SPECIAL 2004

2004年2月 8号 掲載


遺言状について詳しくなろう

  「遺言状」なんて聞くと「自分にはそんな財産なんかないから」とか、「ちょっと大げさなだな」と思う人も少ないないはず。しかし、もしもというときに財産相続に関して不可欠になるのが遺言状の存在。カナダでは自分の財産の行く先を考えておくことは年齢に関係なく大切なこととされている。そこで今回は遺言状について紹介しよう。これはあくまでも一般的な参考情報であり、個々の状況に応じての詳しい情報は関係機関に直接問い合わせてほしい。
なぜ遺言状を書く必要があるのか
遺言状とは?
 遺言状とは英語では『Will』といい、その言葉どおり、「自分の意思」を紙面に記載することをいう。特に財産の処分方法を記すことを指し、自分の死後、財産をどのように処理したいのかを書くものである。
必要な理由は?
 遺言状の存在は、自分の死後、財産をどのように分配するのかをはっきりさせることができる。それによって、自分の財産を守り、分配に関して余計な争いごとを避け、残された家族を守ることが出来る。
遺言状がないとどうなるのか?
 「遺言状がないとどうなるのか?」というのは裏を返せば「だから遺言状が必要だ」ということになる。ここではいくつか遺言状がない場合の例を挙げてみよう。
1、誰が遺産の相続権を決定するのか
 誰がどのくらい相続するかは、州政府の法律エステイト・アドミニストレーション・アクト(the Estate Administration Act)によって決定される。
2、誰が遺産を相続するのか
 遺言状がない場合もしくは有効でない場合、財産は州の法律によって以下のように相続人が指定されている。
ロ 基本的に配偶者と生存している子(養子を含む)に分配される
ワ ロがいない場合、孫に分配される
ン ロとワがいない場合、親に分配される。親がいない場合は、最も近い親類に分配される
゙ 親類がひとりもいない場合、もしくは見つからない場合は、州政府に回収される
3、 遺産管理人には誰がなるのか
 遺言書がないということは、そこに記載されるべき相続執行人(Executor)もいないため、遺産管理人(Administrator)が必要となる。これは法廷申請によって行われ、時間も費用もかかる。この場合の費用は遺産から支払われることになっている。
 遺産管理人は親類の一人もしくは数人がなるか指名される必要がある。それにより、親類の間で意見の不一致があったりすると法廷に持ち込み解決しなくてはならなくなる。相続手続きは長引き、時間がかかればかかるほど費用もかかる。
4、 費用はどのくらいかかるのか
 状況によるが、大まかに千ドルから一万ドルはかかる。もちろん、状況が複雑になればなるほど費用はかかり、この金額を超えることもあり得る。
5、 歳未満の子供が相続する場合
 配偶者がなく 歳未満の子供が残された場合、遺産は州の法律により子供に均等に分配されることが定められている。しかし、財産管理は政府機関のthe office of the Public Guardian and Trusteeによって行われる。子供が 歳以上になるまで、財産は本人たちおよびその親類が何の目的であれ、使ったり投資したりといった行為をすることは出来ない。
遺言状を作るには
形式は?
 基本的に型にはまった形式はなく、ウィルズ・アクト(Wills Act)という遺言状についての法律に定められた形式に従った書面であれば、遺言状として認められる。
いつ?
 遺言状を作成するのに絶好機というものはなく、早ければ早いほどよい。 州では 歳以上で作成できる。
どこで?
 カナダでは各州政府が法を定めている。 州では、日本で作成されたものも、 州の法の条件を満たせば有効となっている。しかし、 州外で作成されたものは、専門家と念入りに確認するかもしくは新しいものを作成するのが望ましい。
言語は?
  州の場合、日本語の遺言状も有効と認められている。ただし、英語に翻訳されたものもなければならない。
遺言状が効力を発揮するには?
  州で作成された遺言状には、本人の署名と証人2人の署名が必要。署名の際は3人がその場に同席していなければならない。3人の署名がされていると有効とされる。
 州政府への登録は特に義務付けられていないが、登録しておくと安心である。
状況が変わったら?
 一度作成された遺言状は死ぬまで有効である。しかし、財産が大きく増減したり、結婚出産、さらには税金の法律が変わったりなどの状況変化があった場合、常に更新する。年に一回程度更新が必要かチェックするのが望ましい。
