SPECIAL 2004
2004年7月 28号 掲載
話題の新刊著書を手にする大槻教授 |
先月「ゴルフ上達の科学」という本が出版されましたが、とてもわかりやすく、読みやすいですね。対象者はビギナーやシニアでしょうか。
ゴルファーというのは一つでもスコアをのばしたいと必死ですよね。まるでワラをもつかむ気持ちで。その際たるものがクラブの買いあさりです。各メーカーがこぞって飛距離をうたうと、新しいクラブを買えば自分だって1ヤード(0.9144m)くらい飛距離が伸びるんじゃないか。
ワンスコアあげるのに、 10万も20万ものクラブを買うのが日本のゴルファーです。それで、この本は800円なんだけども、3つぐらいはスコアをあげられるんじゃないかな。
プロにだって参考にしてもらえる。例えば、パットは水平に当てるんじゃなくて、ボールの上半分の、中心から半径の5分の2のあたり、つまり、ボールのやや上あたりにパターが当たるようにするわけ。
実は、ゴルフではあまり常識になっていませんけど、ビリヤードの世界では、この5分の2セオリーは常識なんですよね。力学的にきちんと説明できるんです。最近はレッスン場のアドバイザーに物理学者も活躍しているようですけど、やっぱり理論的にわかって納得すると、スコアの伸びも違うからでしょうね。
61歳でゴルフを始められて、最初の年1999年のスコアが年平均 99・3、昨年は88 ・4とかなりの上達ぶりですが、本を読みますと、あまり熱心にゴルフに励みすぎて、知らないうちにあばら骨を折っていたり、尿路結石になって救急車を呼んだり、命がけですね。今は健康に心がけるようなことは、何かしていらっしゃいますか。
3年ほど前、朝がたに今までにないほどの痛みを左わき腹に感じて目を覚ましたんですね。サイパンに1ヵ月ゴルフをするために泊まっていたんですけど、連日の猛暑の中プレイしていて、体中水分不足になって尿路結石ができたらしいんです。
私は痛風持ちでもあるんですけど、特に夏場、汗をかいて筋肉疲労しますと、尿酸値が上がり、血液も酸性になります。
そして、そのまま放っておくと尿酸が結晶化して関節にたまって炎症を起こすわけです。そういう状態にならないように大量の水を飲まないといけないわけですね。
飲む量を2リットルではなくて、私は尿量を2リットルになるように飲んでいるんですよ。ただ今日も3時間半のラウンドに大きなペットボトル2本持って行きましたけど、ゴルフに夢中になってなかなか飲み切れないんですよね。ゴルフやっていて一番大事なことは、水を飲むことですよ。
人間の体はほとんど水分でできているんですから。ゴルフやった後、「いや、足の指痛くって」なんていっている人は痛風注意ですよ。
私は常に、尿酸値と血圧をチェックしながらゴルフをやっています。3ホールに1回ぐらいの割合で携帯の血圧計でチェックしています。ラウンドに出る前と後にはきちんとした血圧計で測りますし。
カナダでは知りませんが、日本ではラウンド中、高血圧で倒れる人が多いので、必ず血圧計を置いてありますから。
下の血圧が100、上の血圧が170を越えていると、危険ですね。真夏と真冬は血圧で倒れる人が多いんですけど、特にパットの時に血圧は上がります。集中して、ストレスがたまるからです。
大槻教授といえば、以前は電磁波プラズマによって、火の玉の特性を示すことに成功した物理学者という印象が強かったのですが、最近のウェブサイトではゴルフに関連したことでずいぶん登場なさっていて、ひとつのことに没頭するタイプのようですね。
夢中になったら止まらないという悪いくせを持っているんですね。小学校5年の時に火の玉を家の庭で見ちゃったから、それが災いして。それまではむしろ文科系が好きだったんです。小説を読んだり、歴史物を読んだり。
でも、その火の玉のおかげで、何とか火の玉の謎を解明したいと理科系に没頭して、気がついたら60 歳を過ぎてました。
好きな女性も、一度ほれ込んだらどこまでもあきらめないと。その最大の犠牲になったのが家内です。本人もそう思っているし、私もそう思っています。火の玉も言ってみれば、犠牲者かもしれませんね。
私が解明する前は、火の玉は人だまなどとも言われて、いろいろに取り上げられていたのに、最近では話題にもならないでしょう。
火の玉の不幸、家内なんかもそういった不幸を背負ったというか、私に魅入られて駄目にされたっていうことで、一緒かもしれませんね。
