SPECIAL 2003

2003年5月 第22号 掲載


ブリティッシュ・コロンビア州の在宅介護制度

      日本では高齢者人口の高まりと少子化のなかで、2000年に介護保険制度が導入され、新たな保険料を国民から徴収するという大きな変化があったが、ここカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州における介護制度とはどのようなものだろうか。
 今回の暮らしインフォメーションでは、非営利の日系ボランティア組織として福祉活動に努める、隣組の山城猛夫(やましろたけお)氏にブリティッシュ・コロンビア州の在宅介護制度(訪問介護サービス)の概要について伺った。
氈D在宅介護制度の概要
1. 在宅介護サービスはどこが主体となって提供されるのか
 公的な在宅介護サービスに関しては、ブリティッシュ・コロンビア州政府の直轄組織である6つの保健局がその任に当たる。例えばバンクーバーやリッチモンドであれば、バンクーバー保健局(Vancouver Coastal Health Authority)が、バーナビーはフレーザー保健局(Fraser Health Authority)の管轄となる。さらにその保健局のなかで地域ごとにあるコミュニティヘルスセンターが介護サービスを実際に手配する。自分の居住地区の保健局および担当ヘルスセンターが不明の場合は、電話帳の巻末にある水色のページのBC州政府Health Authoritiesのなかから探そう。   
2.どんな人が介護サービスを受けられるのか。
 19歳以上のカナダの住民でBC州に1年間以上住んでいる人が州政府の在宅介護サービスを受けることができる。移住者がスポンサーシップで呼び寄せられている場合は保証されている期間(移住者が親を呼び寄せる場合、通 常10年)が過ぎるまで介護サービスを受けることはできない。
 また、収入の高低にかかわらず介護サービスを受けることができるが、収入によって州からの補助の金額に違いが出てくる。
3.介護サービスの種類  州の介護制度は住宅様式・環境で分類すると、 ‐ホーム・ケア(在宅介護) ‐レジデンシャル・ケア(医療を伴う施設での介護)
‐サポーティブ・ハウジング及びアシスティッド・リビング(自立度の高い方への支援住宅) の3本柱となっている。
 この柱の最初に挙げた在宅介護制度は、医療的なケアが常時必要ではないものの、日常生活に支障をきたす部分のある人に対して、居住するコミュニティのなかで、自立した高い生活の質を保つことを目指して運用されている。政府は他のレジデンシャルケアなどよりも経済上、柔軟性があることから、この在宅介護に重点を置いている。
4.どんな在宅介護サービスが受けられるのか 広い意味での「ホーム・ケア」は先のレジデンシャルケアやサポーティブ・ハウジングに対する呼称であるが、BC州ではそれが「ホーム・ケア・サービス」と「ホーム・サポート・サービス」に区別 され、保健局主体の次のような介護サービスが提供されている。
 「ホーム・ケア・サービス」は高齢者や身障者の日常生活を補助するための医療や専門的治療サービスを指し、運動機能回復のためのリハビリテーション、各種療法、栄養指導および看護士の訪問サービスや在宅リハビリテーションプログラム等もこれに含まれる。また、このサービスは慢性病患者や病気やケガからの回復期にある患者へのサービスにもなっている。
 「ホーム・サポート・サービス」は療養施設入居の高い費用をかけずに家庭においてケガや病気が悪化することを防ごうとするための援助であり、その代表的なサービスは次の点である。
|日常生活のサポート    
−洋服の着せ替え    
−薬の服用    
−衛生関係(つめきり、入浴など) など
}食事の提供(ミールプログラム)    
デリバリーによる食事と食堂へ出向く形がある。
~通所介護サービス(アダルトデイケア)     
−地区社会の高齢者ケア・センターのプログラム        
短期療養プログラム-自宅で療養しながら治療センターに通うもの。     
%常介護者の一時休養(レスピット)    
−日頃介護している人に休養を与えるために、介護者が訪問する形、または施設に要介護者を連れて行く制度。        5. 在宅介護サービスを受けるためにどういう手続きが必要か
|自分の地区の保健局(Health Authority)のヘルス・センターに介護サポートが必要な旨を家庭から連絡する。
  }担当支局の査定者(アセスメント・ワーカー)から訪問を受け、面談によってどのような介護支援を必要とするかが査定される(要介護認定)。   
<ホーム・サポートの現状―   政府に頼ることのできない状況が進行>
 山城さんはホーム・サポートの現状を次のように語る。
