SPECIAL 2004

2004年1月 5号 掲載


料理の鉄人 in VANCOUVER


日本の伝統鏡開きで未来の繁栄と成功を祈る

   バンクーバーの「料理の鉄人」、「Chef Goes Gold」が一月二十一日、リステルバンクーバーホテルで行われ、「子持昆布」を題材にバンクーバーを代表するレストランから五人のシェフが腕を競った。このイベントはリッチモンドの子持昆布の製造会社SOKOA(Spawn on Kelp Operation Association)が子持昆布のブランドBC GOLDの市場乗り出しを祝う目的で開かれ当日は約九十名の人で賑わった。
 「料理の鉄人」として奮闘したバンクーバーの指折りのシェフは、トウジョウレストランから東条秀和氏、ココレストランから嶋村軍治氏、禅からオチ・ノブ氏、まるわ鮨からミコシバ・オサミ氏、そしてリリゲットフィーストハウスからドリー・ワット氏である。
 審査の基準になるのはアロマ、風味、見た目、テクスチャー、総合的な料理としての経験、そして北アメリカのレストランを市場で成功できる可能性があるかどうか、という六点で審査員賞と一般参加者賞が決められる。審査員にはテレビでお馴染みフードネットワークChef at Largeのマイケル・スミス氏、BCファーストネーションアーティストで、SOKOAのブランドマークをデザインを手掛けたロイ・ヘンリー・ビッカー氏、バンクーバー・フード・ビバレッジコンサルタントのジャーナリストスティーブン・ウォン氏、パシフィック・サーモン・ファンデーションの代表取締役のポール・カリヤ氏とスークハーバーハウスからはシンクレア・プィリップ氏が選ばれた。
 おせち料理には欠かせないカナダの子持昆布の輸出先は主に日本で、SOKOAでは年に400トンを輸出しており一ポンド ドルで売られている。日本人には馴染みの深い子持昆布だが、実はスコーミッシュ・ファーストネーションの人達にとっても子持昆布は常用食で、今回のイベントは子持昆布をどれだけ多種多様の人達に受け入れてもらえるかという興味深い試みとなった。
お味のほうは?
 禅のオチ・ノブ氏が手掛けたゴールデンマティーニの前菜はカクテルグラスにオレンジの薄輪切りを敷き詰めた目を惹く逸品で、出汁寒天の中に入った子持昆布が寒天の柔らかさと子持昆布の歯ごたえと良くあっており、きゅうりの酢の物とミックスされた味醂、酒、薄口醤油で煮込まれた子持昆布は最高のアロマを醸し出していた。
 ココレストランの嶋村氏が生み出した子持昆布はお洒落な巻寿司で、ポイントは「サラダのように」。中身は蟹、海老、ホタテ、赤ピーマン、カイワレ、卵がきゅうりで巻かれている。カリカリとした歯ごたえの中にも子持昆布のテクスチャーが生きており、あぶった赤ピーマンは皮が剥かれて卵と一緒に甘味を出しながらもカイワレがピリリときいており、多種の味わいがあっさり感で統一されている。
 トウジョウレストランの東条氏が考えだしたのは子持昆布東条スタイル。「カズノコノーザンライト」と名付けられた。日本の味を守りながらもプレゼンテーションに力を入れた芸術品。オレンジをくり抜いた皮を器に代用し、さらに桜の小枝を上に飾り一足早い春の訪れのような作品だ。人参、アスパラ、ダイコンをきゅうりで巻いて、子持昆布の魚臭さをやわらげるために擦られた柚子が上にかけられたそのさっぱり感はまるでデザートのようだ。
 まるわ鮨のミコシバ氏が練り上げた一品「ノーザン・パシフィック・トリオ」は手巻きで、一つはいくら、寿司飯、子持昆布とカイワレがスモークサーモンで巻かれている。二つ目は小海老、雲丹、蟹肉等の海の幸をふんだんに取り込んだ寒天。三つ目はオーブンベイクドツナに子持昆布がはいったもの。一口サイズのこの三品はそれぞれに違ったテクスチャーがあり、また味わいも一つ一つ独立しているアイデア作品だ。
 そして日本食レストランに囲まれて孤軍奮闘するファーストネーションのトラディショナル料理を出すリリゲットフィーストハウスのワット氏が出品したのは子持昆布のステアフライ、ガーリックバターで炒めた子持昆布、子持昆布蒸しの三品。日本食とは全く違った趣きでシンプルななかにも子持昆布の味を出し切った作品だ。特にガーリックバターとの相性が驚く程良く、日本人には目を開かせられる料理といってもいいだろう。

イベントに参加したバンクーバーの料理の鉄人達

結果発表
 一般参加者賞に選ばれたのはまるわ鮨のミコシバ氏の作品。賞を代理として受け取った松澤考シェフは「吃驚しました。とても嬉しいです。子持昆布の良さを分かってもらえて本当に嬉しいです」と感想をもらした。そして審査員賞に選ばれたのはリリゲットフィーストハウスのワット氏。「全く予期も期待もしていなかったので、本当に驚いてます。伝統的なファーストネーションの料理で、全てレストランのメニューに前菜としてあるものです。他のシェフの方達の作品もとても綺麗で、賞をもらえて嬉しいです」とワット氏は素直に喜びを表していた。
 審査員の一人であるビッカー氏は「最高にエキサイティングな経験でした。ファーストネーションの人間として、私達の伝統的な食べ物が日本でも喜ばれているのは嬉しい限りです。そしてシェフの方達の腕の良さにも敬意を払ってます」と話してくれた。また、フードネットワークからのスミス氏は「なんとも魅力的なクジーンでしょう。これはカナダの名物料理として名を馳せることができるものだと思います」と興奮を隠しきれない様子で話した。
 ファーストネーションの舞踊と歌が試食の合間に披露され、招待されたゲスト達は目と耳とそして舌で存分にそれぞれの美を楽しんだ後、鏡開きでSOKOAの成功と繁栄を祝し、三本じめでイベントは幕を閉じた。
 (取材 サンプター尊子)