2003年3月 第15号 掲載


正しい薬の選び方 −BC州薬剤師・椿井真希さんに聞く−


1992年日本で薬剤師の資格を取得、その後日本の製薬会社で勤務。1999年バンクーバーに移住、2002年BC州の薬剤師資格を取得する。現在ダウンタウンのPharmasaveに勤務する。

      どこにいても病気というのは厄介なもの。海外にいては言葉の壁などもありさらに厄介。病院に行かなくて薬だけで治せるものならそれに越したことはない。そこで今回は日本とBC州で薬剤師の資格を持ち、現在ダウンタウンの薬局で薬剤師として活躍している椿井真希さんに、こちらでの薬の正しい選び方、薬局の使い方などについて話を聞いた。
症状による薬の選び方
 大衆薬(一般に市販されている、処方箋を必要としない薬)を選ぶ場合のポイントは、自分の症状にあったものを選ぶこと。ラベルにどの症状に効くか表示してあるのでそれを参考に選ぶ。
 例えば、熱、喉の痛みだけの場合ならタイレノール(Tylenol)、咳も出るのであれば咳止めが入っているもの。痛止めの強度も、Strength、Extra Strengthといった具合にある。せき、たんの症状にはシロップ剤やパウダーで水に溶かすもの、鼻水、鼻の症状だけの場合だと鼻の薬もしくはスプレーがある。全ての症状がある場合は、総合感冒薬を選ぶとよい。  
コンタック、タイレノールなど名前がたくさんあるが、成分は基本的にはどれも同じようなもの。基本的には抗ヒスタミン、痛み止め、解熱剤、鼻の薬、咳止めが混ざっていて、会社がどこを強調するかで、「タイレノール咳止め」などの名前として販売されている。もしよく分からない場合は、薬剤師に自分の症状を言って選んでもらう。
◎FluとCold
 カナダにきて風邪をひいた時、カナダ人に「Flu」なのか「Cold」なのか聞かれることがないだろうか。「どちらも同じでは?」と思っていても、カナダでは「風邪をひく」にはこの二種類がある。
 Flu−ウイルス感染による風邪のこと。症状は劇的で、高熱が一気に出て、その後、咳などの症状を伴う。熱が最初の症状。これには抗生物質ではなく、抗ウイルスの薬を服用する。例えばタイレノール・フルーと表示されているものがこれに相当する。最近は予防接種が普及しているので、フルーの症状は余り見かけないとのこと。予防接種は普通 15ドルぐらいで、ハイリスクの(学校や病院などで働いていたり、多くの人と接触する機会が多い)人は無料で受けられる。ただし、予防注射は卵がベースとなっているので、卵アレルギーの人は避けること。
 Cold−バクテリア感染による風邪のこと。症状は鼻がずるずるするとか、微熱が出るとか小さな症状が比較的長期に渡って続く。これには大衆薬で症状を緩和させるものがでているので、症状にあった薬を選ぶ。あまりにも長引く場合は医師に診察してもらうこと。 フルー用の薬は基本的に、熱、咳、鼻用なので、コールドの症状の時に飲んでもかまわない。ただ解熱剤などの用量 が高くなっている。
◎鼻づまりと花粉症
 Sinus−副鼻洞を指し、そこがつまることによって引き起こる頭痛やタンのからみなど耳鼻科系が詰まってくる症状に効く薬。ただ、高齢者で、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症、緑内障の人はこれらの症状が悪化することがあるので、医師の許可がない限り服用することはできない。また、スプレー式を使用する時は使用量 に注意する。基本的に5日まで。即効性が高いだけにリバウンドも大きく、使用しすぎると鼻づまりがさらに悪化する。長期的に服用する場合は、飲み薬を勧めるとのこと。さらにこれにはハイパーにする成分が含まれているので、心臓がドキドキしたり、眠れないといったことが起きることがある。その場合は抗ヒスタミンが入っている薬と併用する。タイレノールはこのコンビネーション薬を出している。