 「以前は買い物のための外出サポート、部屋の片付けや掃除、洗濯も含まれていましたが、昨年より政府の予算カットでサポートの対象外となってしまいました。特に買い物に付随して行っていた銀行の手続きが自分で行えなくなったことは、要介護者の自立にとって非常な痛手となっています。政府の経済状況、予算の変遷を見ていくと、今後政府だけつまり保健局の提供する介護サポートだけでは不十分な状況が一層進行していくと思います。そのため、家族、親戚 、友人などの介助を含め、政府以外のコミュニティが中心となった非営利サポートやホーム・ケア、ホーム・サポートのエージェンシー(企業や個人)を利用することが一般 化していくことでしょうね。」    
.介護・生活支援サービスの利用にあたってのアドバイス
こうした公的サービスの現状や今後の変化観測を踏まえて、引き続き山城さんに、高齢者のいる家庭で気をつけておきたい点や民間の介護・生活支援サービスを受ける際の参考になる点及びホーム・サポートの現状と展望について伺った。
<介護の必要性をみる− 高齢者自身、また周りの人が考えてみるべきこと>
 日常の生活を振り返り、元気に何でもできたころと現在の生活でどんな違いが出てきているのかを見てみるとよい。
 例えば、 ●買い物や医者に行くのが大変になってきた。 ●出かける元気が出ない。
●バスに乗ろうと思っても足が上がらない。 ●物が持てなくなってきた。
●料理する意欲がない。 ●食事の回数が減ってしまった。 ●入浴が自分ひとりでできなくなってきた。 ●家族や友人から何度も指摘されていることはないか。
 など、肉体的に困難になってきたことや、気力が出ないためにできなくなっていることはないか、また食事が取れないことなどが原因でさらに体力、気力を弱めていることはないかを気をつけてみていく必要がある。明らかに日常生活が困難な状態とならずとも、その兆候が見えていたら、一度、保健局のヘルス・センターに連絡を取ってその状況を伝えてみるとよい。
 「日本文化のなかで育った人には、第三者を入れての介護や施設に入所することへの抵抗感を持つ人が多いですよね。たとえ本人にサポートを必要とする兆候が現れていても、それを顕わにしない場合もあるため、周りの人からはサポートの必要性が見えにくい場合もありますが、健全な人間関係のなかで、周りの人から適切な介護制度利用を促すことも必要だと思います」と山城さんは語る。
<民間の介護・生活支援サービスを依頼する際に確認すべき点>
 残念ながら、第三者に介護に入ってもらった際に、自宅の物がなくなるという盗難事件が少なくないため、信頼できる責任感の強い人を選びたいものだ。また、依頼したい内容や程度と介護者が行ってくれる内容や程度に違いがあるといった介護利用者の声も聞かれる。
 そのため第三者機関、または個人に介助を依頼する際に注意すべきことを次に挙げたい。   
−利用者からの評判のいい機関に依頼すること   
−エージェンシーから派遣される介護者を審査すること   
−思い違いを解消するべく介護者との間でよく話しをする。  また、このことに関連して保健局の提供する情報のひとつである「介助必要度の確認から業者依頼開始までに必要な手順」について紹介しよう。
<業者依頼と開始までの手順 − Vancouver Coastal Health Authority より>
@ 介助の必要性に関して―どういう点で外部からプロの助けが必要かをリストアップしてみる。
A必要とされる支援のタイプを決める(看護、医療的なケア、個人の生活のケア、家事、  他者との交際、介護者の一時休暇やカウンセリングなどのなかで検討。)
Bいつ、どんな場面で、どの程度の頻度で助けが必要かの見当をつける。
Cどんな助けを利用することが可能なのか、またどれだけそのサービスの経費をまかなうことが可能なのかを考えてみる。
D家族や友人、同僚、ホーム・ドクターや保健関係のプロに薦められるエージェンシーについて聞いてみる。
E電話帳から「Home Support Service」「Nurse&Nurse’s Registries」「Cleaners 」   「Laundries」「Domestic Help」その他のカテゴリーから適当なところをリストアッ  プする。
Fリストアップした業者に電話をかけ、聞き出した情報を確認して業者間の比較をしてみる。そして自分のニーズに合った業者を選び出す。
Gいよいよ業者へ依頼する段になったら、緊急連絡先を業者に知らせておくこと。
H業者の行うことが満足のいく内容であるかをよく見ておく。
I特別な要求があればそれについて業者に伝える。 最後に有用なシニア向けの情報をご紹介したい。
「Information for Senior : Your Guide to Programs and Benefits」 ブリティッシュ・コロンビア州のシニア向けのサービスに関するガイドブックが6月末ごろに発行予定である。今から担当局に電話連絡をしておけばガイドブックの送付が依頼できる。 電話1−800−465−4911                               (取材 平野香利)