誰が作成するのか?
 自分ですべてをやるのがベストであるが、それはやはり難しい。以下のような法律に詳しい専門家に手助けを頼むというのが一般的な手段。
*弁護士
*ノータリーズ・パブリック(Notaries Public)
*自分で制作するためのガイドブックを参考、
もしくは書き込み式のウェブサイトを利用
*the Law Courts Education Society:
バンクーバー:604-660-2919
*the Legal Services Society's Law Line:
バンクーバー:604-601-6100
*Dial-A-Law バンクーバー:604-687-4680
トールフリー:1-800-565-5297 州政府への登録
  州政府では、遺言状を公的にするための登録を受け付けている。登録すると、登録されたという事実、誰が登録したのか、どこに保管しているのか、いつ作成したのかが証明される。
 登録方法は、登録申請書(Wills Notice Form)を記入し、登録料( ドル)とともにBritish Columbia Vital Statistics Agencyに提出もしくは郵送する。申請書は政府事務所、またはVital Statistics Agencyの事務所で入手するか、ウェブサイトからダウンロードする。
 British Columbia Vital Statistics Agencyとは、 州政府保健省管轄の機関で、主に人口動態統計に関する業務、例えば、出生届や婚姻届など、人生の出来事に関する登録などや証明などを取り扱っている。
British Columbia Vital Statistics Agency
PO Box 9657 Stn Prov Govt
818 Fort Street, Victoria BC, V8W 9P3
TEL:Vancouver 604-660-2937,
Victoria 250-952-2681
ウェブサイト:www.vs.gov.bc.ca 以上、一般的な遺言に関する知識として必要な事柄を紹介した。ここの状況、事情により遺言状のあり方も変わってくるので、専門家のアドバイスを受けることが望ましい。今回は、ウォン・ピーターソン法律事務所のロナルド・ ・ピーターソン弁護士の全面的な協力を受けた。ピーターソン弁護士は 年のキャリアを持ち、特に交通事故( 請求)、訴訟、移民関連に関して豊富な知識と経験を持つ。その他相続・遺言、家庭・離婚問題も扱っている。
 遺言状に関してのピーターソン弁護士からのアドバイスとして、遺産に税金がかかることがあるので、自分の場合はどうなのかを弁護士や会計士と調べておくこと。その場合、遺言状が税金対策の武器となる。
 さらに遺言状に関連して、『Representation  Agreements』というものがあることを紹介。これは、自分が精神的、肉体的に自身の財産を管理できなくなった時のために、それらに関する事柄を管理してくれる人を指名しておくというもの。これも余計な時間や費用をかけなくてすむひとつの手段であるということ。
 最後に、 州で認証されている弁護士の力を借りること。「遺言状を書くのに弁護士は必要なのか」という質問を受けることがあるが、法律上義務付けられてはいない。しかし、専門的な知識と経験を持った弁護士が迅速かつ正確に実務を遂行できることは間違いないので、弁護士というと気が引けると思うかもしれないが気軽に相談してほしいということだった。
     (取材 三島直美)
ウォン・ピーターソン法律事務所
弁護士 ロナルド・G・ピーターソン
日本語アシスタント エイコ・マクレイ
TEL:604-739-0118
FAX:604-739-00117
Email:eiko@the-law-business.com(日英両語可)
用語集
遺言状を作成するときに知っておくと便利な用語を少し紹介。
Administrator: 遺産管理人ー遺言状がない場合や無効の場合に、エステ イト・アドミニストレーション・アクトによって決定され る相続執行人
Beneficiary: 相続人ー財産を相続する人
Estate: 遺産-死亡後に残された遺言者の全財産
Executor: 執行人ー遺言状に記載されている相続執行人
Testator: 遺言者ー遺言状を作成した本人
Witness: 証人ー遺言状を有効にするために遺言者とともに署名す る人
Estate Administration Act: 遺産相続に関しての法律
Wills Act: 遺言状に関する法律