 花粉症−カナダでも花粉症は春になると起きる。これに対して最も服用されているのが、クラリテン・リアクチン・アレグラが含まれている、眠くならないタイプ。1日1回服用で長く効くものが最も人気が高い。抗ヒスタミンと鼻の薬が配合されているものや即効性の強いスプレー式もある。それでも効かない重症者の場合は、ステロイドを使用した良い薬がでているが、処方箋が必要となる。注意することは、抗ヒスタミンは人によって効き方が異なる。さらに、これには耐性ができてくるので、去年効いたものが今年は効かないということがある。その場合は薬を変えてみる。その他、クロモリンを配合した、花粉症の症状が出る前に抑える薬や、エリウスという抗ヒスタミンだが鼻づまりも緩和するという、高血圧などの人のための処方箋がいらない薬もある。これは薬剤師に問い合わせる。
◎生理痛  
女性の中には毎月生理痛に悩まされる人も少ないくないはず。前述の一般的な痛止めの服用以外の生理痛抑制法を聞いた。
 カフェイン入り−生理前生理中は身体が水をためる傾向があるので、むくみといった症状が出ることがある。そのため痛み止めにカフェインの成分を配合したマイノールという薬がでている。これは、カフェインの利尿作用で身体にたまった水分を出すというもの。
 ビタミンB群−ビタミンBは神経、神経からくる痛みに効く。生理になる何日か前の腰が重いといった症状の時に飲み始めるとよい。
 抗うつ薬、向精神薬−気持ちをリラックスすることにより痛みを和らげる。  
コデイン−解熱、鎮痛、咳止めの効能もある強い痛み止め。薬剤師に相談すれば、処方箋なしで購入できる。医師にかかる時間がない、ワーホリや学生で健康保険がないといった人でどうしても強い薬しか効かないという人の応急処置用。ただし、便秘などの副作用がある。
 使用量−表示されている適用量までを服用。ただ、24時間飲まなくては苦しい人などは、違う作用のものを服用する。例えば、タイレノールを1日に6錠飲んだら、その後はアドビルといった具合。そうすると一カ所にかかる負担(アドビルなら胃、タイレノールなら肝臓)を避けることができる。 薬もしくはこういったものが効かない重症者や胃が悪い人の場合は、医師に相談する。
薬の服用量
 カナダの薬は一般に日本のものよりも効目が強いといわれている。これは日本人が西洋人に比べ小柄で、しかも感受性が違うことに要因するらしい。そうしたことから日本人がカナダの一般 の薬を服用する場合、量を減らす必要があるのだろうか。
 答えは特にないということ。薬によっては低用量の方がいい場合もあるが、基本的に用量 は体重によって決められるので、一般的に服用量に特に敏感になる必要はない。ただし、日本人女性で子供サイズ並みの極端に小柄な人で心配ならば、医師もしくは薬剤師に確認してみること。どうしても心配であれば、最初は量 を減らして、大丈夫だと分かれば適用量を服用する。子供の場合は必ず体重で決めること。
子供への服用
 12才以下の子供には基本的にシロップ系のものが多く服用される。抗生物質では比較的飲みやすい味のものが揃っている。子供の場合注意しなくてはならないのが、服用する量 。もし子供の体重が服用量のちょうどボーダーラインであるならば、少量から始めて徐々に増やしていく。
  2才以下の子供の場合は必ず医師の指示を受けることとされている。薬局でも同様である。医師からの許可がある場合は、それを薬剤師に提示すること。
 その他では、シロップ式の薬はかなり細かく量を指定しているものもあるので 量る時に注意する。メジャーカップや量 り用注射器はサンプルのものを薬局のカウンターで無料でもらえる。
 子供が病気した時に最も気をつけることは、水分補給を十分にしてやること。子供は脱水症状が起きやすく、ちょっとした下痢や嘔吐でも脱水症状を起こすことがある。その時はミネラルバランスのいい水が販売されているのでそれを与えるか、もしくはゲータレードなどのスポーツドリンクを10倍くらいに薄めても代用できる。
ブランドによる効目の違い
 カナダも日本と同じで、多種多様の薬が溢れている。症状によって薬は選んでみたものの、どのブランドがいいのか分からないということもよくある。薬局などでよく見かけるブランドの違いを聞いた。
◎効能による違い
 タイレノール(Tylenol)−成分・アセトアミノフェン。解熱・鎮痛といった痛みに効く。
 アドビル(Advil)−成分・イブプロフェン。解熱・鎮痛・抗炎症作用がある。腰痛など炎症から来る痛みに効く。
 アスピリン(Aspirin)−成分・アセチルサリチル酸。効能はアドビルとほぼ同じ。
   これらは処方箋がなくても購入できる痛み止めの薬。
