SPECIAL 2003

2003年6月 第24号 掲載


 


秋田谷裕充さんのプロフィール  日本で3年間建築業を経験。カナダに移住以来、建築会社に所属して大工として働く傍ら、自分の会社「ヒロ・コンストラクション」としても近隣の増改築工事を手がけてきた。この移住後の27年の間には、カナダ式の家を日本で建設した経験もある。「一軒一軒が違うのでこの仕事はあきませんね」と生き生きと仕事のおもしろさを語ってくれた。

家のリフォームのヒント

        家の使い勝手がよくない、収納スペースが少ない等々、住まいへの不満があってもなんとなく我慢してしまう人が大半だろう。しかし、生活をより快適にしたいという願いがちょっとしたリフォームによってかなえられることは多い。
 今回の暮らしインフォメーションでは、家のリフォームでより快適な住まいを実現した事例をヒロ・コンストラクションの秋田谷裕充(あきたやひろみつ)さんにご紹介してもらった。
氈D暮らしの希望をリフォームで実現!
事例1
Aさん宅の希望‐足腰が弱くなったので、階段の負担を減らしたい。
工夫1)高齢者で脚力が弱くなると、家庭内の階段を利用するのも一苦労である。そのため、秋田谷さんは階段の段数を一段増やして、一つ一つの段の高さを低くする工事を行った。
工夫2)毎日のように使用する洗濯機や乾燥機が、普段過ごす階よりも下にあったことも不自由だったので、階段昇降の負担を軽減するため、階下の設備とは別 に、キッチンの横に一見クローゼットに見える収納スペースを作り、扉を開くとそこに洗濯機と乾燥機が現れるようにした。身体が不自由でなくとも、近くで家事がこなせるこの工夫は、忙しい人にとってもありがたいものだ。
事例2 
Bさん宅の希望‐リビングが北向きで暗く寒いが、明るく暖かい部屋にしたい。  いろいろな解決方法はあるが、このお宅では出窓を作って、東西からの光も取り込める部屋作りを行った。出窓にすることによって、物を飾るスペースもでき、インテリア・デザインとしても美しくなるので、リフォームの価値は高いと言える。  寒いという問題については、それまで一重だった窓を、出窓に変える際に二重窓にした。またカナダの古い家屋では壁に断熱材の入っていない場合も多いため、この家庭でも壁をはがして断熱材を入れる施工を行ったそうである。  またBさん宅では、リビングではないが、玄関に天窓をつけて上から太陽光を取り込めるようにもした。 事例3 Cさん宅の希望‐2階で外を見ながらコーヒー・タイムを楽しみたい。     Cさんの希望に沿って、平屋だった家に2階を作った。そして、2階の主寝室の一角のコーヒー・テーブルと椅子が置ける程度のスペースをサンルーム仕様にするリフォームを行った。
事例4 
Dさん宅の希望‐玄関を広くしたい。
 カナダの玄関は日本と違って狭いところが多く、日本流の「たたき」(ドアを開けてすぐのスペース:土足で入ることのできるところ)といわれる部分がない場合がほとんどだ。日本の家において「たたき」は、家の見せ場のひとつでもある。
 そこで、日本式の玄関にしたいというDさんの希望を受けて、玄関部分だけを家から少し張り出す形にすることにした。そして玄関から入ってすぐのスペースには石を敷き詰め、そこから1段上がって部屋に上がる形に部分改築を行った。
事例5
 秋田谷さん宅の希望・使い勝手の悪いキッチンのクローゼットを便利にしたい。
 キッチンに1間ほどの何も仕切りのないクローゼットが設けられていた。しかし、キッチンはさほど大きな物を収納する必要のない場所。このままでは使いにくい、という奥様の希望から、いったん扉を取り払い、クローゼットの半分は冷蔵庫の収納スペースとした。そして残りの半分には扉をつけ、中はオープン棚の形式にした。これで、ひとつの扉を開けただけで、乾物類から調理器具まで、各種の物が目に入る使いやすい収納庫となった。
事例6
 秋田谷さん宅の希望・来客からキッチンが見えないようにしたい。
 リビングとキッチンの間にはオープンな出入り口があったが、そこに引き戸を設けることに決めた。この引き戸はポケット・スライディングと呼ばれる壁の間に収納されてしまうものであるため、普段は開放した状態であっても、戸の存在がインテリアに影響しない。また、戸の枠の中は、すりガラスを用いているため、戸を閉めた状態であっても、南側のキッチンからの日の光がリビングにも届くようになっている。
.リフォームの豆知識
 秋田谷さんからリフォームを考える人に知っておいてもらいたい3つの点を挙げてもらった。
目的を明確に、希望を的確に  「自分の家をこうしたい」という目的意識をはっきりさせること。そして、「仕上がってみたらイメージが違っていた」ということのないように、自分の希望を詳しく伝えることが肝要だ。
金額に応じてデザインや質は大きく変化
 リフォームの値段は「いくら」と値がつけられないもの。それは水道の蛇口ひとつ取ってみても値段はピンからキリまであるからだ。そのため、出来上がりのデザインに対する希望が強いならば、それを踏まえた見積もりを業者から出してもらう必要がある。
仕上げが肝心
 リフォームを専門業者に委託しても、最後の壁塗りは自分でやろうとする人も多い。しかし、ペインティングの工程に入るには、釘を打ったところはやすりで削った後にパテを埋めたり、隙間を埋めるコーキングという入念な下準備が必要だ。この段階を丁寧にしないでペンキを塗ると、仕上がりが非常に汚いものになってしまう。
 リフォームの見た目の出来栄えはこの最後のペイントにかかっている。そのため、自分でできそうと思っても業者に任せたほうが、納得のいくリフォームとなる場合が多いだろう。 出来上がりまでには作業外の時間もご承知を
 ひとつのリフォームを完遂するまでには、市の基準を満たしているかどうかの監査(インスペクション)を受けることが必要とされる。施工内容によって、その必要な点が異なるが、計画段階での監査以後、骨組みを作る際、セメントを流す際、配管、配線などの各段階でそれぞれ市から監査官を呼び、実際にリフォームの状況を見てもらわなければならない。そのため、改築にかかる総時間は読みきれないのが現状だ。 カナダの家・日本の家の特徴をひとこと
 「日本に比べるとカナダの家は、外壁や窓の遮音性が高く、オープンで明るい家が多い。日本の家は1階と2階の間にすき間があるので上下間での遮音性がよい」というのが秋田谷さんの所感。カナダの家の良いところ、日本の家の良いところを取り入れながら、先の事例をヒントとして自分にとって住み心地の良い家を作っていきたいものだ。    (取材 平野香利)

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