SPECIAL 2003
2003年10月 第41号 掲載
チャーリーが出現するというバンクーバー美術館 |
ハロウィーンはHallow(神聖な)とeen(even=evening=前夜)という言葉が組み合わさったもの。カソリックでは11月1日を全ての聖人を記念する万聖節と定めていて、本来ハロウィーンは、その前夜祭という意味だ。
万聖節は今ではキリスト教の祝日とされているが、本来は古代ケルト族の慣習からきたものらしい。古代ケルト暦では10月31日が一年の終わりで、新年を迎える前日の夜には死者の霊がそれぞれの家に帰って行くと信じられていたそうだ。日本のお盆に共通する発想が面白い。
★チャーリーは今年も出現するのか?
バンクーバーで一番有名な幽霊と言えば、バンクーバー・アート・ギャラリーに出現する「チャーリー」だろう。バンクーバー・アート・ギャラリーは元は裁判所として使われていた建物。時折、真夜中にこの廊下を少々イライラした感じで歩き回っているのは、1914年に、ここで行われていた裁判の最中に暗殺されたウィリアム・チャールズ・ホプキンスという人の幽霊なのだそうだ。ホプキンス氏はある重要な証言をするために出廷するところで、証言できなかったことがよほど心残りだったらしく、法廷があったあたりを徘徊しているのを何人もの人が見ている。
このアート・ギャラリーの建物は、ビクトリアのエムプレス・ホテルや州議事堂を設計したフランシス・ロッテンベリーの作品。このロッテンベリー氏、たった25歳で州議事堂の仕事を請け負うなど天才的な設計技師だったのだが、かなり派手な性格だったようで、他人の奥さんに手を出したあげく、その夫と決闘して殺されてしまったという。彼の作った建物には、全て幽霊の話がついて回るのはそのためかもしれない。
ハロウィーンが近づくと、毎年チャーリーやロッテンベリーの霊もうごめきだすらしい。アートギャラリーの階段付近を夜通るときは、足音に耳をすましてみよう。
★オーク・ストリートの地縛霊?
オーク・ストリートと58番アベニューの角にあったオークハースト・ナーシング・ホームは、クラシカルな大邸宅をお年寄りの長期療養施設に改造したものだった。その施設が閉鎖になった跡、しばらく放置されたままになっていた。ところが1995年になって、その建物が映画のロケに使われたことがある。その時、映画のクルーが夜中までかかって撮影の準備をしていると、赤ん坊の泣き声のようなものが聞こえたそうだ。
撮影が行われている間中、クルーの多くが窓に浮かぶ不気味な顔を目撃したり、ある部屋に入ろうとしたら、足がすくんで動けなくなったりという体験をしたらしい。その建物はすでに壊されているが、どうやら幽霊は土地に残っているらしく、新しい建物でも不思議なことがおきているという噂だ。
建物を建て替えても幽霊が残るというのはキャンビー・ストリートにもある。キャンビーとキング・エドワード通りの南東角の家。今は新しい家が建っているが、もともとここにあったお屋敷が、バンクーバーでは最も有名な幽霊屋敷の1つだった。ベストなロケーションなのに、妙に安い値段でどんどん人から人へと売られていくので、そういう噂が流れたのだが、それぞれのオーナーは何が起きたか口を閉ざして言おうとしない。もちろん、そんな噂が広がって売買に支障がおきてはという配慮だろうが…とうとう、美しいチューダー調の家は壊され、新しい家が建てられたのだが、今でも売り家の看板が何度も出される。地縛霊というものなら、家を建て替えても出てくるのは当然だが…。
手軽(?)に幽霊に出会いたいなら、ガスタウンにあるオールド・スパゲティ・ファクトリーがおすすめ。ガスタウンには幽霊の出そうな古いビルがたくさんあるが、このレストランがある53
Water St.の建物もその1つ。ここの幽霊は従業員が営業終了後に掃除などの作業をしていると急に話し掛けてきたりするらしい。このレストランには古い電車や自動車など、時代物のグッズがたくさん飾られているので、そんなところにも幽霊が出やすい雰囲気があるのかもしれない。
★幽霊探しより楽しいパーティ
ケルト族の伝説では、10月31日の夜にはたくさんの霊が自分の親族のところへ戻ってくるとのことだが、良い霊ばかりが戻って来るのではないらしい。悪霊も暴れ出す可能性があるので、焚き火を炊いて魔よけにするのだという。この習慣がアメリカへ渡ると、花火を鳴らし、派手に騒ぐ習慣へと変化したようだ。
子供達が“Trick or treat”と言いながらお菓子をねだって歩くのもハロウィーンの習慣の1つ。これは中世のヨーロッパで農民がお祭りに使う食料を貰って歩く習慣があり、これが変化したものらしい。
かつては子供達が毎年楽しみにしている習慣だったが、子供を傷つけるような悪いいたずらをする人が増えて、「知らない人の家を訪ねるのはやめましょう」といったような注意書きが学校で配られるほどにまで用心しなければならなくなってしまっている。この楽しい習慣も、現代の殺伐とした状況に飲み込まれてしまったようだ。
大人たちは幽霊を追いかけたり、パーティで盛り上がるほうが楽しみだろう。ハロウィーンのパーティといえば、コスチュームがお約束。ドラキュラや魔女に扮するのが多いが、ここ数年は60年代や70年代のファッションをコスチュームにするのが流行っているらしい。レトロな服を探すなら、バンクーバーの周辺に何軒も支店のある古着の大形店バリュー・ビレッジがおすすめ。ここには、笑えるビンテージ・ファッションがずらりと揃っており、サイズも豊富だ。
また、パーティには大きなカボチャで作ったランタンなどのデコレーションもつきもの。自分でカボチャをくりぬいて作るのが一番だが、小さなカボチャに直接顔を描くのも楽しい。また、カボチャだけではなく、かかし、幽霊、魔女などをテーマにした人形やデコレーションも売られているので、それを飾ってみても良いだろう。お気に入りのテディベア用の魔女コスチュームなどというのもあるほどだ。
★ハロウィーンの おまじないはいかが?
いくらハロウィーンでも、あんまり騒ぐのは好きじゃない…という人には、静かにハロウィーンらしさを味わうこともおすすめだ。例えば、ハロウィーンの真夜中、12時丁度にリンゴを食べながら静かに鏡をのぞいてみよう。そこに、未来の夫の姿が映るのだそうだ。しかし、おもわず後ろを振り返ってはだいなしになるのでご用心。
また、ハロウィーンの夜、靴をTの字型に脱いでベッドに入ると、その夜の夢にこれも未来の夫が登場するのだそうだ。しかし、家の中で靴を履かない私たちはどうすれば良いのだろう?スリッパでも大丈夫かどうかは保証できない。
悪霊が飛び回るのを避けたいなら、ヒイラギの葉が魔よけになるそうだ。焚き火の代わりにろうそくを灯し、ヒイラギの葉を枕もとに置いて眠ろう。もちろん、眠くなったらろうそくを消すのをお忘れなく!
また、パーティに出かける人も、ハロウィーンの夜は魔女よりも人間の方が怖いので要注意。無闇に騒ぐ人やかなり酩酊する人も多いので、パーティはあまり大騒ぎにならないうちにひきあげるのがおすすめだ。
(取材・文 宮田麻未/写真 神尾明朗)
バンクーバー・アート・ギャラリー
750 Hornby St., Vancouver
バリュー・ビレッジ
1820 E. Hastings St., Vancouver
6415 Victoria Dr. Vancouver
7350 Edmonds St., Burnaby