◎安全性  
タイレノール−一般的に安全とされている薬で、肝臓に問題がない限り、子供でも妊婦でも服用できる。安全性を重視するならこれがおすすめ。
 アドビル・アスピリン−胃がやられる場合があるので、服用する時は食事を伴うか、ミルクなどで胃に粘膜を作ってから服用する。シニアの場合、血をさらさらにする薬やワルフォリンを服用していると副作用が起こる可能性があるので、医師の許可を得てから服用すること。子供に飲ませる場合は、量 に気をつける。医師の診断を仰いだ方がよい。
 これらの他に、各薬局が出しているハウスブランドの薬があるが、基本的に名前が違うだけで成分と効能は変わらない。ハウスブランドの方が一般 的に低価格である。ただ、人によっては一定のブランドの薬しか効かないという人もいる。
風邪の予防
 ひいてしまったら仕方がないが、風邪はひかないに越したことはない。風邪予防には以下ようなことがよいということである。
*フルーを避けるための予防接種。
*手を洗う、うがいをする。
*おかしいと思った時は栄養をとって早く寝る。
*風邪をひきそうだと思ったら、エキネシアという成分が免疫作用を高めるハーブを利用する。
*免疫システムを上げるビタミンCを多く摂る。この時の注意としてビタミンCは水溶性のため一度に体内に取り入れても尿として排泄されるので、1日3回に分けて摂ったり、長く効くカプセルなどを使用する。
SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome・新型肺炎)
・西ナイルウィルス  今世界中を巻き込んでいるウィルス性の病気SARSと去年の夏、北米を中心に猛威をふるった西ナイルウィルスについて聞いた。
 SARS−ウィルス性なので、ワクチンが開発されない限り100%の治療法はない。政府の健康保健省が訴えているとおり、予防としては人混みなどリスクの高いところには行かない、熱とか咳などが出て少しおかしい場合は病院に行くなどの処置しかない。マスクについては現在最も効果 が高いのがスリーエムという会社のN95というマスク。95%のウィルスをシャットアウトする。しかしこれはあくまでもクシャミ、咳などの直接コンタクトのみに有効で、間接コンタクト、例えばウィルスを持っている人がクシャミをして菌が手すりなどに付着、それに触れた手で目をこすったりしても感染するので、とにかくハイリスクの所は避けるというぐらいしか方法がない。ちなみにマスクは10個で64ドル。
 西ナイルウィルス−日本脳炎に似た蚊を媒介にして感染する、こちらもウィルス性の病気。去年幸いにもBC州までは来なかったが、アメリカ・カナダで死者を出した。これには虫除けなどの方法しかない。これに関連して、虫さされの場合に注意することは、虫さされによる毒素よりも刺されることに過敏に反応してアレルギーが出る人がいるので注意する。その場合はアレルギーキットを常備しておくと良いということである。
薬局の利用法
薬局で薬剤師に薬を選んでもらう場合に注意すること。
1.自分の症状を的確に伝える。あらかじめ自分の治したい症状を書いて用意する。
2.自分が服用している薬の名前をリストアップする。処方箋の場合はBC州中がコンピューターでつながっているので、どこでもらっても調べることができる。
3.大衆薬の場合はブランド名よりは成分表をみてその成分をリストアップした方がよい。この場合の注意事項として、生薬や日本からの薬を服用しているような場合、必ず成分を伝えること。ビタミン剤、ハーブ、漢方薬も含む。
 薬局を利用する場合に困るのが、英語。普通に生活するには困らない語学力でも薬の用語となると分からないことが多い。その場合は誰か英語力のある人に付き添ってもらうか、もしくは椿井真貴さんをたずよう。             (取材 三島直美)

椿井真貴さんへの問い合わせ 英語に自信がなくて薬局で薬のことを聞きたい場合はいつでもたずねてくださいとのこと。火−金の9時から6時まで(途中1時間休憩)、バラードストリートとデイビィストリートの交差点から少し北にある「Pharmasave」に勤務している。「マキ」と名前で呼びかけると彼女が応対してくれる。 Burrard Pharmasave: 1160 Burrard St. (604)669-7700