バンクーバーへの最初の旅行は、ふたつの学会の空き時間を利用して訪れたということですが、何年ぐらい前ですか。バンクーバーの魅力はどんなところですか。
よく覚えていませんが、はじめてバンクーバーへ来たのは20 年以上前だと思います。それから何度か来ているうちに、ますます好きになって。
最初は、避暑地としてスイスを考えていたんですけど、スイスは物価が高いし、山だけで。バンクーバーには山も海も湖もあって、ここが世界一だと。
それで、6年前にコンドを購入して、夏場は毎年3ヵ月半ぐらいいますね。
いくら日本のお金持ちでも、科学者でも、バンクーバーと同じ気候を日本へ持って行くことはできません。つまりはお金で買えない贅沢ですよ、ここの気候は。それに、すぐ近場にゴルフ場がたくさんあって、安くて、最高ですね。
日本だと、最近安くなったといっても、平日で5、6千円ぐらいでしょうか。アクセスがまた不便で、片道3時間で往復6時間なんていうのもめずらしくない。
ゴルフを始めて6年目で、今日で833回目。2年前に大学を退職してからはやりたい放題で、バンクーバーへ来ると、予定としては月、水、金なんだけど、矢野さんやら(矢野アカデミー・矢野修三)、日系の人たちに誘われてプラス、アルファーとベーター。結局週に4〜5回プレイしますね。
大学を退職なさったとおっしゃいましたが、確か早稲田大学の定年は 歳で、まだ数年あったのではないですか。それに大槻教授は見た目にも、体力的にもまだまだお若くていらっしゃるのに、何か辞められる理由でもあったのでしょうか。
東大から早稲田へ移った時、ああ、しまった、なんて早稲田の大学院の連中はこう、あほなんだろうって。
やっぱり東大にいればよかった、少しはましだと。ああ嫌だ、嫌だと、最初、助教授の頃は思ったんですね。ところが、だんだんとこいつらなかなかできるな、やっぱり早稲田もいい学生いるなと思って、大学院生を指導してきました。そしたら、
50代に入るあたりから、学生の言っていることがよくわからなくて。
何で、こいつらすぐ理解できるんだろう。まさか教授がわからないなんて言えないし、わかった振りしなくっちゃって。そして、60 歳になったらもう初めからなんだかわからないのね。
「あ、ごめんね、わかんない。もう1度やってくれ」って言ったら、こんなことが教授のくせしてわかんないのかなって顔してね。その段階でね、辞めようって。
もう理論物理は限度。潔く大学辞めようって。早稲田大学は70歳定年で、私が辞めたのが66歳だから、総長や学部長がなぜ辞めるんだって。
辞められたら困るって言うんです。それでね、「なんかこの辺(頭)トントンとたたくと妙な音がしてね、スイカをたたいた時のような音がするんです。どうも脳が萎縮して空洞ができているようで、大学院のセミナーでも私ついていけないんです。
だから大学辞めて、脳使わないで、今ゴルフに夢中だから体で勝負したい」って言ったんです。そしたら、そんなこと、まさか理事会と教授会に言えないって。それなら、大槻はそろそろ飽きてきたって書いてくださいって言ったら、結局「教育、研究に十分尽くしたがこの辺が限界で」というような内容の文章が依願退職の正式な理由になったようです。
取材後記:この対談の最期のオチを読んでいただいてもわかるように、大槻教授は非常にサービス精神が旺盛な方で、真面目な表情で普通では口に出せないようなことをさらりと、ユーモアを交えながら、相手を楽しませる話術をそなえている。長い間にわたるテレビでの不動の人気もうなずける。
(取材 ミネ内田ビイラー)
大槻義彦(おおつき・よしひこ)
プロフィール
1936年6月18日、宮城県生まれ。早稲田大学名誉教授、早稲田大学客員教授、理学博士(東京大学)、日本物理学会理事、名古屋大学客員教授、ミュンヘン大学客員教授など歴任。
最近の著書
「ゴルフ上達の科学」(講談社)
「大学院のすすめ」(東洋経済)
「反オカルト講座」(ビレッジセンター)
連載執筆
「科学バカ、ゴルフバカ」(週間ゴルフダイジェスト)
「反オカルト講座」(ダカーポ)
TVなど
「タカジンワンマン,ランキングマイド」レギュラー
テレビCM・リクルート「ホットペッパー」
東映・映画「ゴジラ最終回」「ゴルフの王道」(テレビ東京)
その他クイズ番組など
講演
地方講演/年20回ほど