SPECIAL 2003
2003年4月 第18号 掲載
最近抜け毛が多い気がする、頭頂部が薄くなってきたような・・・そんな気になる抜け毛のことをゼネラル・ドクターである田中朝絵先生に解説していただいた。
対処法や予防策は頭髪の抜ける原因によって異なるため、原因別に見ていくが、最初に、毛髪の成長サイクルについて知っておくとその後の内容が理解しやすいだろう。
1.毛髪の成長サイクル−1本の毛の一生
(1)成長期(毛の伸びていく期間)―2〜3年。この時期にある毛が頭髪全体の80から90%を占める。
(2)退化期―3週間。これが頭髪全体の1%から3%を占める。
( 3)休みの期間−3〜4ヶ月。これが頭髪全体の5%から10%を占める。
(4)休みの期間の後は抜け落ちる−新しい毛が作られて(1)から(3)までの期間を合わせた約3年から3年半後に抜けることになる。毎日平均75本程度の毛が抜け落ちるとされている。
2.原因別の症状と対処法
原因
(1) 男性ホルモンのバランスの崩れ 男性一般に見られる脱毛症の原因の30〜40%は遺伝性と見られている。症状としては、毛の成長サイクルの(1)にあたる、毛髪の伸びている期間(通
常2、3年)が1年程度などに短くなることに加えて、毛根が小さくなり、1本1本が全体的に細くなるのが特徴である。
場所としては前のほうからM字型に薄くなって頭頂部に至るパターンが多い。
主に男性に見られる脱毛現象だが、更年期の女性や男性ホルモンが多く分泌される病気などによって、女性にもこの現象が見られることもある。その場合、頭部の脱毛のほか、男性のひげの生える部分の毛が濃くなったり、にきびが増えたり、生理が不順になるといった症状を伴うことが多い。
このタイプには薬品による対処法が挙げられる。
<対処法1−ロゲインの使用>
市販の薬品として「ロゲイン(Rogaine)」(化学名 Minoxidil)がある。薬局では薬剤師のいる後ろの棚に置かれ、薬剤師に聞いてからでないと購入できない。2%、5%の濃度のものがある。このどちらかを1ml手で薄く塗布して用いる。男女とも使用が可能である。この薬品以外に効果
の認められた塗り薬は現在存在しない。そのため市販の育毛ローションなどは高価であっても効果
はないとご承知おきを。
ロゲインの効果:●毛髪の成長期を長くする。 ●毛根を大きくする。
ロゲインの効果の現れ方:塗布開始から2ヶ月経過すると脱毛が止まる。毛髪が生えてくるのが分かるまでに4〜8ヶ月を要する。1年から1年半経つと、よくも悪くもならない状態になるが、塗布を継続しないと再び毛髪が抜け出してしまう。
ロゲイン使用にあたっての留意点:(1)のタイプの脱毛症の人であっても30〜40%の人にしかロゲインの効果
は認められていない。また、ロゲインは、抜け落ちてしまった頭皮の範囲が直径10センチ程度以下で、脱毛現象開始から5年以内の人にしか作用しない。
さらにこの薬品の副作用として、頭皮に炎症が起きたり脈拍が速くなったりむくんだりすることがある。そのため、心臓病を持っている人には注意を要する薬品である。
<対処法2−プロペシアの使用>
もうひとつの頭髪に関する薬には「プロペシア(propecia)」(化学名 finasperide)がある。これは前立腺肥大の治療薬でもある。プロペシアを購入するには医者からの処方箋が必要。この薬は1日1回1mgの服用となっている。
プロペシアの効果:毛のサイクルにおける成長期を長くし、毛を太くする。この効果
が出てくるまでに、服用開始から3ヵ月を要する。
プロペシア使用の留意点:男性ホルモンの分泌を抑えるために、性欲が減退したり、インポテンツを引き起こす場合もあるため、使用にあたっては十分な注意を要する。
原因 (2) 女性ホルモンのバランスの崩れによる脱毛現象
この原因による脱毛は、女性が妊娠中や出産後にしばしば見られる現象で、またバース・コントロール・ピルの使用によっても生じる。この場合、女性ホルモンのバランスが元にもどれば脱毛も止まるため、特別
