SPECIAL 2004
2004年6月 23号 掲載
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「1日4万人、1年に1500万人の人々が食糧不足と栄養不足が原因で命を落としている」‐こうした問題状況に対して、日本国際飢餓対策機構(JIFH)は国際飢餓対策機構(FHI)のパートナーとして、国連諸機関、民間諸団体と協力して世界の飢餓に苦しむ地域で物心両面の援助に力を注いでいる団体である。
今年3月までの3年間、JIFHの開発教育部に所属し、日本の人々に世界の飢餓の状況を伝える啓発活動に当たってきた村松勝三(むらまつかつみ)さんにJIFHの活動の様子や経験談を伺った。
JIFH に赴任開始からの話をお聞かせください。
まず、初めの5ヵ月間は研修期間で、カンボジア・ペルー・ボリビア・ウガンダを回りました。JIFHではその国の人々が自立して生活できるよう、農業指導や灌漑用水工事、井戸やトイレの設営、衛生教育といった点から援助活動を行っています。
現場においてはJIFHだけでなく、国連の世界食糧計画(FAO)やJICA、青年海外協力隊と協力して活動します。
カンボジアでわたしが一ヵ月滞在したチュークという村は衛生状態が悪く、水道もないところでした。以前に、国連が井戸を150も掘って、この状況を改善しようとしたのですが、そのなかで現在も使われている井戸は、ほんの二つ三つです。
人々の様子を見ていると、雨水をためて飲んでいたり、その辺の水溜りの、ボーフラのわいているような水を、藻をかき分けながら飲んで「おいしい」と言っています。「井戸の水はまずい」と彼らは言うのです。
ちょうど私たちが清流の水はおいしく、消毒された水がまずいと感じるようなものなのでしょう。彼らの文化のなかに、井戸水のような衛生的な水を飲むという意識が根付いていないのです。しかし、そのために子どもたちの100%がお腹に寄生虫を持っている状態です。そのため、JIFHでは井戸を掘ると同時に、人々に衛生的な意識を持ってもらうための教育を行っているのです。
どのように教育していくのですか?
その村は、農民ばかりの地域で、ほとんどの人は文字が読めません。それで「○月×日に集会があります」とお知らせする際、プリントを配っても読めないため、JIFHのワーカーが一軒一軒まわって、口頭で伝えていかねばなりません。
私もワーカーと一緒に、炎天下で熱中症になりそうになりながら家々をまわりましたが、ただ「来てください」と言っても人が集まらない。そのためワーカーは子ども用に飴やビスケットを持って行ったりします。大人には手当てをあげると人が集まりやすいそうです。
集会の時には大きなパネルに、この地域の典型的な家庭の様子を絵に描いて見せます。それは高床式の家に家族と家畜が暮らしていて、そこに井戸があってという絵です。その後、井戸のそばで用を足している絵を見せて、「これでは井戸がきれいに保てない」ということを話します。おそらく私たちなら結論だけ言えばいいことも、1から
まで伝えていく必要があるのです。
こういう活動はとても地味で労力のかかることですが、ただ援助として井戸などの物資を提供するだけではだめで、彼らが自立して衛生的な生活ができるようにすることが大切なんです。
それは彼らの文化を破壊するということではありません。寄生虫を抱えながら、体を壊して死んでいくという状況に対して、衛生的な生活をするという人間の基本的な権利を手助けしていこうとするものなのです。
世界的な飢餓の状況についてお話いただけますか?
