SPECIAL 2004
2004年1月 6号 掲載
バンクーバー観光局
アジア太平洋地区市場開発課 課長
山本安彦さん
ロングステイ企画について語る山本安彦課長 |
二〇〇一年の同時多発テロ以来、様々なマイナス条件が重なり、日本からの北米への観光客数は「順調に回復している」とは言いがたい状況だ。カナダ観光の玄関口としてのバンクーバーもその影響を大きく受けてきた。しかし、バンクーバー観光局では柔軟な対応と新しい発想で新たな市場を開拓しようと意欲的な活動を続けている。その第一線にいるのが山本安彦さんだ。
旅の新しい形とバンクーバーの魅力
「バンクーバーの観光を見直す時期に来ていることは確かですね。例えば、二〇〇二年の日本からの観光客数を見てみますと、確かにパッケージ・ツアーでいらっしゃるお客様は前年比で一〇〜二〇%近く落ち込んでいます。しかし、実は個人で旅行なさる方は一〇%以上増えているのです。従来の旅の形とのギャップが大きくなっているのですね。」と、山本さんは日本人の旅行形態の変化をまず指摘する。
「バンクーバーをカナダ旅行の玄関口、ゲートシティとしてとらえるのではなく、ここに長く滞在していただいて、バンクーバーの持つ魅力を見て、体験して、楽しんで欲しいと思います。大自然と都会の楽しみ方がいっぺんにできる都市は世界にもそうたくさんあるわけではありませんからね。バンクーバーのキャッチフレーズは『COME
to Vancouver』というのですよ。COMEはCity, Ocean, Mountain and Everything elseの頭文字。都市と海、山、そしてその他の全てが揃っているということですね」
確かに、今までの日本からのパッケージツアーではバンクーバー滞在は長くても二泊。この都市周辺の大自然を満喫するような余裕のある日程を組んでいるものは少なかったようだ。山本さんは、雄大な環境に恵まれたバンクーバーをゆっくり楽しめる、旅の新しい形を提案する。
注目の「海外ロングステイ」
日本人の海外旅行の新しい形の一つとして、一昨年後半から注目されているのがシニア層を中心にした「海外ロングステイ体験」だ。これは一ヶ所に最低でも数週間滞在し、その町ならではの様々な体験通して、現地の人々の暮らし振りや素顔に出会おうとするものだ。宿泊はキッチン付きのアパートメント形式のホテルなどが中心で、日用品や食料品のショッピングなども旅の大切な要素として楽しもうというわけだ。このロングステイはタイなど、東南アジア諸国ではすでに一般化しつつあるという。
この傾向に合わせて、シニアのロングステイにまとを絞った旅行ガイド本も次々と出版されている。そうしたロングステイ・シリーズの一つを出版している、ぷれすアルファ社の下川裕治さんは「長期滞在をしてみたい都市ということで調べると、バンクーバーは必ず上位に挙がってくるのです。」と語る。バンクーバー観光局でも、この「シニア市場」を開拓するために意欲的なプロジェクトを立ち上げた。
「長期滞在でバンクーバーの本当の良さを知ってもらおうとすれば、やはり時間に余裕のあるシニアの方々が対象になりますね」と山本さんは語る。バンクーバー観光局が三年計画で展開するこのプロジェクトでは、市内に長期滞在しながら様々なアクティビティを体験し、シニアの方々に充実したセカンドライフへの転換を提案するというものだ。
「市内の英語学校と提携して、様々なアクティビティを体験していただけるようにスケジュールが組まれています。英語学校といっても普通に英語を習うのではなく、バンクーバーでの日常生活のコツを英会話の授業を通じて学ぶという感じですね」
山本さんは、このプロジェクトの一つとして 地球倶楽部が提案している『バンクーバー・癒しのスロースティ』のパンフレットを広げながらアクティビティの内容を説明してくれた。パンフレットには2週間と4週間滞在用のアクティビティのサンプルが示されてたが、一般家庭を訪れてカナダ人の日常生活に触れたり、
の人類学博物館を訪れ、専門の解説者からカナダ先住民の歴史や文化について学ぶなどの、奥行きのある日程がずらりと並べられている。
日本のテレビやラジオでも注目
バンクーバーでのロングステイ体験については、日本のメディアでも注目されているという。「昨年の九月に、シニア世代に人気の高いラジオ番組『朝刊フジ』がこの企画を取り上げてくれたので、私たちが十一月に日本で説明会を開いたときには二〇〇名以上の方々が東京のカナダ大使館に集まってくださったんですよ。」と山本氏は顔をほころばす。
ラジオばかりでなく、今年の春には実際にプログラムを体験してその報告がテレビ番組として放送される予定になっているという。また、『トラベルジャーナル』など旅行業界の専門誌にもこのプロジェクトのことは大きく取り上げられている。
「説明会に集まってくださった方々の反応は非常に良いものでした。『バンクーバーで何をしたらよいのか?』という興味を持っている人が多いのを感じましたね。こちらからの企画をご説明すると、『おもしろそう。どんな街か行ってみたい』とおっしゃってくださる方々がたくさんいました」と、日本での手ごたえのある反応を語る山本さん。
自分の人生を振り返り、これからの新たな生活について考えるきっかけとしてのロングステイは、これからますますシニア層に受け入れられていくことだろう。そうした「遊学先」としてのカナダ、とりわけバンクーバーの可能性は大きく広がっているようだ。バンクーバー観光局の意欲的な取り組みにこれからも注目したい。
(取材 宮田麻未/写真 神尾明朗)