MAPLE 2004

2004年8月 34号 掲載


神様の箱庭
プリンセス・ルイーザクルーズ

 

滝をバックに並ぶ、キッツオオツカ号(右)とサマーソルト号

 「神様が自分のためだけに造った、とっておきの箱庭」そんな感じがピッタリと来るプリンセス・ルイーザ。

 周りを囲む断崖絶壁の山々は、すそ野に針葉樹林が生い茂り、中腹から頂上までは石灰岩色をした岩が剥き出しになり、その上にはいくつもの氷河が見え隠れする。まるでロッキー山脈の中をヨットで抜けているような錯覚に陥る。

 このプリンセス・ルイーザは、サンシャイン・コースト地区にある1965年に設立された州立海洋公園で、プリンセス・ルイーザ・インレットの突き当たりにあるシャターボックス滝周辺のことを指す。ここまでの交通手段は、船か水上飛行機のみという陸の孤島。

 今回は、このプリンセス・ルイーザを満喫する3泊4日のヨットの旅を紹介しよう。

総勢11人、楽しいヨットの旅のはじまり

 バンクーバーから車を走らせ、ホーシューベイでラングデール行きのフェリーに乗り、ラングデールから再び車で1時間あまりエグモントに到着すると、前日にナナイモを出航した40フィートの大型ヨットサンセール・キッツオオツカ号とウィンドバレーのサマーソルト号が迎えてくれた。

 この日はエグモントに停泊、サマーソルト号スキッパーのカンちゃん(細野寛子さん)以外はみんな初対面。それでも海の上ではみんなすぐに仲良くなれる。

 夕食を一緒にとりながら、明日からの楽しいクルージングの話しで盛り上がる。今回参加したほとんどがヨットスクールで基礎を学んだことのある海のエキスパート。楽しい話し声は夜遅くまで辺りの景色に響いていた。

エグモント〜プリンセス・ルイーザへ

 翌朝早くに目を覚まし、8時30分エグモントを出航。キッツオオツカ号スキッパー黒崎さやかさん先導で両艇は一路プリンセス・ルイーザを目指した。

 途中の景色はホーシューベイからウィスラーまでの車の道のりをヨットで走るような感じ。針葉樹林生い茂った標高2000メートルはあるような山々の間をヨットが静かに抜けていく。

 雲一つない澄み切った青空と濃い緑の山々の中に静かな海を滑る真っ白な帆を立てたヨットの姿は絵はがきよりも美しい。

 しばらく静かなクルージングを楽しむといよいよ難関のマリブ・ラピッドにさしかかる。

 ここはプリンセス・ルイーザ・インレットの入り口で、ちょうど中央に小さな島がぽつんと存在感をアピールしているため、船の航行できる幅はかなり狭くなっていて、潮の流れは川のように速くなる。

 満潮を避け、慎重にここを通り抜ける。そしてしばらくすると、滝の音が山々に反響しているのがきこえ、目の前に山の頂上から流れ落ちてくる滝が見えてくる。

 おとぎ話の海の森に迷い込んだように美しいこの光景にしばし言葉を失う。「ここは神様の箱庭といわれているんですよ」と言ったカンちゃんの言葉になるほどと思った。

 四方を断崖絶壁で囲まれているため太陽が隠れるのが早く、時計の針はまだ5時なのに辺りは静かに夕暮れのような雰囲気。今晩の停泊場所を決め、お待ちかねの夕食となった。この日は上陸せずヨットの上で一日を過ごす。この心地よい揺れにもすっかり慣れてしまった。

マリンパークを満喫

 3日目、またしても快晴。朝食をすませ、ハイキングの準備。滝の中腹までの約1時間半の険しいハイキング( )コースにみんなで挑戦することにした。

わかめ入りおにぎり弁当もしっかり持って出発。5分も歩かないうちに道はなくなってしまって、あとは誰かの歩いたあとと木の根や岩を踏み台にした階段もどきのようなものがあるだけ。

