2003年1月 第1号 掲載


ブリティッシュ・コロンビア州観光局 日本オフィス10周年を迎えて

  日本人旅行者数と歳入の変遷
宿泊した観光客数(千人)
BC州への歳入(百万ドル)

  ブリティッシュ・コロンビア州観光局が一九九二年十月に日本にオフィスを構えて今年で十年を迎えた。この間日本の経済不況や二〇〇〇年九月十一日のアメリカ同時多発テロなど様々な出来事が起こり、そのたびに影響を受けてきた 州の観光業。そんな十年を振り返ると共に、同観光局の日本での活動内容、日本人観光客の趣向の変化、 州観光業のこれからについて、同観光局市場開発マネージャーでアジア太平洋地区を担当しているシンディ・フリーセンさんに聞いた。
BC州を訪れる日本人観光客の変遷−1992年〜2001年−
  この十年間で 州に観光で訪れた日本人の数は二百八十九万二千人にのぼる。日本人観光客数はアジア・パシフィック地域全体の観光客数の約三分の一を占め、もちろん最大である。さらに日本人観光客による 州への歳入(日本人が 州旅行中に使ったお金)は、十年間で二十五億四千六百万ドルにものぼる。
 一九九六年をピークに日本からの旅行者が減少している最大の原因は日本経済の低迷である。さらにはカナダへの航空運賃が他の国々へのそれと比べて比較的割高のうえ、 州での滞在費や移動のための交通費なども高いことからカナダ以外の観光地に旅行者が流れているという事実もある。また、為替レートも一九九五年が円高のピークとなっており、これらの要因が複雑に絡み合っていると見ている。そこに追い打ちをかけたのが去年のアメリカを襲った同時多発テロ事件。二〇〇〇年の第四四半期の落ち込みは激しく、二〇〇一年もその影響を引きずっている。
 しかしこれだけはない。これらの外的要因の他にフリーセンさんが指摘したのは、カナダのマーケティングのやり方である。これまではパッケージツアーといえば、バンクーバー、ロッキー、ナイヤガラと一本調子でパッケージを組んできたことも原因の一つとしている。その根拠は、近年日本人観光客の旅行形態が変わりつつあると感じているからである。それを示す事実として、最近日本の旅行会社のパッケージツアーが軒並み伸び悩んでいるのに対して、 州へ来る旅行者の数は平行線を保っており、さらにはエアー・カナダや のバンクーバー路線も満席状態にあるという。これは今までなかった傾向で、確かな要因は今リサーチ中ということである。
ブリティッシュ・コロンビア州観光局の役割
 ブリティッシュ・コロンビア州観光局は日本人観光客に 州をアピールするため、この十年間様々な取り組みをしてきた。現在は大きく分けて三分野に力を入れている。
 一つはメディアを使っての広告。日本のジャーナリストやテレビ番組制作会社の人達を 州に招き、様々な観光スポットやアトラクションを見学体験してもらい雑誌やテレビで紹介してもらうというマーケティングが一つ。二つ目は出版物の制作。年に三回発行しているニュースレターの他に、地域・季節ごとのパンフレットや、グルメ・ショッピング・ハイキングなど目的別 のパンフレットの制作を行なっている。グルメ・ショッピングガイドは日本の旅行会社の他、バンクーバーのツーリストインフォ(カナダプレースの前)にも個人旅行者向けに置いてある。三つ目はトラベル・トレード。旅行代理店やホールセラー向けに日本でセミナーを開いたり、 州をもっとよく知ってもらうための講演を行ったりしている。そこでこれからどのようなパッケージや情報を日本で売り込みたいのかといったマーケティング戦略を共に考えているということである。
BC州の魅力  
  観光局が日本人観光客向けにアピールしている観光資源はやはり「自然」。日本人も「カナダといえば壮大な自然」を期待してくる。それは 州でも同じこと。ロッキーやナイヤガラとはひと味違った手に届く身近な自然をアピールしている。
