SPECIAL 2004

2004年7月 30号 掲載


企友会スペシャル講演会「トップに聞く」
テーマ: 「他企業にも通用する最強の自動車販売戦略」
スピーカー: リッチモンド日産社会長 山下俊忠氏

 

講演中の山下氏

   50名を超える聴衆に感銘を与え、講演後には企友会からの花束贈呈で見送られたリッチモンド日産社会長、山下俊忠氏。

「自力運とは自分の力で築き呼び込む運、他力運とは自分が及ばない領域からの運。運の良し悪しは自分が裁くもの。

  運は自分が呼び込み築き、そして動かすものである」。

 1995年の着任当時、厳しい状況であったリッチモンド日産を勢い付け、販売台数をカナダ全国ニッサン店の上位に定着、2003年度CS(顧客満足度)カナダ全国第二位を獲得した。講演では42年間の自動車販売を通して、自身がいかに戦ってきたか、どのような考え方やり方で業績を伸ばしてきたかなどを語った。

 同スペシャル講演「トップに聞く」は通年、ビジネスに関する有益な情報の提供・交換を目的とするセミナーや、会員同士の親睦を深めるための食事会など、さまざまなイベントを活発に開催している企友会が主催。

* 自動車販売一筋 年の成功例と失敗例

企業訪問(開拓)の戦略


 人生がドラマであるように商談もまたドラマである。営業の際はイメージトレーニングで前向きな状況を設定、訪問時間も考慮し、自分がどのような立場にあるかを見極め、相手から安心と信頼を得ることを心がける。

  その上で販売戦略の計画をし、また訪問の際は、お辞儀ひとつから挨拶に至る礼儀正しさが、セールスの言葉よりも高く評価され、結果仕事に繋がるということもある。訪問軒数では毎日1軒余分に回ることにより、1年換算で1ヵ月分余分に働くことを目指し、企業訪問では相互の利益を共有する提案を構築する。

  例えば見積もりにしても、何かプラスアルファを加え、自社の製品を使うことにより相手の仕事がどれだけ楽になり、相手がどれだけの利益を得られるかということまでを考慮する。

セールスの成功例と失敗例

 成功例としては殖産住宅、ゼネラルフーズ、小田急百貨店などがある。

  例えば殖産住宅では総務課あてに自動車管理の提案書を作成。その結果すべての自動車管理リストを任されることに。また2年がかりで仕事を得たゼネラルフーズだが、きっかけとしては「小さめのバン100台分」の見積もり注文に、注文通りではなくもう一つ大きなセドリックバン 台分の見積書を、その会社の運営、車の使い方を検討したうえ、すべて合理化した説明文書を付け提出。2ヵ月後、 台分の発注書を確保した。

 失敗例としては引き継ぎの難しさがある。営業課長になる際、殖産住宅の仕事に後輩をつけた。「仕事は前任者と同じことをしてはいけない」と言われるように、前任者を越す能力がない限り、引き継いだなら違う新しいシステムでやらないとそれは失敗に繋がりかねない。そこには必ず比較が付きまとうからだ。 

 またクレーム処理の失敗例として、クレームが営業部門ではなくサービス部門にいったことによる対応の遅れがあり、それが大きな失敗に繋がったことがある。

 一方1984年、青梅の営業所長に昇格した際のオープニングは大成功であった。人集めとして、大塚製薬に当時発売直前であったポカリスエットを広告に載せるからと協賛を求める。

  大塚製薬参加によりオープニング当日大量のポカリスエットが提供される。またパリス吉祥寺というブランド品を扱う会社にもイベント参加を依頼。それに当時ではまだ珍しかった優待旅行香港行きを懸賞でプラス。結果オープニングは人で溢れんばかりとなった。

 しかし客の倒産をきっかけに回収力、差し押さえなどやり方ミスで大きな失敗もあり、その際は減給3ヵ月、担当者は次長から課長への降格など厳しい罰を受けた経験もある。

企業の差別化戦略

 同じ商品を同じ価格で販売しても顧客は離れない方法など、同業者との差別化を意識することが大切である。例えばリッチモンド日産ではサービスプラスクラブというものを設けている。188ドルでオイル交換、洗車サービスが一生フリー。客の定着率、離脱率を考えた採算の合うサービスである。

* リッチモンド日産がトップディーラーになった経緯

 山下氏はリッチモンド日産社3代目社長を8年間務めた。日産では1991年にインフィニティという営業所を設けたが、 年の山下氏着任時、インフィニティ経営不振のため、この会社を建て直すか閉めるかの検討を頼まれる。そこで建て直しを決定した山下氏。会社の洗いなおしを手掛けた。

 まずは東京工業大学教授、川喜多二氏によって考案された発想法であるKJ法(所謂ブレインストーミング)を活用。問題解決法の案として葉書大の紙に何か書き、類似したものを集めてタイトルをつけ絞り込み、問題が何なのかを調査する。

  無駄がないか、営業比率と事務部門比率があっているか、生産性の低い人間はいるか、体制はどうかなど。結果、「人」に問題があることを発見。トップのマネージャーを辞めさせ、次は下から昇格させた。

 日常では事業計画の徹底と各部門の目標を管理。9年右上がりの業績が語るように、売り上げは前年を越えなければならない。そのためには月の中間までに業績をあげ、毎月その中間報告をすること。

また苦情は2人以上たらい回しせず、苦情を苦情と考えない前向きな姿勢で仕事をしていく。失敗は成功の通過点で、結果にいたる過程で失敗と分かることは利点なのである。

 我々の社会は競争社会であり、競争相手がある以上、勝つ事が仕事である。個人のベストはあくまでもその個人が評価したベストであり、他人が評価したものではない。「ベストを尽くした」と言うことは、自分の限界を決定することである。それは必ずしも勝利に繋がることではない。
 
 締め括りとして、これからもリッチモンド日産は伸び続けるだろうと語った山下氏。現在は会長として見守る中、目標はCS(顧客満足度)カナダ全国一位の獲得である。
   (取材 産屋敷公美)

山下俊忠氏プロフィール
1939年 東京都生まれ
1962年 法政大学 経済学部卒 (庭球部)
1962年 東京日産自動車販売(株)入社       セールス経験6年の後、営業係長、課長を歴任
1980年 本社 営業企画部 促進課長
1984年 都内各所、営業所長、支店長を歴任
1992年 営業部長を歴任
1993年 取締役営業部長を歴任
1995年 リッチモンド日産社 社長
2004年 リッチモンド日産社 会長 現在に至る