の少女について話を始めた。その少女は幼い頃から動物、植物、風、川などから話し掛けられてきたという。そんな体験を8歳から詩と絵で綴ってきた彼女の作品集が有志の手によって出版された。
著者名も出版社名も入っていない日英両語で表記された絵本。「私は彼女からこの詩集を託されてきました。本当に心の暖かい方に届いたら、他の動植物の気持ちもわかってくれる。
そういう人に届けて欲しい」と田中氏。彼は詩集からの詩と詩集出版後に書かれた詩を幾編か朗読した。この紙面でも一遍紹介してみたい。
地球から
あぁ 私の身体がどんどん
汚れていく
助けて 助けて
もうたえられない
人間をキライになりそうです
お願いだから
これ以上私の中ですきかってするのをやめてください
『心世紀』
第二部は田中氏自ら客席に赴き、参加者に質問をした。
「先ほど朗読した詩にどう感じましたか?」客席の女性は「とても良くて涙が出ました」と感極まった様子で応えた。このやりとりから田中氏は多くの参加者が興味をもっている精神世界についても触れていこうと決意し、著書、『心世紀』を書くに至ったいきさつを話始めた。
「数年前から社会のためになることをしていきたと思うようになってきました」そして同じような志を持つ人々とのふれあいを通して沖縄の島巡りをする機会を得たという。「この時、宮古島の方から手渡された一冊の本に心惹かれ、
冊買って帰京しました」。帰京してからこの日子八千代さんの書いた本に登場する主人公に出会う機会が訪れた。
この沖縄に住む男性、S氏は夢の中で神からのお告げを受け、校内暴力が大きな問題となった1985年から絵本と花の種を匿名で沖縄中の小学校に配り歩き始めた。徒歩で野宿をしながらの旅が沖縄から九州に達したとき、こんな夢を見た。弘法大師が「あなたのしてきたことはずっとみており、貴方にお願いがある。
これからお祈りの旅をしてくれないか?」S氏が日本中を回り終えた時、「今度は世界中をまわってくれ」と告げられたという。
田中氏はS氏の有志に賛同し、2000年にガラパゴス諸島に同行することになる。驚いたことにS氏が歩くとイグアナはお辞儀をし、海で泳ぐと魚や海亀が集まってきたという。
また、田中氏がチベットを訪れ弥勒菩薩に「少しでも世界がよい状況になり、一人でも多くの人が本来の役割を果たせるよう、また、動植物も幸せになりますように」と祈りを捧げると、帰国後にS氏から電話がかかってきて「あんたチベットで弥勒菩薩にこんなことを祈ったでしょう。夢でみさせられたさ」と田中氏の祈りをお見通しだった。
そんなS氏が予言した「あんたの人生、これから変わっていくさ」という言葉の一週間後に国連より親善大使任命のファックスが届いたという。
そんな不思議な出合いや出来事が『心世紀』を執筆するきっかけとなり、まるでナレーションを読んでもらっていて、自分が最初の読者(聞き手)になったように暖かい光の中で書かせてもらった印象があるという。
今までも単行本の印税の %を国連に寄付してきた田中氏だが、「この本を執筆したのは自分だけでない感じで、印税は全額チャリティーしています」と告げた。
バンクーバーは地球のリクライニングチェアー
バンクーバーに駆けつけ 時間滞在する間もなく帰国するに至った田中氏。「緑も水もあって、ここは地球のオアシス。とてもいいところなので世界中で苦しんでいる子供たちをみんな連れてきてあげたい気持ちです。
バンクーバーは地球のリクライニングチェアー。こういう街に住める人は世界に向けて何かしていける人たちだと思います。次回はもっとゆっくり訪れたいですね」とバンクーバーの好印象をこう表現した。世界を回りながらこう感じたという。「自分一人がどこかで一生懸命思ったり、祈ったりしたら叶ったりする。
いつも誰かが見守っている中で生きている。目では見えないところで見ていて下さる方の愛情とまなざしがある」そして最後に「この星に暮らさせてもらってありがたい。でも、地球の傷である砂漠が進んでいる国は多いのが現状です。
地球環境のために活動していく人が増えますように」と言葉を結んだ。
日本から海を渡ってやってきた『天使の願い』の詩集を田中氏から贈られた聴衆は、募金箱に立ち寄り、暖かい表情で帰路についた。
(取材 北風 かんな)
プロフィール:田中 章義(たなか あきよし)
1970年4月19日生まれ。静岡市出身。東京都立日比谷高校出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。歌人(角川短歌賞受賞)、作詞家、著者(『心世紀』など多数の著書あり)、国連「WAFUNIF」親善大使。平成13年2月23日、国連本部の関連組織である「WAFUNIF」のチャリティー・プロジェクトの国連親善大使の8名の内、唯一のアジア代表者として任命される。「WAFUNIF」は、国連でインターンや研修生を務めた人々による組織であり、発展途上国支援を中心に活動している機関。このプロジェクトでは、世界各国から音楽に携わる人物を中心に親善大使を構成し、音楽を通した環境改善・平和へのプロモーション活動を計画している。国連環境計画、地球環境平和財団、WAFUNIF等の組織連携により進めている「地球の森」プロジェクトに、世界の親善大使メンバーを呼びかけ、共同発起人として地球規模の展開を検討中。
田中章義公式ホームページ
http://www.akiyoshi-tanaka.com/http://www.akiyoshi-tanaka.com/