な処置はしないほうがよい。
原因 (3) 重い病気やストレスによる脱毛現象 これらが原因の場合は、毛の成長サイクルの(1)の、伸びている期間の毛が休みに入ってしまい、その3、4ヶ月後に脱毛症状が現れる。つまり、ストレスなどの原因が起きてから抜けるまでには3、4ヶ月の期間が存在することになる。通
常、その症状が出ている部分の30%の毛が抜け落ちた時点でようやく気がつくことが多い。
原因 (4) 原因不明の脱毛現象 これは円形脱毛症と言われる病気で、性別に関わらずどんな人でもなりうる。1000人に1人の割合で発症している。症状が現れた人の90%は2年以内にまた毛髪が伸びてくるが、円形脱毛を繰り返しやすい、または広範囲に及びやすい人のタイプが存在する。アトピー症の人、10代初めなどの若い人がそれに該当する。
症状としては、最初は1本の毛が完全に抜け落ちるのではなく、切れる状態になり、脱毛した部分と正常な状態の頭髪部分との境に、毛根が黒い点々となって見えていることが特徴である。また健康な毛と違って、細く白い毛が生えてくることも特徴に挙げられる。
<対処法―ステロイド系薬品の使用>
何もせずにほうっておいても生えてくるため、薬を使用しなくともよいのだが、どうしても急いで対処したいという人は、ステロイド系の薬を塗布または注射する対処法がある。
市販されているこの種の塗り薬は弱いため、効果が期待できない。そのためファミリー・ドクターから処方箋を出してもらって購買した薬を使用するか、ドクターのもとで注射してもらうかのどちらかとなる。
ステロイド系薬品使用の留意点:このタイプの薬を使用すると、効果は早く現れるが、大量
に継続使用した場合、副作用で糖尿病や骨粗しょう症になりやすくなるため注意が必要だ。
(5) その他の病気や薬が原因の脱毛症状 ●カビ(足にできる水虫と同様のカビ)が引き起こす頭部白癬(とうぶはくせん)感染病(tinea)
●皮膚がどんどん白くなる病気(vitiligo) ●甲状腺の病気 ●貧血病 ●関節病の一種である狼瘡(ろうそう)病(lupus)
これらの病気や、心臓弁膜症や癲癇(てんかん)、痛風の人が用いる血を薄める薬や血圧を下げる薬の副作用、ビタミンAの過剰摂取、ガンの治療に用いられる化学療法も脱毛現象を引き起こすことが知られている。
(6) 物理的な原因による脱毛症状 ●神経質な人がイライラして毛をひっぱってしまうこと
●髪を束ねてポニー・テールにしたり、髪にローラーを入れたりすること ●パーマをかけたり、薬品で髪をストレートにしたり、熱いドライヤーをかけたりすること
こうした物理的な要因のために起きる抜け毛の現象はまず、原因と思われることが特定されたら、その行為をやめることが対策となる。
以上、抜け落ちる頭髪についての原因と対処法について解説いただいたが、最後に田中先生からのメッセージをお伝えしよう。
「発毛、育毛に関していろいろと情報が出回ってはいますが、男性ホルモンの分泌の関係で起きる脱毛に対して効果
があると証明された方法はロゲイン以外には存在しません。女性ホルモン分泌を促すと言われる豆腐やヤムなどを積極的に摂取することで、男性ホルモンが抑えられるので脱毛防止に効果
はあります。ですが、一番いいのは健康的に暮らし、ストレスを減らすことです。ストレスは髪の状態に非常に作用します。ですから、頭部が薄くなってきてもストレスと感じずに堂々と生活してほしいですね」。
<田中朝絵先生の勤務先> 田中先生のその時々の勤務先情報は録音メッセージで聞くことができる。TEL604-601-9628
1175 Denman St., Vancouver TEL: 604-681-5338 (月曜および水曜午後) #120-6180
Blundell Rd. Richmond TEL: 604-271-1314(木曜の午後)