SPECIAL 2004

2004年1月 7号 掲載


更年期
体の変調と対策


薬学博士でありViker社長の方芳(Leona Fang)さん

 1.更年期とは
 一般に閉経前後の各5年間、計10年間を指すことが多い。個人差が大きいが、45から55歳が平均的な更年期年齢。閉経による急激なホルモン分泌の変化に、身体が順応するまでの間に現れるトラブル症状を「更年期障害」と呼んでいる。
男性にも更年期
 更年期は女性特有のものとされてきたが、男性にも男性ホルモンの減少が40から50歳代にかけてある。だが、ひじょうに緩やかな減少であることや個人差が大きいため、女性ほどはっきりと更年期症状を表す人は少ない。
2.更年期障害にはどんな症状があるか
(血管運動神経系)
熱感(ほてり)・冷え性・のぼせ・動悸
(運動神経系)
肩こり・関節痛・腰痛・背筋痛
(皮膚・分泌系)
しもやけ・しみ・しわ・湿疹・発汗・口内乾燥・眼球乾燥・唾液分泌異常
(泌尿器・生殖器系)
性交痛・膣の乾燥感・尿失禁・頻尿・残尿
(知覚神経系)
アリがはうような感じ・しびれ感
(精神神経系)
頭痛・めまい・耳鳴り・いらいら・
ゆううつ・不眠・不安
(消化器系)
腹部膨満感・吐き気・便秘・
食欲不振・のどの渇き
 男性の場合は性欲減退やインポテンス、疲労感、不安感や睡眠障害が多い傾向がある。
3.更年期の体に変調をもたらすメカニズム
 状態変化の顕著な女性に焦点を当てて、更年期の体のメカニズムを見てみてみよう。(図1参照)
| 20歳代半ばから徐々に機能低下が始まっていた卵巣は、更年期を迎えるころになると分泌する女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロンからなる)の量が急激に減少する。
女性ホルモンの働き
 特にそのなかのエストロゲンは、女性らしい丸みを帯びた体つきを保ったり、皮膚の張りを保ったり、骨を溶かす細胞の働きの抑制、悪玉コルステロールの増殖の制御といった機能がある。最近の研究により脳の健康状態を保つ働きのあることもわかってきた。エストロゲンの分泌が少ないとそうした機能が保たれないことになる。
} 脳のなかの視床下部は血液中のエストロゲンの量をつねにモニターしており、その量が少ないと脳下垂体に指令を出す(「性腺刺激ホルモン分泌ホルモン」を出す)。
~ 指令を受けた脳下垂体は「性腺刺激ホルモン」を分泌して、卵巣にエストロゲンを分泌する指令を送る。しかし、機能の低下した卵巣は指令を受けてもエストロゲンを分泌することができない。そのため、視床下部はいっそう脳下垂体に指令するホルモンを出し、脳下垂体は過剰に「性腺刺激ホルモン」を分泌する。
自律神経系の変調
 自律神経系(呼吸、消化吸収、循環、睡眠など)の働きを司る視床下部が、女性ホルモンの分泌指令に集中することで、自律神経の機能に支障をきたすことから、心臓のどうきが早くなったり、神経過敏になったりなどの症状が出てくるようになる。
ホルモンバランスの変化
 女性ホルモンの分泌を促すホルモンだけが増加して、女性ホルモンは少ないというアンバランスな状態でいると、心と体に変調をもたらしやすくなる。
4.更年期障害への対策
 一般の病院に行くと、その人の状況を診断したうえでホルモン補充療法(HRT)と呼ばれる女性ホルモンと同じ作用の化学薬品の服用を勧められる場合がある。
 ホルモン補充療法(HRT)の問題点について、方さんは「ホルモン剤の服用中はその人の血液中に女性ホルモンが存在する状態になるため、長期に服用すると、視床下部がもう十分女性ホルモンがあると認識し、自分の卵巣から女性ホルモンを出すよう指示しなくなります。そのためますます卵巣が機能低下していくことになります。またHRT(ホルモン補充療法)を5年以上続けている人は、子宮内膜ガンや乳ガンなどの発症率が上がるという研究結果も出されています」。