後続者と犬(なぜかこの日は犬連れのハイカーが多かった)に抜かされてもマイペースでひたすら前を見て歩く。何回もの「あと5分」と下りのハイカーの言葉に支えられ、やっと到着。

インレットを一望できる景色と水しぶきを上げて流れ落ちる滝の清涼感にしばらく体を休めて、昼食。「登ってよかった」と2時間かかった道のりの苦しさもすっかり忘れてしまった。

 下りは以外と楽におりてヨットに戻ると、今度はお待ちかねの水浴び。滝壺から海に流れ出る踊り場で石清水のように冷たい水を浴び、海でひと泳ぎ。

いい年をした大人のグループとは思えないはしゃぎぶり。子供の頃渓谷で遊んだ時のように、照りつける太陽とハイキングで火照った体にとにかく水が気持ちいい。

さんざんみんなではしゃいでヨットに帰ると早速夕飯の支度。豚汁とご飯という何とも日本的な夕食を済ませ、山々に囲まれてくり抜かれたような形の星空を滝の音をBGMに眺めた。流れ星が落ちる度にみんなで騒いで願い事をした。

みんなと仲良くなれることが
海の旅の醍醐味


 ヨットでの旅の魅力は、その景色もさることながら、みんなと仲良くなれること。海好きにきっと悪い人はいないのだろう。

3日目の夜も我々の前に停泊していたヨットのおじさんピーターさんがハーモニカを持って崇記さんのウクレレに飛び入り参加。日がとっぷりと暮れた静かな入り江にウクレレとハーモニカのハーモニーがこだました。
 他にもいろいろな出会いがあった。

センチくらいの大きなタイの仲間のような魚を6匹ほど釣ったグループからお裾分けしてもらったり、私たちが小指ほどの魚を釣るとそばで見ていたカップルが拍手をくれたり、「真っ暗な夜の滝に懐中電灯で虹を作ろう」と言ってトライしてくれたフレッドさんと奥さんのルワナさん、その時限りの出会いでも一生心に残るような楽しい出会いがたくさんあった。

ハイキングの終着点にもこんなに大きな滝があった

BC州は、海の魅力がいっぱい

 「とにかく海の自然を楽しんでもらうことがうれしいですね」とメインスキッパーを務めた黒崎さやかさん。

「カナダはロッキーや広大な平原などの大地の大自然がとっても美しいことで知られていますが、じつは海の自然もとてもすばらしいことを体験してもらいたいですね」と語る。

  「特にここは船または水上飛行機でしか来られない秘境で、セーラーの間では憧れの人気スポットなんですよ」と細野寛子さんもその魅力を語ってくれた。

 人間に見つからないようにこっそりと神様が造った「神様の箱庭」、その中をヨットで楽しむ私たちを神様は微笑んで見ているに違いない、そんな気分にさせる神秘さがここにあった。        (取材 三島直美)

プリンセス・ルイーザ・クルーズへの問い合わせ先

 このクルーズを企画・運営するのは、バンクーバーダウンタウンにあるウインドバレー・セーリングスクール。

  黒崎さんも細野さんもここで経験を積んだISPAのインストラクター。プリンセス・ルイーザへのクルージングだけでなく、ガルフ諸島やバンクーバー近郊を巡るクルージング、海のキャンプのヤング・マリーナ・キャンプなども開催している。また、年間を通してヨットスクールを開講している。

クルージングやスクールに関する問い合わせは、スクールか校長のボブ・センドウ氏まで。

NikkeiTVでも放映


 このキャンプの模様はNikkeiTVでも放映される。
放映予定日 8月28日(土)午後4時から5時、再放送8月30日(月)午前10時から11時。チャンネルはマルチチャンネル、バンクーバー8ch、ビクトリア10ch。

ウインドバレー・セーリングスクール
TEL :スクール 604-685-7756(日本語)
ボブ・センドウさん 604-306-1520
Email :info@windvalleysailing.com(日本語)
WEB :www.windvalleysailing.com