SPECIAL 2004

2004年9月 38号 掲載


テロ対策で厳しくなった米国入国
短期観光旅行にも指紋、顔写真
ビザなし入国には「機械読み取り式」パスポート

  二〇〇一年九月十一日の同時多発テロ事件を機に、米国はテロリストの入国を防ぐ厳重な入国審査制度US-VISITを定め、段階的ながら着実にその導入を実現しています。その一環として九月末から日本人を含む短期旅行者にも入国の際、指紋採取、顔写真の撮影が義務付けられます。ついで十月二十六日からは、「機械読み取り式」パスポートを持っていないと、ビザなし入国ができなくなります。

■九月三十日から短期旅行者にも指紋採取と顔写真撮影

 米国はビザを持つ旅行者に対し、今年一月から空港、指定の海港で入国審査の際に指紋採取と顔写真撮影を義務付けています。

  七月からは各国の米国大使館、領事館でビザ申請の際に面接が課せられ、その場で指紋採取、顔写真撮影をし、入国審査の際の情報と照らし合わせ、申請者と入国者のすりかわりを防ぐシステムができあがりました。日本人も学生や駐在員など長期滞在のビザを取得して入国する人は、すでにこの適用を受けています。

 九月三十日からは、ビザなしで入国する人にも入国時の指紋、顔写真の義務が拡大し、日英独仏などビザ免除を受けている二十七ヵ国からの短期旅行者すべてに適用されます。 ビザなしで米国に滞在できるのは、これまでどおり九十日以内です。

*米国経由で日本またはそのほかの国に飛ぶ場合も指紋採取、顔写真撮影をします。

*最も旅行者の多い五十の陸路国境に二〇〇四年十二月三十一日までに、そして全陸路国境に二〇〇五年十二月三十一日までに、指紋、顔写真の機械が設置される予定です。ピースアーチは今年末までの期限に含まれていますが、実際にいつ開始されるかは、在バンクーバーの米総領事館によるとまだ確定していません。

*指紋、顔写真の情報が照合されるデータベースにあるのは、テロリスト、重犯罪者、過去に米国から強制追放された人のリスト。旅行者の情報のプライバシーは米国のプライバシー法にのっとり厳重に管理され、必要とされる時に権限のある職員および一部の法施行機関のみが利用できるとしています。

指紋採取、顔写真、撮影手順

 入国審査官のカウンターに進み、従来どおりパスポートそのほかの渡航書類を提出します。カウンターに小型の指紋スキャナーがあるので、審査官の指示に従い、スキャナーの赤い四角の上にまず左、ついで右の順に人差し指を押し付け、指紋を採ります。デジタル処理なのでインクで指が汚れるようなことはありません。スキャンにかかる時間は長くて五秒間。次にそこに立った状態のまま顔写真をデジタルカメラで撮影します。

指紋摂取、顔写真撮影とも、十四歳未満、八十歳以上の旅行者には免除されます。

 在バンクーバーの米国総領事館によると、指紋、顔写真の導入以前に比べ、入国審査にかかる時間は米国全体の統計で一人平均十秒増えたということです。

バンクーバー国際空港にある米国入国審査でも一月からビザ保有者に対し、このシステムが導入されていますが、これまでのところ混乱はなく、入国審査官もシステムに慣れているため九月三十日以降、ビザなし旅行者に適用が拡大されても懸念はないとしています。

米国を出国する際に再度、指紋、顔写真

 出国システムについては今年いっぱい実験期間ということで、シアトル、サンフランシスコなど指定された空港に限り、次のいずれかの方法がとられます。

@空港の金属探知機を通過したエリアに、ATMのようなキオスクがあります。画面に出る指示に従い、パスポートの写真のページを開いて挿入、指紋スキャナーに左、右の順で人差し指を乗せ指紋情報を入力、写真を撮ります。出国確認として、紙のレシートが出てくるのでそれを持ってゲートに進みます。

  レシートがゲートで必要なことがあるので、なくさず保管してください。キオスクでは係員が配置され質問に答えます。

A搭乗ゲートで係員がハンドスキャナーで指紋摂取します。

Bキオスクと搭乗ゲートで二重にチェックを受けます

 出国記録が正確に記録されるシステムができるため、許可された滞在期間を超えて不法滞在すると、次回入国の際、以前よりチェックが厳しくなり、入国に支障が出る可能性が高くなるので、滞在期間内に出国する注意が必要ということです。