世界食糧計画(FAO)の調べによると、世界で八億人が深刻な飢餓の状態にあります。これは日本の人口の約7倍ということになります。その数値は十数年来変わっていないというのです。世界では一分間に
人が飢餓に起因した病気で亡くなっていまして、そのうちの 人が子どもです。
現在の世界の食糧の生産高は、それが公平に分配されたなら、人類全体が健康を維持するのに充分な量であると言えます。
ですが、現実には世界の人口の五分の一を占める先進国の人々が世界で生産される食料の %を食べてしまい、世界の人口の五分の四にあたる開発途上国の人々が残りの
%の食糧を食べているという不公平な関係となっているのです。
どうしてもお金のあるところに食糧が集まるために、こうした不均衡な状態が生まれてしまいます。それを政治的経済的に解決するには、国の政策としてでは様々な問題があって難しいと思っています。楽天的すぎるかも知れませんが、私は食糧問題の解決は一人一人が共に生きようとする善意に支えられたNGOの草の根的な活動によって進められないといけないと思うに至りました。
日本で村松さんが取り組まれていた仕事についてお聞かせください。
日本は %以下の食糧自給率でありながら、また、経済がどうのこうのと言っても、子どもが親に食べなさいと言われながらも残すのが当たり前のような飽食状態にあります。また「日本の飽食は発展途上国の飢餓を創出する元凶である」とも言われています。当の日本人はそのことを何とも感じていない。
しかし日本人は飢餓で苦しむ人に対して負い目を感じなくてはいけない。
私は主に日本の教育委員会の要請を受けて、小中学校の授業や集会の場で、飢餓に苦しむ人々の状況を伝え「共に生きる人々として助け合っていこう」というお話をしてきました。教会や企業も回りました。
印象深かったのは鹿児島県の全校生徒十数名の小中学校を回ったときですね。最初にわたしの趣味のサックスを吹きました、すると関心がぐっと集まってきましてね。その後に「みなさん、世界にはお腹が空いて死んでしまう子どもがいるよ」と映像などを使いながらお話していくんです。
それからは子供たちの生活が変わってくる。「もったいない」と言ってご飯を残さなくなるし、「貧しい人たちに」と寄付をする子供が出てくる。同じ子供、同じ人間として生きる心をもつようになってくるんですね。とてもやりがいがありました。
今後のご自身の活動についてお聞かせください。
世界には日本飢餓対策機構(JIFH)と同じ働きを持つ組織がカナダ、アメリカ、イギリス、スイス、スウェーデン、韓国等にあります。これからはJIFHの協力主事という職務でボランティアとしてこのカナダの組織Canadian
Food for the Hungry International( )と協力関係を持って、食糧問題の解決に向けて尽力していこうと思っています。
カナダ政府は に多くの薬品や医療器具を支給してくれています。
それはすばらしいことなのですが、 の組織は小さいため、それを海外に運ぶ資力がありません。一方、韓国の同じ組織はアフガニスタンやイラクなどに多くのスタッフによる医療チームを派遣しています。ですが、適切な医療を行うにも機材がない状態です。
そこで、海外に医療器具や薬を運ぶ船賃は、大きな組織である日本のJIFHが負担して、韓国の医療チームがそのものを使って医療を行うという連携をとっています。こうして一国だけではできないことも助け合いによって可能になっています。
日本の企業などに寄付のお願いをしてまわっていますと「自分たちの生活だけで精一杯で人のことまで考えられるか」と怒鳴られて不快な気持ちになることもありましたが、貧しい国を実際に見てきて、共に生きるものとして
もちろん自分の生活を守ることは必要ですが 助け合っていくことが大切だと思います。
私たちは「ひと月に一度食事を抜いて飢餓の気持ちを味わい、500円を飢餓で苦しむ人に寄付を」と呼びかけています。多くの人が、みんなで一緒に幸せになる気持ち「共生」の気持ちを持ってほしいと願って止みません。
(取材 平野香利)
日本国際飢餓対策機構
1981年インドシナ難民救援から帰国した一人の日本人の呼びかけから、国際飢餓対策機構と手を結んで始まった組織。「世界の飢えた人々に食糧と愛を」「共生」の言葉を掲げながら自立開発援助・啓発教育・里親制度・緊急援助などの活動を行う。
本部事務所〒581-0802 大阪府八尾市北本町2-4-10TEL(0729)95-0123 http://jifh.fhi.net/
村松勝三氏 プロフィール
1942年愛知県生まれ。日本同盟教団牧師として1984年よりバンクーバー日系人福音教会牧師に就任。2001年4月より日本国際飢餓対策機構に赴任。今年3月末にカナダに帰国。サクソホーン演奏者としてはバンクーバー市民オーケストラで演奏活動の経験を持つ。
連絡先Tel:604-874-4432