巨大な氷山も流れ着く |
カナダの、そして北アメリカ大陸の最東端に位置するニューファウンドランド島は、日本国土の約 3分の1の面積の広大な島だ。カナダ本土のラブラドールと合わせて、ニューファウンドランド& ラブラドール州を構成している。NFLに住む人々は自分たちの島を愛情をこめて「ザ・ロック」 (巨岩)と呼ぶ。見渡す風景はつい数年前に氷河が通り過ぎていったのではないかと思わせるほど荒 々しい。しかし、この島は10世紀にバイキングが上陸して以来、北米で最も豊かな歴史を育んで来 た場所なのだ。 (取材 宮田麻未 写 真 保志俊平)
バードウォッチャーの天国がここにある
NFL島に春がやってくる頃、カツオドリの大群がフロリダ周辺からはるばる北上してくる。島の南側に突き出したセント・メリー岬は、このカツオドリ(シロカツオドリ)の大繁殖地だ。岬の先端にある岩は、バード・ロックというそっけない名前だが、本当にそれ以外には呼びようがないほど、カツオドリで埋めつくされていまう。
毎年1万羽以上がこの岬に集まり、6月上旬に卵を生んで、雛鳥が長旅ができるようになる10月には再び南へ帰っていく。カツオドリは広げると2メートルにもなる大きな翼を持っているので、この群れがいっせいに飛翔すると、海上に雲のような不思議な影ができるほどだ。やわらかなカーブを描いてのんびり飛んでいるようにみえるが、いったん餌の魚を見つけると、鋭い角度で水面
へ向かって急降下していく。高い上空からヒューっと音が聞こえるような勢いで水中に突っ込んで行く姿は、世界のバードウォッチャーを魅了してやまない美しさだ。
カツオドリの他にも、セント・メリー岬にはウミガラスや黒足ミツユビカモメなども集まってくる。岬全体が自然保護区になっており、展示の充実したインフォメーション・センターなどもある。鳥達の繁殖期にあたる6月頃は、温められた陸地に海からの冷たい空気がぶつかり、深い霧が発生することが多い。インフォメーション・センターから岬の先端へ向かって歩き始めると、ミルク色のカーテンのような霧のなかから鳥達の鳴き声が沸き上がってくる。この大自然のシンフォニーには聞く人の心を深くゆさぶる力がある。
NFL島でもう一つ有名な鳥といえば、ユーモラスな姿で人気のあるアトランティック・パフィン(ニシツノメドリ)だ。この鳥は一年中島のあちこちで見ることができるが、集中しているのは東海岸にあるウイットレス・ベイ自然保護区周辺。カツオドリと違って、この鳥は飛翔はあまり得意ではないようで、小さな羽をせわしなく動かして「ヨッコラショ」という感じで飛んでいる。しかしパフィンのお得意は潜水。水中でなら時速13キロという驚くようなスピードで魚を追って行く。
パフィンはNFL島のマスコット鳥なので、お土産物を扱う店には可愛らしいヌイグルミからキーホルダーまで、さまざまなパフィン・グッズが揃っている。
氷山とくじらの競演は世界最大の エンターテイメント
夏の初めにNFL島にやってくるのは鳥達ばかりではない。北極海から巨大な氷山も流れてくる。氷山の形やサイズは、それぞれに異なっているが、どれも想像を遙かに超える大きさだ。岬の影からヌっと巨大な神が姿を見せたような驚きを感じさせる。白と薄い緑、青磁のような青などが混じった神秘的な氷の色も忘れられない。
氷山の大きさは水面上に見えているだけではわからない。水の下には、その何倍もの大きさの氷塊が隠れている
ホウェール・ウォッチングと同時に楽しむこともできる |
からだ。氷山に近づいて海の中をのぞきこむと、海水と青白い氷の色との違いが見分けられて、恐怖に似た感動が胸にせまってくる。氷山ウォッチングのツアーで有名なのはセント・ジョンズ市の周辺だが、島の北東端にある、まるでおとぎ話に出てくるような愛らしい村トゥイリンゲイトの海辺から見る氷山は格別
だ。
氷山と同じころにNFL島にやって来るのがクジラだ。島の周辺で繁殖するシシャモの大群を追って、ザトウクジラやミンククジラが姿を見せる。シシャモで海面
が沸き立つようにキラキラ輝くと、その後ろから鯨が迫力いっぱいのスピードで追いかけてくる。波の上にその姿が現れると、思わず「オーッ!」という声が出てしまう。北米にはいくつものホエールウォッチングの名所があるが、一番感動的なのはNFL島だという。確かに、氷山の間から鯨が大きくジャンプする姿を目撃することなどは他のエリアでは体験できないだろう。
地球の素顔と向かいあう
ヨーロッパ人がいつ頃から北米大陸にやって来たのかという研究は今も結論は出ていない。しかし、少なくとも10世紀にはバイキングの人々がNFL島を訪れていたという証拠は見つかっている。島の北端にあるランス・オー・ミードウの遺跡がそれだ。世界遺産にも指定されたこの遺跡から眺める落日は、時空を超えて私たちにバイキングの伝説を語りかけてくれるようだ。
NFL島には、この他にもグロス・モーン国立公園などの世界遺産に指定されたエリアがある。ここでは切り立った800メートルもの高さの絶壁が続く内陸フィヨルドを見ることができる。船に乗ってフィヨルドの奥まで入っていくと、地球の内側に迷いこんで行くようなスリルを感じる。
ベテランのハイカーなら、テーブルランドを歩いてみたい。この荒涼とした岩山からは何とも言えないパワーが発散されているのに気がつくだろう。目の前に広がっているのは5億7千万年前に生まれた岩だ。地球のマントルが地表に押し出された、世界でも珍しい風景なのだ。まさに地球の素顔に向かい合うことができる。
魚がおいしい、笑顔が楽しい
大自然の姿も、そこにやって来る野性動物もNFL島の大きな魅力だ。しかし、この島への旅が楽しいのは、島民のなんとも言えない心の温かさに出会えるからだ。独特の「島言葉」には、英語に慣れた人でも最初は少々めんくらうかもしれない。しかし、すぐにその味わい深い音が好きになるはずだ。
シーフードのおいしさも格別。レストランでは「今日のおすすめ魚貝類」の表示を必ずチェックしよう。フィッシュ・ケーキを試してみるのをお忘れなく。
NFL島のくわしい情報はhttp://public.gov.nf.ca/torism/ で。州都セント・ジョンズにはカナダ主要都市からエア・カナダなどでアクセスできる。この他、ノバスコシア州からフェリーで島に渡る方法もある。島内はDRL
社(tel:709-738-8090) などが定期バスを運行しているが、レンタカーを利用するのがベスト。ミキ・エンタープライズ社(tel:709-747-2233)
は島内各地のツアーを日本語で催行している。
NFL島のくわしい情報はhttp://public.gov.nf.ca/torism/ で。州都セント・ジョンズにはカナダ主要都市からエア・カナダなどでアクセスできる。この他、ノバスコシア州からフェリーで島に渡る方法もある。島内はDRL
社(tel:709-738-8090) などが定期バスを運行しているが、レンタカーを利用するのがベスト。ミキ・エンタープライズ社(tel:709-747-2233)
は島内各地のツアーを日本語で催行している。