■十月二十六日以降、米国へビザなしで入国するには「機械読み取り式」のパスポートが必要


 日本国内で一九九二年以降に発行されたパスポートはすべて「機械読み取り式」になっています。バンクーバー総領事館発給のパスポートが機械読み取り式になったのは、二〇〇〇年三月です。

チェックのしかた

 パスポートの写真のページの一番下に「THIS JAPANESE PASSPORT IS NOT MACHINE READABLE」と書かれてあったら、「機械読み取り式」でありません。十月二十六日以降、米国へビザなしで入国したい場合は、「機械読み取り式」への切り替えが必要です。

機械読み取り式パスポートとは?

 パスポートの写真のあるページの一番下に二行で数字、アルファベット、多数の>マークが並んでいます。この部分を機械にかけると、入国審査官のコンピューターに、パスポート保持者の氏名、国籍、誕生日といった情報が自動的に入力されます。パスポートを見ながら、人的にタイプ入力するのに比べ、より迅速に、エラーも少なく処理できます。(国際民間航空連盟ウェブサイト資料による)
パスポートの切り替え申請方法
 バンクーバーの総領事館で申請から一週間で「機械読み取り式」の発給を受けられます。五年用旅券の切替手数料は120.48カナダドル。

必要書類

 申請書一通(総領事館窓口にあります)、六ヵ月以内に写した4・5X3・5 の写真二枚、今持っている「機械読み取り式」でないパスポート、(戸籍謄(抄)本が免除されるのは、有効期限内の切り替えを前提とし、氏名、身分(婚姻・離婚・養子縁組等)及び本基地に変更がない場合)カナダにおける滞在資格を示すカナダ政府発行の書類(永住者カード、ビザなど)

*カナダにある日本の在外公館のうち、「機械読み取り式」パスポートを作成する機械を備えているのは、在留邦人の多いバンクーバーとトロントに限られています。バンクーバー総領事館の場合、申請から一週間で新しいパスポートが取得できますが、機械のない公館では、申請書を東京の外務省に送り、返送を待つため、時間がかかります。

  パスポート申請は基本的に自分の住む管轄の在外公館で行うことになっていますが、急いでいる場合は、管轄以外に住む人でも、予約をとって本人がバンクーバー総領事館で申請を行うことが可能です。

*管轄地域内でも遠隔地(バンクーバー島、オカナガン地方など)に住む人は、予約をとれば、即日またはバンクーバーでの滞在日数に応じた日数での発行が可能です。ただしグレーターバンクーバーに住む人は、よほどの人道上の理由がない限り、商用でも認められないということです。

米国ビザ申請

 十月二十六日以降も、ビザを取得すれば、「機械読み取り式」でないパスポートで米国に入国できます。在バンクーバーの米国総領事館によると、ビザ申請費用は百米ドル。

  面接の予約が必要で、米国への出入りを繰り替えすことができるビザの取得も可能ですが、その回数、期間は面接の結果によります。米総領事館では、十月二十六日以降、ビザ申請が増えることを予想しています。十月二十六日以降、ビザが必要になることがわかっている人は、九月中に面接の予約をとれば問題はないということです。

カナダは引き続き免除


 カナダ人は「ビザ免除国」とは別の法律によってビザが免除され、パスポートがなくても出生証明書などカナダ国籍を証明する書類で米国への入国が可能です。現段階では指紋、顔写真撮影は免除され、カナダのパスポートの場合、「機械読み取り式」でなくともビザはいりません。

 米国はさらに二〇〇五年十月までに指紋、顔、虹彩(瞳の表面にある模様)のような個人固有のバイオメトリクス(生体)情報をパスポートに載せることを求めており、日本、欧州もそれに対応する動きです。

  日本の外務省では国際標準の決定を待ちながら、二〇〇六年三月めどに顔情報を記録したICチップを埋め込んだパスポートを導入する計画をたてています。旅行の際にあわてないためにも、急速に変わりつつある渡航関係のシステムについて、随時、注意を払っていくことが求められます。
     (取材 小原敦子)