 それに大成功をおさめたのが去年の春のキャンペーン。去年の九月十一日以来落ち込んでいた観光業をなんとかもう一度復活させようと二〇〇二年の春のキャンペーン向けに出した日本での新聞広告が大反響。その広告とは、新聞の1ページ全面 に掲載したバンクーバーにあるバン・デューセン植物園のラバーナムの小道の写真。向日葵のような鮮やかな黄色の花房が藤のように頭上から枝垂れ落ち、その花房が春の日差しに反射してさらに鮮やかな黄金色に輝く写 真が掲載され、それが季節の移り変わりを花で感じる日本人の感性に訴えたようで、「いつどこでこの光景が見られるのか」という問い合わせがずいぶんあったという。「自然」は 州の宝であり大事な観光資源でもある、これからも大々的に宣伝していくということである。
 次にバンクーバーの街並み。バンクーバーはイタリアに負けず劣らずのグルメの街・ショッピングの街であり、さらに自然と都会が隣り合わせで一体化したそのコンビネーションが最も美しい街である点に力を入れる。グルメやショッピングを楽しめ、春や秋の季節の移り変わりが街全体を彩 りその風景が一枚の絵はがきのような景色も人々を魅了すると確信している。
 反面、 州で盛んなアウトドアスポーツには競争相手がアジア各国のため紹介程度で特に力を入れてはいないという。また、カナックスやマリナーズなどのスポーツ観戦にしても、オプションとしてはいいがそれをメインにツアーを組むほどではないということである。
BC州観光局の将来的な展望  
州の観光業の将来的予測としては、このままの経済状況が続く限り来年再来年に大きく変化することはないだろうと推測している。しかしながら明るい材料はある。まずは、バンクーバーの冬季オリンピック開催地立候補である。これは来年七月に候補地が決定される。もしオリンピック開催が決まれば、 州の観光業にとって開催期間中の二週間だけでなく、そこにたどり着くまでの七年間という願ってもない宣伝期間と無料の宣伝効果 が手に入ることになる。「これについてはただ指をクロスして待つしかない」と笑う。  もちろんその他にもこの先二年ぐらいに向けての戦略もある。ターゲットは家族。ファミリー向けの観光スポットとして夏のウィスラーの良さをアピールしていく。ウィスラーはすでに日本人ガイドが定着し、日本食レストランなどもある。さらには整備されたゴルフコースやアウトドアアトラクションなど、日本人観光客に向けて理想的な家族向けリゾートとして設備が整っているとしてこの先の目玉 にする予定にしている。
 第二のターゲットは四〇代以上の女性観光客。時間的にも金銭的にも余裕のあるこれらの女性にアピールするツアーを企画している。彼女たちが 州で最も興味があるアトラクションとしてガーデンニングやクッキング教室をあげる。実際取材に訪れた日本の雑誌編集記者もクッキング教室にはかなり満足して帰ったということである。これまでの観光見物のみの旅行形態から何かを学んで帰れる、参加できるアトラクションに人気が出てきているようであると予測している。
 これに加えて、個人旅行者が増加傾向にあることを考慮して、この先 州の情報提供方法として直接旅行者に訴えかけるインターネット網・ウェブサイトの充実も図っていくとしている。
  経済にとって観光業は材木業(林業)、天然資源輸出に次ぐ大きな産業である。そして日本はアメリカに次ぐ大市場。カナダは日本人に五番目に人気のある観光地であり、バンクーバーは西の玄関口ということもあって、カナダに旅行に来る日本人の半数以上が 州を訪れている。こうした中で、ブリティッシュ・コロンビア州観光局の役割はますます大きくなっている。「これから先も日本の旅行業者とよい関係を築き、 州の良さを伝えていきたい。是非この美しい自然を見に 州を訪れてください」と笑顔で語った。  (取材 三島直美)