 また、化学薬品だけではなく以下のような天然の原料をもとにした漢方薬や食品による対症療法も一般的に行われている。
<用いられる原料>
Evening primrose 月見草―血液の循環の促進、胃液の分泌制御、かゆみの軽減
Black Cohoshキンポウゲ科の植物サラシナショウマ―解熱解毒作用
Wild Yam ヤマノイモ(山芋、自然薯、 長いもとも呼ばれる)―滋養強壮、消化促進、頻尿、精神倦怠、発汗に作用する。
Bee Pollenミツバチが集めた虫媒花の花粉―更年期の諸症状の緩和
Placenta(主に羊の)胎盤―肌にうるおいを与える
 これらの服用は、つらい症状を取り除きながら、ホルモンが減っていく状態に体を慣らし、体調を整えることを目的としている。
 「漢方にしてもこうしたものは、副作用のある場合があります。たとえば月見草を加工した食品は、安価で手に入ることから、世間に多く出回っていますが、長く服用すると胃潰瘍になることがわかっていますから注意が必要です。いずれにせよ、こうした薬や食品の場合でも、体に植物や動物の女性ホルモンを直接取り込んでいるだけで、基本的に卵巣の状態を良好にするものではありません。また、女性ホルモンは一生でもスプーン1杯という大変微量に分泌されるものですが、外部から取り込む場合には、その微量な加減をすることが難しいということが言えます」。
 結局、本来は自分で生成するべきホルモンを外から取り込むという方法には、効用と同時にリスクがあることを心得ておくことが必要だと言えるだろう。
 方さん自身は長年、女性の更年期の問題に取り組み、女性ホルモン自体ではなく、女性ホルモンを出す卵巣の機能維持に着目し、卵巣に栄養を与え、機能回復を図る健康食品を開発した。この食品は100%天然原料からなり、ホルモン成分を含まない。この食品を摂取した人を長期にわたって調査したところ、閉経が遅れ、体つきに丸みが出て、肌につやが出て、しみが消えたり、冷え性が緩和されたり、性生活が快適になったり、寝汗や睡眠障害が解消されるといった更年期の症状が緩和されることが確認でき、商品化につなげることができたという。
 更年期は多かれ少なかれ、だれもが通過する変調期であるため、こうした従来の治療法とは違うアプローチの研究により、安全な状態改善法が開発されていることは朗報だといえるだろう。 
 また更年期のトラブルは、体のみならず、家庭や社会での変化によるストレスや気の持ち方も影響している。閉経という体の変化にショックを受ける人もいるが、避妊の必要がない、面倒な月経がなくなるとプラスに受け止めることもできるだろう。 
 何かスポーツや趣味、仕事など打ち込めるものを持って取り組むなど、ストレス解消の術をもって、心身をリフレッシュしていくことが、地道ながら有効な解消法になっていくのではないだろうか。        (取材 平野香利)

方芳(レオナ・ファン)さん
ご両親が薬の研究者という家庭に育つ。遼寧省の瀋陽薬科大学で漢方薬、植物化学を研究後、1982年より中国医学専門学校の教官として勤めながら13年間研究に励む。女性のホルモン活性の研究は着任後まもなく開始した。瀋陽薬科大学教授から日本の北里研究所へ移った父のつながりもあり、97年には同研究所に留学して博士号をとる。その後、東菱薬品(株)に就職し、研究活動の傍ら販売業務も手がけ、カナダに赴任後、同社を退社し、Viker Manufacture Co.Ltd.を創業。現在は各種検査と臨床実験を重ねて自ら開発した卵巣への栄養食品「Sangel」を販売している。
Viker Manufacture Co.Ltd
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