SPECIAL 2003
2003年11月 第44号 掲載
その雄大さで世界的に有名なグランドキャニオン |
グランドキャニオンの深い谷底から不思議な音が聞こえてくる。風が複雑な地形にぶつかり、幾重にもこだましながら湧き上がってくる音だ。まるで太古の地球の鼓動を聞いているような気がする。アリゾナは夏の観光地として世界的に有名だが、旅行客が少なくなる冬こそ、大自然の素顔に静かに向き合えるチャンスだ。
★グランドキャニオンで迎える雪の朝
グランドキャニオンの観光は、ラスベガスから軽飛行機で渓谷の上空を飛ぶツアーから、何日もかけて谷底を歩くハードなものまで様々だ。なかでも世界中のカメラマンのあこがれは、グランドキャニオンの日の出と落日の写真を撮ること。太陽の動きにしたがって刻々と変化する大渓谷の光と影をフィルムにとらえる感動は他の場所ではなかなか体験できないだろう。
夏のハイシーズンには、日の出を体験しようと5時頃には多くの人が崖淵の展望エリアに集まって来る。景色は荘厳でも、人が多すぎて少々興ざめな時も少なくない。その点、冬は感動の度合いも深い。夜のうちに雪が降った日ならなおさらだ。砂漠の雪はまるでシャンペンの泡のようになめらかでフンワリしている。太陽があがればすぐに溶けてしまうだろう。そんなたよりないベールでそっと包まれた渓谷は、人間の想像をはるかに越える神秘さに満ちている。
できればサウス・リムのグランドキャニオン・ビレッジ周辺の宿泊施設に連泊して、朝と夕方の渓谷の風景を味わってみたい。崖の淵に続く遊歩道をゆっくり時間をかけて歩いてみるのもおすすめだ。しかし、アリゾナといってもグランドキャニオンの周辺は気温もかなり寒くなる。風もとびきり冷たい。しっかりした防寒具を用意していこう。特にラスベガスからグランドキャニオンに入るときは、気温の差が大きいので要注意。
★フライ&ドライブがアリゾナ観光の基本
アリゾナの主要観光ポイントは広大なエリアに点在しているので、公共交通を使って巡るのはかなり大変だ。基本はフライ&ドライブ。人気があるのは、ラスベガスを基点にしてグランドキャニオンから北部アリゾナを巡るルートと、フェニックスを中心に南部アリゾナを巡るルートの2つ。
グランドキャニオンだけに絞るのなら、ロスアンゼルスからアムトラックの列車やグレイハウンドのバスでフラッグスタッフまで行き、そこからナバホ・ホピ社(電話:520-774-5003)のバスでアクセスすることも可能。なお、ナバホ・ホピ社のバスはフェニックスにもアクセスしている。冬期のスケジュールは事前に要確認。
なお、フェニックスやツーソンなどの南部アリゾナは避寒地として世界的に有名で、冬が観光シーズンのピーク。ホテルなども割高になる。しかし、毎日しとしと雨が降り続くバンクーバーの気候に耐えられなくなったら、思い切って砂漠へ出かけてみよう。
サグアロのサボテンは生長するのに75年以上かかる |
★宇宙と交信できる(!?)ボーテックス
ハリウッドのスターの避寒地といえばフェニックスが有名だった。贅沢なゴルフ場やスパを併設したデラックスなホテルが並び、ヨーロッパの有名ブランドの店も多い。しかし、ここ数年、注目されているのはフラッグスタッフの南にあるセドナという小さな町。有名人が次々と別荘を購入しているという噂だ。
セドナは赤い巨大な岩山に囲まれており、周辺の山々を眺めるだけでも十分心が癒される感じがする。この岩山の上や谷間に、ボーテックスと呼ばれる不思議な場所がいくつもある。ボーテックスでは地磁気に変化があり、ここで瞑想すると宇宙の鼓動と共振することができるのだそうだ。UFOの目撃率が非常に高いのもボーテックスのせいだと言う人もいる。セドナは1960年代から、神秘的な体験を求める人たちの間では「知るひとぞ知る」町だったが、最近のヒーリング・ブームで知名度もぐっとアップ。高級リゾートのオープンも続いている。
なお、「癒しならショッピングで十分」という人には、アウトレットショップもある。ボーテックスとアウトレットショップが共存しているところが、セドナの本当の「神秘」かもしれない。
★砂漠の美しさならツーソンがおすすめ
西部劇に出て来る巨大なサボテン。アメリカの南西部といえば、あの人間が両手を上げて立っているようなサボテンを思い出すほどだが、実はあの種類のサボテンが自生している地域はごく限られているのだ。アリゾナ南部のツーソン周辺にあるサグアロ国定公園は、このサボテンの保護区。落日のころに訪れると、まるで伝説の中の巨人達が斜面に並んでいるように見える。胸のなかが不思議な懐かしさでいっぱいになってくるだろうが、サボテンが群生している中に入っていくのはやめたほうが良い。このあたりの砂漠にはガラガラ蛇がいるからだ。
ツーソンへ行くなら、見落とせないのは聖ザビエル伝道所。ピマ・インディアンの人々の信仰の中心地として今でも大切にされている聖堂。スペインが強大な力を誇った植民地時代の栄光のなごりでもある。「砂漠の白い鳩」とたたえられてきた白亜の美しい外観や内部の荘厳な雰囲気は18世紀のままだ。
アリゾナには、アメリカ・インディアンの貴重な遺跡がたくさんある。その多くは驚くほど巨大で、「都市」と読んでも良いほどの規模。なかでもフェニックスの南にあるカーサ・グランデは圧巻だ。およそ2,800トンの粘土を使って作られた巨大な「ビル」は、14世紀にホホカム族の人々によって建てられたものだが、その目的は未だに謎のまま。一種の天文観測所だったのではないかと推測されている。
レンタカーでこれらの遺跡や大自然の驚異をゆっくりと体験しながら巡るのが、アリゾナの旅のコツだろう。砂漠に降る雪にであえれば、その思い出は忘れられないものになるはずだ。
(取材・記事 宮田麻未/写真 神尾明朗)
● アリゾナ州観光局のサイト
フェニックスなど、アリゾナ観光の全体的な情報あり
ウェブ:www.arizonaguide.com
● グランドキャニオン国立公園のオフィシャルサイト
ウェブ:www.nps.gov/grca
● セドナのサイト
ウェブ:www.sedona.net
● ツーソンのサイト
ウェブ:www.visittuson.org
● カーサ・グランデについての情報や地図
ウェブ:www.desertusa.com/cas