MAPLE 2004
2004年5月 20号 掲載
赤毛のアンの家(グリーンゲーブルズ) |
プリンス・エドワード島(PEI)は、サファイアのような真っ青な海に浮かぶ小さなゆりかごのよう。『赤毛のアン』の物語の舞台として、多くの人々のあこがれの地でもあるこの島を訪れるなら、木々の若葉が輝きはじめ、赤土の道がエメラルドのような緑の畑と美しいコントラストをみせる初夏がおすすめだ。
エッ?と驚く大混雑をまず避けて
PEIに旅するなら、7、8月はできるだけ避けたい。日本人にとっては『赤毛のアン』の村として知られているキャベンディッシュは、実は海水浴のメッカ。カナダからアメリカにかけての東海岸は海流の影響で海水の温度がかなり低い。
それに比べて、PEIの海岸では海水浴が十分に楽しめる温度。
そのため、カナダばかりでなく米国のニューイングランドあたりからも海水浴を楽しみに家族連れが、この島にやってくるのだ。
グリーンゲーブルズの「アンの家」やモンゴメリーが住んでいた家の跡地など、キャベンディッシュに行けば、アンの世界がそのまま残されている…はずなのだが、海水浴シーズンのピークには、とてもではないが想像力の翼を広げてアンの世界に浸るというわけにはいかない。
キャベンディッシュの狭い道は家族連れを乗せた自動車でいっぱい。グリーンゲーブルズの周辺には、趣味の悪い人形をならべた蝋人形館から、小さな子供相手の遊園地、ファーストフードの店などが点在して雰囲気をだいなしにしている。
もちろんグリーンゲーブルズの家の中は、モンゴメリーの記述にほぼ忠実に再現され、アンの物語を読んだ人なら「ア、あれはアンが着るのを嫌がった服だわ!」などと気がつくような細かい配慮がされている。
だから、周辺がどんなに海水浴客でごった返していても、アンの世界へ溶け込んでしまっている人も少なくない。しかし、できればまだ観光客の少ない初夏か、思い切って秋が深まってからでかけるのがおすすめだ。
観光シーズンは6月中旬から9月中旬まで
日本人にとっては非常に有名なPEIだが、観光シーズンは案外短い。6月も中旬にならないと営業していないというみどころも少なくない。
「アンの家」は5月にはオープンするが、モンゴメリーが住んでいた「モンゴメリーのキャベンディッシュ・ホーム」は6月中旬からでないと中に入ることはできない。
多くのみどころや施設はオープンの時期が一定しておらず、電話で問い合わせても、「天気と準備の進み具合しだい…」というこたえが返ってくることも多い。このノンビリさが、PEIの良いところでもあるのだが…
このように、6月中旬以前、または 月以降に旅の計画をするのは多少リスクがある。行ってみたら見たい施設は始まっていなかった(または終わっていた)ということもありえる。
しかし、それだけに人ごみは避けられるし、宿の確保も楽。できればキャベンディッシュで泊まって、早朝の朝もやの出ているころに、グリーンゲーブルズの周辺を歩いてみると良いだろう。アンやマシューの愛した風景が静かによみがえってくるだろう。
「アンの世界」以外にもPEIは
魅力がいっぱい
初夏にPEIを訪れるなら、道端に咲く野草の花盛りも楽しみ。有名なルピナスの花は気まぐれで、毎年開花の時期が大きく違う。それでも6月中にルピナスに出会える可能性は十分にある。
海の美しさも初夏のころがベスト。おすすめは、島の東端に近いレッド・ポイント・ビーチ。赤い岩の崖の下に広がる海岸の砂は、歩くたびに不思議な音をたてる。
あまり人のいない朝に海岸を散歩すれば、「この島こそが地上で一番美しい。」と言ったモンゴメリーの気持ちがわかるような気がするだろう。また、島の一番東の先端にはイースト・ポイント灯台と呼ばれる
世紀のクラシカルな灯台がある。ここから眺める大西洋の雄大さも一生の思い出になるはずだ。
PEIらしい小さな村を歩いてみたいなら、キャベンディッシュに近い漁村、フレンチ・リバーがいいだろう。入江に面して、カラフルにペンキを塗られた小さな家や倉庫が並び、背後にはゆるやかなカーブを描く丘が続いている。100年も前から時が止まっているのではないかと思えるほどの穏やかな風景だ。
このほかにも、PEIのあちこちに「アンの世界」がある。観光名所になっているところばかりでなく、自分の足で「私だけのPEI」を見つけてみたい。PEIには、鉄道の廃線跡を利用して、サイクリングやハイキングのためのルートが作られている。ゆったりした日程を組んで、このルートをたどってみるのもおすすめだ。
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PEIへは鉄道ででかけよう
PEIへは、飛行機のアクセスはベストとは言えない。バンクーバーからだと、トロントやハリファックスで乗り換えなければならない。どうせ不便なら、鉄道を利用してノンビリ島へ行くのも手だ。PEIまでは鉄道では行かれないが、トロントやモントリオールからVIA鉄道を利用し、ニューブランスウィック州のモンクトンまで行くことができる。
モンクトンの駅からは鉄道バスがアクセスしており、そのままバスでシャーロットタウンへ乗り継げる。本土とPEIを結ぶ、コンフェデレーション・ブリッジからの眺めも、自家用車よりバスの窓からの方がずっとダイナミック。島への思いを盛り上げながら渡ることができるだろう。 〈PEIに関するくわしい旅情報は〉
(取材・文 宮田麻未 写真 神尾明朗)
www.gov.pe.ca/visitorsguideで。